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影に生きる者 〜王子を見つめる夜の瞳〜

王都の夜を包む静寂の中、ひとつの影が動き出す。

月光に照らされた王城、その屋根の上から王子を見つめる謎の女。

彼女は何者なのか、そして王子に何をもたらすのか。


影に生きる者が紡ぐ夜の物語、幕を開ける。

王宮の扉が開くと、冷たい大理石の床に馬車の車輪の音がこだました。

光の差し込まぬ城門の奥は、まるで異世界のように静寂に包まれている。

昼間の市場の喧騒と、奴隷市場でのざわめきが嘘のようだった。


アレクサンドル・ヴァルディアは、馬車から降り立つと、一度だけ深く息を吸い込んだ。

——戻ってきた。

しかし、今日の王城は、いつもとは違う「冷たさ」を帯びていた。


その理由は明白だった。


——異種族の子供を連れて帰ったから。


彼の背後で、従者たちが戸惑いの視線を投げかける。

侍女たちは(ささや)き、衛兵たちはわずかに眉をひそめた。


「……王子様、こちらへ」


側近のレオネルが静かに言った。


アレクサンドルは振り返る。

彼のすぐ後ろには、静かに立つ一人の少年——アシュレイ・ロウフェルがいた。


銀色の美しい髪。

痩せこけた体。

それでも、彼の瞳だけは揺るがない強さを宿していた。


けれど、その瞳が映し出すのは、警戒。

そして、ほんのわずかな、諦め。


(……こいつは、何度も見てきたんだろうな)


差別と、侮蔑(ぶべつ)と、理不尽な怒り。

それでも、アシュレイは自分を失っていない。


それがどれほどの強さなのか、アレクサンドルにはまだ分からなかった。

ただ——


(俺は、こいつをここで見捨てる気はない)


アレクサンドルは、その思いを胸に、王宮の奥へと歩を進めた。



王宮の廊下は、凍えるような静寂に包まれていた。

高い天井に吊るされたろうそくの明かりが、わずかに揺れていた。

石畳に足音が響くたびに、周囲の視線が彼らを追った。


——驚き。

——疑念。

——軽蔑。


アレクサンドルが異種族を連れて帰るなど、王宮の誰もが予想していなかったのだろう。

貴族の子息らが廊下の隅から見つめ、顔を見合わせる。


「……あれが?」

「まさか、王子が本当に……?」

「冗談だろう。奴隷市場のものを?」


冷たい声が、あちこちから漏れ聞こえた。


アレクサンドルは無視する。

いつものことだった。

「無能な王子」「役立たず」と陰で笑われることには慣れている。


だが——


「ハーフエルフのガキが城に?」


その言葉に、アシュレイが小さく眉を動かした。


アレクサンドルは立ち止まり、振り返る。

アシュレイは何も言わなかった。

けれど、少しだけその表情が固くなったのを、彼は見逃さなかった。


(この国では、どこへ行っても、こう言われるんだろうな)


不快感が胸に渦巻く。


アレクサンドルは、淡々と口を開いた。


「聞こえるぞ」


——その瞬間、廊下に静寂が広がった。


貴族の子息たちはハッとして、慌てて目をそらした。


王族としての威厳を見せたわけではない。

彼は、ただ「気にしていない」と言いたかっただけだった。


だが、それでも、アシュレイの瞳にはわずかな驚きが宿っていた。


(王子ってやつは、こういうもんか?)

(それとも、こいつは……違う?)


ほんの少しだけ、アシュレイの心が揺らいだ。


——それを、アレクサンドルは知らない。



王宮の奥、玉座の間。


王国の支配者であるヴァルディア国王が、立派な椅子に腰掛けていた。

彼の周囲には、貴族たちが並び、王子の帰還を待っていた。


扉が開く。

アレクサンドルが進み出る。


そして、その隣には——


異種族の少年がいた。


瞬間、貴族たちの顔がゆがんだ。


「……これは」

「まさか、本当に連れ帰ったのか?」

「正気か?」


王国の高官たちが動揺し、ささやき合う。


「アレクサンドル」


低く響く国王の声が、場の騒めきを静めた。


「そなたは……何を考えておる」


冷たい視線が、アレクサンドルに突き刺さる。


王族の命令に(そむ)くことが、どれほどのことか分かっているのか?

