TRPGの功罪
TRPGというのをご存知でしょうか?
知らない人に説明するのは、非常に難しいのですが。
たいていは4人から5人でおこなう『即興演劇』の混じった卓上ゲーム、といえば、イメージがつかみやすいかもしれません。
「トラベラー」というSF世界を体験するというルールブックが始まりです。
やがて、「D&D」というファンタジー世界を体験するものができました。
かの『指輪物語』の世界を体験するというシステムもあります。
このゲーム、いわゆるコンピュータRPGにおけるコンピュータの部分をGMが担います。
GMは、シナリオライターであり、審判でもあります。
GMが用意したお話を、他のメンバーが自分のキャラクターを作成して、架空世界を冒険する……まあ、そんなゲームです。
私は、いわゆるGMあがりなので、小説の作り方がどこかTRPG方式になります。
(その話は、また、別の機会にしたいと思います)
今回は、最近のファンタジーで見かける『冒険者』という用語の話です。
TRPGでは、プレイヤーの演じるキャラを便宜上『冒険者』と呼びます。
そう。正当派ファンタジーを読んできた人が首をひねるであろう、不思議な冒険者なる言語が発生します。
ここで、日雇い労働者であるはずの人間が『冒険者』という職業についてしまったのです!
もちろん、世の中には『冒険家』というアヤシイ(失礼)偉大な肩書を持った人たちは存在します。
しかし、この「冒険者」というやつは、各種様々に別々の技能を持つはずの人間を統括してしまう、とても便利な言語なのです。
小説世界で誰が『冒険者』を使い始めたのか、ちょっと謎ですが、水野良先生の『ロードス島戦記』が始まりの気がします。(違っていたらすみません)
というのも、ご存知の方も多いかと思いますが、『ロードス島戦記』は、日本製のテーブルトークRPGの草分けだからです。
だからどうだ、というものではありませんけれども。
TRPGというのは、素人のGMが、拙いアイデアで物語をつくり、みんなで楽しむというゲームです。普通の小説のように旅の仲間が徐々に出会って、などとやっていたら、退屈する人間が出ますから、どんなに最初の冒険でも、スムーズにはじめられるように、冒険者の店という謎の店ができ(たいていは酒場兼宿屋)、冒険者ギルドなるものもできました。
ゲームですから、数値的にレベルアップ作業や、スキル取得をしますので、それらをスムーズに行うと言う意味もあります。
そして、冒頭はたいてい冒険者の店から始まり、「君たちは、この店で知り合った。君たちにできる仕事は……」などと、切りだしたりするわけです。
TRPGは面白いです。それはいいのですが……。
日本のファンタジーから多様性を奪ってしまった側面もあるのではないかな、と、ほんの少しだけ思うのでした。