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少年と少女

「はぁ... はぁ... はぁ... 。」

細い路地裏で肩から息をしているフードがついているマントを羽織っている少女。

「おい、居たか?」

「いや、まだ見つかっていない。」

「まだ近くにいるはずだ!探せ!」

5~6人ぐらいの声が聞こえてくる。

「... ゴメンね。」

そう少女は呟くと、路地裏から出て町を抜けた。


「だーかーらー!ウィンドルの森だっての!知ってんだろ?」

「はて?そんな森聞いたことありませんね。この近くにはありませんよ。」

「クッソー。ここもハズレかよ。あり得ねぇだろ。何件店当たってると思ってんだよ!」

机をダンダン叩く少年に、酒屋の主人も困り顔だ。

「それよりお客さん、ウィンドルの森... でしたっけ?そこに、何があるっていうんだい?」

その質問に、少年は急に静かになったと思いきや。

「ぜってー教えねえよ!」

ニカッと笑い店を出ていった。


外はもう太陽が沈みかけており、綺麗な緋色に輝いていた。

(もうこんな時間か、そろそろ帰るか)

くるっと方向転換し歩きだそうとした瞬間。

「きゃっ!」

「ぉわっ!」

誰かにぶつかった。目線を移動させると、フードがついているマントを羽織っている少女がしりもちをついていた。

(やべ... )

スッと手を差し出し。

「わりぃ。大丈夫か?よく見てなくて... 立てるか?」

「いえ、全然平気です。すみません。」

少女は立ち上がり服の裾をはたいた。

「... ほんとに大丈夫か?っておい!足怪我してんじゃねえか!」

「あ、これは... 。」

なにか言いたげそうな少女を無視し、家まで向かった。


「こりゃ大分ひでぇな...。よく今まで歩けたな。」

「多少の治癒魔法は使えますので... 。」

「そうか。」

少女の足の手当てを慣れた手つきでしていると。あの、と、か細い声で言ってきた。

「ん?なんだ?」

わたくしのこと、怖くないのですか?」

「はぁ?何で?」

だって、と口ごもっていて聞こえなかったが、意味は分かった。

この世界には、普通の人間や、獣の耳や、しっぽがある獣人じゅうにん、耳のとがったシルフ、魔法を使うことができる魔法使いがいた。しかし、そういう人たちは、理性を持たないモンスターと同じと分類した意識をもった人々が多く存在する世の中なのだ。だから、少女の言ったことはよくわかる。しかし。

「別に、お前が誰でも、怪我してるやつをほったらかすわけにはいかないだろ?」

よし、できたと言って、取り出していた救急箱をしまった。

「あ、ありがとうございます。」

「いいよ、別に。... お前、その調子じゃ、ろくに飯食ってねーんだろ。折角だしな。... 俺がなんかおごってやるよ!)」

そういうと少女は、驚いたように顔をあげた。

「い、いけません!はじめてあったお方にそんな、甘えるわけには... 。」

「いいっていいって!ほら、いくぞ!良いところ知ってんだ!」

有無言わさず、少女の手を引っ張っていった。


向かったのは、酒場、クロス・ロード。

カランコロンカラン

「いらっしゃいませ~!どうぞお好きな席にってうぉわぁあ!」

俺の姿を見るなり驚いている店員に、なんだよ、といってやる。しかし俺の言葉は、届いていないらしく。

「マスター!マスター!帰ってきましたよ!アラン!帰ってきたんですよ!」

と騒いでいる。俺は、またかとため息をついた。すると奥から大柄な男がでてきた。

「よぉ!アランじゃねぇか!よく生きて帰ってこれたな~!」

「あんぐらいで死んでたまるかっつーの!それより飯食いに来たんだ。席どこでもいいよな。」

「ん?あぁ。その前に、お前の後ろにいるのは、誰だ?」

やけに低い声で言われた。ビクッと肩が動いたが、気にせず

「魔法使いだとよ。」

真実を告げた。シーンと静まるかえる店のなか。

「...そうか。」

少女は今にも泣き出しそうな顔をしている。

「えっと... そのぅ...」

そこになり響いたのはクラッカーの音だった。

「よく聞け!今日は新人がやって来たぞ!」

うぉぉーー!と声が響く。まだ状況が理解できていない少女に、先呂どの店員が声をかける。

「いらっしゃい!ここはクロス・ロード!種族かまわず酒が乗れる場所よ!あなたもゆっくりしていってね!」

先ほどまで泣きそうだった彼女の目に光が点るのが、俺には分かった。


「挨拶が遅れたな。俺はアラン。んで、こっちのいかついのが。」

「おい、いかついってなんだ、いかついって。」

「んまぁ、こいつがバロン・クロッシュ。この店のマスターだ。」

「よぉ!嬢ちゃん、さっきは悪かったな。まぁゆっくりしていけよ。」

少女は、ありがとうございます。と、一礼をした。

「つか、アラン!お前森の情報聞きにいくんじゃなかったのかよ!なにこんな、かわいい子連れてきてんだよ!」

周りも、それにあわせて、ずりぃーぞ!やら、羨ましいな~やら言ってくる。しかし、それを無視しながら、飯を頼むと、バロンは、つまらなさそうに店の奥へと消えていった。

「なんか、わりぃな。こんなことになっちまって。」

苦笑いをしながら言った。

「いえ!いいですよ。ありがとうございます。こんな素敵な場所に連れてきてくださって。あ、私の名前は... ミリアって言います。」

「そっか!良い名前だな!」

そういうとミリアは、えへへと照れ笑いをして見せた。そこに、さっき頼んだミートスパゲッティと、カレーがきた。

「お待たせ!後、嬢ちゃんには特別な。」

と言って、グラスについだオレンジジュースを、そっとおいてやった。

「ずりぃ!俺にはくれたことねぇのに。」

すねてしまったアランに、バロンは。

「かわいい子は特別なんだ!」

と言い捨てた。しかし、アランは、納得がいってないようで、自分の皿にあったカレーを一口、スプーンごと押し込んだ。俺は新しいスプーンをとって、カレーを食べ始めた。

「やっぱ、いつもより辛いな。」

そう言った直後、バロンは火を吹きながら、店のなかを走り回った。

「本当は、全部食わそうと思ったんだぞ!一口だっただけ良かったと思え!」

周りはひでぇなやらなんやら言っているが気にしない。淡々とカレーを食べる俺に、ミリアが。

「何があったの?」

と聞いてきた。説明なんて柄じゃねえから、ミリアにも、一口の半分の半分の半分の半分ぐらいを食べさせた。

「なにこれ!辛すぎる!」

といっている少女に水を渡すと、一気に飲み干した。すると、先ほどの店員が。

「マスター、アランに嫌がらせするために、激辛よりも辛く作ったのよ。」

「全く、自業自得だな。」

「後、私はマリアって言うの、よろしくね!」

よろしくお願いしますと一礼するミリアに俺は。

「敬語なんかじゃなくていいぞ。」

と言った。

「ここにいるやつらは良いやつらばっかだからな!だからそんな、遠慮しなくて良いって。」

驚いたかおでミリアは、良いのですか?と聞いてきた。

おう!と明るく言うと、ミリアは立ち上がり、

「皆!よろしくね!」

と、大きな声で言った。



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