ましてや、「異種族」を連れ帰るなど——


アレクサンドルは、動じなかった。

ただ、まっすぐに父王を見つめた。


「この者は、自分には必要だと判断した。自分の従者とする」


「従者……?」


王は口元に薄笑いを浮かべ、「ふん…」と小さく鼻で笑った。


「そなたは、王族の血を引く者だ。貴族の子弟でもなく、異種族の奴隷を従者とするなど、聞いたことがない」


貴族たちが口々に同調する。


「まったく、何を考えているのやら……」

「王族としての矜持(きょうじ)はどこへ行ったのだ?」

「魔法も使えぬ王子が、今度は異種族のガキを連れ歩くのか」


その言葉が、アレクサンドルの心を冷やした。


(……やはり、この国の根本は、変わらないのか)


この国の「常識」は、異種族を認めることはない。

そして、王族がその価値観を(くつがえ)そうとすれば、必ず反発を受ける。


だが、アレクサンドルは知っている。


「だからこそ、俺が変えなければならない」


それがまだ、遠い道のりだとしても——


彼はこの国を変えるために、ここにいる。


そして、その第一歩が、目の前にいるアシュレイ・ロウフェルなのだ。


国王が沈黙する。

その間に、貴族たちがざわつき始める。


(これは……思ったより、やっかいなことになりそうだな)


——しかし、アレクサンドルはまだ知らない。

この時、すでに彼とアシュレイを排除しようとする陰謀が動き始めていたことを——。



訓練という名の戦場

「では、始めるとしようか」


訓練場の中央に立つ指揮官が、皮肉げに口元をゆがめた。


「ここでは、実戦を想定した戦技の訓練を行う。戦場では、甘えや容赦は許されない。相手を倒す覚悟を持たなければならない」


そして、冷たく言い放った。


「——特に、『不要な者』が生き残るためにはな」


クスクスと笑い声が響く。


周囲の兵士たちが、アシュレイを「不要な者」として、軽蔑(けいべつ)の目で見ていた。

この国の常識では、「異種族が戦場に立つ資格すらない」という考えが根強い。


——だが、その考えは、一瞬で覆ることになる。


「では、始めろ」


合図とともに、アシュレイの初めての戦いが始まった。


訓練用の木剣を手にした兵士が、鋭く踏み込む。

その速度は、常人ならば反応できないほどの速さ。


だが——


ヒュッ!


ほんの一瞬だった。


アシュレイの身体が(わず)かに傾き、その刃は空を切った。


(速い……?)


兵士の顔が「なに…!?」と驚くと同時にゆがんだ。


「——お前らが、遅いんだよ」


アシュレイが口にした次の瞬間——


ゴッ!!


鋭い一撃が、兵士の胸を打ち抜いた。


「ぐっ……!」


鈍い音が響き、兵士が吹き飛ばされる。


その場にいた者たちは、息をのんだ。


——何が起きた?


——たかが、異種族の奴隷だったはずだ。


——なぜ、王国の兵士よりも強い?


