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手紙

作者: 文月一句
掲載日:2014/09/01

はじめまして。

まず、はじめにつたないぶんしょうをおおくりすることをおゆるしください。

まだわれわれは、あなたたちのことばや、ぶんかようしきなど、そういったことにうといのです。

ぶんかようしきといえば、このまえいただいた"はなび"はすごくきれいでした。

ただ、わたしたちのほし、"もくせい"というほしなのですが、それがなくなってしまいました。

それからわたしたちはたいへんな"くろう"(すごくだいじなことばです。いみがわかりますか?)をして、

なんとか"たいようけい"をもとどおりのうごきができるよう、ちょうせいしました。


そのことで、かなしいことなのですが、つたえなければいけないことがあります。


「我々は、戦争状態に入った」

顔に似合わない小さな声で、男は言った。

手を後ろで組み、歩きながら。

「戦争状態だ、わかるか?」

火星方面の、宇宙を漂う軍事基地の中、その一室で合計三十人の男たちが、二列に整列している。

その二列の間を歩きながら、男は問いかけている。

誰も答えるものは居ない。

それは、いつもの事だった。

「お前たちは初めて本物の戦場に駆り出されることになる」

そう言って、男は手のひらに入るほどの小さな機械を握りこんだ。

前方に広げられたスクリーンに、三十人の向かう先や、やるべきことが映し出される。

たった三十人の男を映し出された場所に送るためだけに、三千人もの人間がかかわっていた。

人類にとって宇宙空間での作戦行動は、それほどめずらしいものではなくなっていた。

過去の軍隊で言えば小隊ほどの規模の攻撃隊が、作戦規模の行動を行う。

そういったやり方が、異文化を持つ異星人相手に通用するのか。

通用した。

結局のところ、地球人ほど殺戮の得意な種族は、今のところ存在しない。

今まで地球の持つ戦力は、故意に三十の種族と、事故的に三つの種族の文明を破壊するに至った。

それらの行為による文明の進化の速度は、異様なまでの勢いだった。

ベテルギウスの超新星爆発のあおりを受けた難民たちが、地球の一番最初の相手だった。

そう、難民だ。

一般的な解釈であれば、非戦闘員である。

それを、たぶん彼らからすれば小石を投げた程度の事で、人類は相手を文化的な生活が出来ない程度まで落ちぶれさせた。

小石は大きかった。

今の歴史家が考えるうえで、戯れだったとするそれは、木星を消滅させた。

失われた引力や破壊された時のエネルギーで各惑星の軌道が乱れ、不意打ち状態であった地球は、「一時意識不明」という言葉がぴったりな状態となった。

しかし、その後も地球の文明が生存しているどころか、さらなる繁栄を遂げている現状を見る通り、

すべての人類が意識不明になったわけではなかった。

「彼ら」との交流が開始してから、ずっと準備を進めていた人たちだ。

歓迎するのではなく、防御の術を考えていたその人たちは、結果として再興した太陽系の最大派閥となった。

今ではその派閥が裏で手を引いていたのではないかとも噂されるが、噂の域を出ていない。

なぜなら、「彼ら」にとって地球の人々は、社会生活を行う虫程度のものとしか思っていなかったからだ。

交流を開始したと思っていたのは、人類がそう思っていただけだった。

人間の子供が戯れで虫の巣を潰すように「彼ら」は「花火」を放り込んだ。

一撃で太陽系最大の惑星を破壊したエネルギーは、地球はおろか各惑星に足がかり的に建設されていたステーション、衛星、植民地等に大なり小なりの被害を与えた。

きっと、今はもう居ない「彼ら」はそうやって反応を見ていたのかもしれない。

結果として、つついてはいけない蜂の巣を刺激してしまった事を知ることになった。

わずか二年で「彼ら」を凌駕した人類は、その五年後に多種族との交戦中に「彼ら」の根絶を宣言した。

大抵の人たちには忘れられていた事であり、そのニュースが根絶の日以降に触れられることも無かった。


三十人は暴力の結晶だった。

彼ら一人一人が、惑星はおろか一つの星系すべてをカバーするほどの戦力を持つ。

その大半は特殊な訓練を受けた彼らが、ほぼ無意識に繰り出す自動戦闘機によるものだ。

通常の人間には脳への負担が大きすぎる。

自分の手足が幾億本になったとしても制御できる人間だけが、この任務に就ける。

そういった人間が、三十人一組となって一星系ずつ捻りつぶしていく。

彼らはいわば外交官で、そういった暴力を背景に服従を迫った。

あるいは、言葉が分からないのでそのまま轢き殺した。

「彼ら」の事を知ったら、この宇宙に居る様々な種族は、一斉に非難をするだろう。

この宇宙で最も残虐な一族の目覚めを引き起こしたのだから。


ごめんなさい ゆるして


とてもつたない地球の言葉で書かれた手紙を、三十人の長たる男は、機械を持った逆の手で握りつぶした。

地球由来のパルプで製紙され、鉛筆で書かれているそれは、誰が書いたのかも分からない。

あるいは、かつて「本物」の外交官だった彼が書いたのかもしれない。

人類は、ここまで来てしまったのだ。

男はまだ、その手紙を捨てられずにいる。

かつての、地球人であったその名残を。


私用で昨日からようやく書き始められました……

本当はもっと、本格的に戦闘描写等も入れたかったですが、参加表明した以上期間内で書くこととしました。(当たり前の話ですが)

せっかくの企画なのにもったいなかったな……

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