その場にいた貴族の一人が、顔を青ざめながら言った。


「……ありえない」


だが、現実として目の前にあるのは、たった5歳の少年が、兵士を圧倒しているという事実だった。


そして、この瞬間から——


王宮の陰謀は、次の段階へと進み始める。


訓練場に沈黙が落ちた。


砂埃(すなぼこり)の舞うその場で、倒れた兵士がうめきながら地面に転がる。


アシュレイの手にある木剣は、揺らぐことなく真っ直ぐに構えられたままだった。

まるで、何の感情もないかのように。


王族や貴族の視線が、一斉にアシュレイへと集まる。

その瞳には驚きと困惑が(にじ)んでいた。


「……ふざけるな」


沈黙を破ったのは、貴族の一人だった。


「このような……異種の混血が、王国の兵士を圧倒するなど……!」


怒りに震えた声が響く。


戯言(たわごと)だ……! こんなものが、我々の兵より強いなど、あってはならぬ!」


「そうだ! 王子様が連れてきた異端者が、我らが誇る精鋭を倒しただと? 馬鹿げた話だ!」


貴族たちは口々に叫び、苛立(いらだ)ちを(あら)わにする。


彼らにとって、「異種族の混血」は決して人間と並び立つ存在ではない。

それはあくまで道具であり、支配されるべき存在なのだ。


それが今、目の前でその価値観が打ち砕かれた。


しかも、それを証明したのは——

たった五歳の少年。


彼らの誇る王国の兵士を倒し、なおも冷静な表情を崩さない。

それが貴族たちのプライドを傷つけた。


「ありえん……! 何かの間違いだ……!」


「そうだ、偶然に過ぎぬ! こんな異端が我々の兵より強いなど、あってはならぬ!」


まるで自分たちに言い聞かせるように、貴族たちは次々に言葉を吐き出した。


しかし——


「偶然?」


静かな声が、それを否定するように響いた。


アシュレイが、淡々とした口調でつぶやいた。


「お前たちが遅いだけだ」


その言葉は、貴族たちにとって屈辱そのものだった。


「貴様……! 口を(つつし)め!」


貴族の一人が怒りを露わにし、地面を蹴るようにして進み出る。


「ならば証明してみせろ……!」


その男の指示で、さらに二人の兵士が前へ出る。

彼らの目は明らかに怒りを宿していた。


「異端者ごときが、人間に勝てるわけがない」


「今度こそ、叩き伏せてやる」


彼らは、先ほど倒れた兵士よりもさらに経験豊富な者たちだった。

その腕前は王国の中でも一流とされる者たち。


アシュレイは、一瞬だけアレクサンドルを見た。


(これが、貴族というものか)


自分たちの価値観が揺るがされると、こうも簡単に怒りに支配される。

愚かしいと思いながらも、アシュレイは木剣を構えた。


——その次の瞬間、訓練場の空気が震えた。


「始めろ!!」


号令と同時に、二人の兵士が襲い掛かった。


「ふん、今度は避けられるか?」


先ほどとは比べ物にならない速さで、二人の兵士が同時に剣を振るう。


——しかし、アシュレイの姿が消えた。


「なっ……!?」


兵士の木剣が空を切る。


「上だ!」


仲間の叫びに反応し、兵士が顔を上げた瞬間——


バキィッ!!!


アシュレイの木剣が、兵士の肩口に叩き込まれた。


「ぐっ……!?」


肩がしなる音とともに、兵士が地面に膝をつく。


しかし、もう一人の兵士がすぐに反撃に出る。


「お前ごときに遅れを取るかぁッ!!」


怒りに燃えた瞳で、兵士が振り下ろした木剣。


その勢いは、先ほどの倍以上。


これを受け止めるには、並の者では無理だろう。


——だが、アシュレイは受け止めなかった。


彼は、木剣が振り下ろされる寸前で一歩だけ後ろに引いた。


たったそれだけの動作。


しかし、それだけで兵士の木剣は届かなかった。


そして——


スッ——


わずかに踏み込み、相手の胸元へと突きを放った。


ドンッ!


「ぐはっ……!!」


衝撃を受けた兵士は、たまらず吹き飛ばされた。


その場に倒れた兵士は、もう立ち上がることができなかった。


二人の兵士を、わずか数秒で圧倒した。


貴族たちは息をのんだ。


「馬鹿な……!」


「この程度の兵士が王国の精鋭だと……?」


アシュレイは、木剣を地面につけ、淡々と言い放った。


「つまらない」


静かに、それだけを口にする。


「……なに?」


貴族たちの顔が怒りで赤く染まる。


「貴様ぁ……!!」


叫びながら、数人の貴族が前へと出た瞬間——


アシュレイは地面に倒れ込んだ。

数人の兵士に囲まれ、一人が剣の柄で彼の背中を強く打ちつける。さらに別の兵が足を振り上げ、容赦なく彼の脇腹を蹴りつけた。


それでも、アシュレイは声を上げなかった。

唇を噛みしめ、痛みに耐えながらじっと兵士たちを(にら)み返している。


「口答えもしねぇとは、さすが獣の血が混じった奴だな」

「おい、少しは痛がってみせろよ」


まるで、「ざまあみろ」とでも言うような、卑劣な笑い声が響き、兵士の足が振り上げられる。


——その瞬間だった。


「やめろ!!」


鋭い声が響き渡り、場の空気が一瞬で凍りついた。


兵士の足がアシュレイの顔を踏みつける直前で止まる。彼らが振り返ると、そこには小さな王子——アレクサンドルが立っていた。


幼い顔には、抑えきれぬ怒りが影を落としていた。

瞳は鋭く、普段の「無能な王子」とは別人のようだった。


「王子……様?」


兵士たちは困惑の表情を浮かべる。

王族の目の前で、奴隷のような混血を痛めつけるのは、むしろ当然のこと。そう思っていた彼らには、王子の怒りの意味がわからなかった。


アレクサンドルは、小さな足で兵士たちの間を進む。


「この訓練は、一体何のためのものだ?」


静かだが、張り詰めた怒気を帯びた声。


兵士の一人が肩をすくめ、言い訳じみた口調で答えた。

「王子、このハーフエルフは戦い方を学ぶべきかと。少しばかり手荒な指導を——」


「ふざけるな!」


世界が、一瞬だけ震えた。

アレクサンドルの声に込められた魔力が、一瞬だけ漏れ出したのだ。


——ズンッ


大気が重くなる。


足元の地面が、びりびりと震える。


目に見えぬ圧力が、訓練場全体を包み込んだ。


兵士たちの顔が、恐怖に染まる。


「っ……!!?」


何が起こったのかわからない。


ただ、本能が叫んでいた。

この場に逆らってはならない、と。


——アレクサンドルの背後に、何かとてつもないものが揺らめいていた。


兵士たちの呼吸が浅くなり、思わず剣を手放す者もいた。


王子は「魔法を使えぬ無能」だったはず。

それなのに、いま、この場を支配しているのは紛れもなく彼の存在感だった。


その空気を、誰よりもはっきりと感じ取ったのは——アシュレイだった。


(こいつ……何者だ?)


目の前に立つアレクサンドルから放たれた威圧感は、尋常ではなかった。


たった一瞬——王の風格をまとっていた。


「し……しまった……」


アレクサンドル自身も、その異変に気づいた。


(まずい、抑えきれなかった)


彼はすぐに意識を集中させ、己の魔力を封じ込める。

わずか数秒の出来事だった。


だが、その数秒が、訓練場にいたすべての者の認識を変えた。


先ほどまで王子を馬鹿にしていた兵士たちでさえ、その圧倒的な威圧感に(あらが)えず、膝を折りそうになっていた。


アレクサンドルは、決して「無能な王子」ではなかった。


それどころか、彼らが想像すらできぬ「何か」を秘めていた。


しかし——その「何か」が何なのか、誰も知ることはなかった。


なぜなら、彼はすぐにそれを隠したからだ。


「……王子様?」


レオネルが、冷静な声で問いかける。


アレクサンドルは静かに息をつき、何事もなかったかのように歩を進めた。


兵士たちは誰も動けない。


アシュレイのもとへと歩み寄り、アレクサンドルは静かに手を差し伸べた。


「立てるか?」


アシュレイは、王子の顔を見上げた。


その瞳には、どこまでも真っ直ぐな光が宿っていた。


——「お前を絶対に守る」


そう言っているようだった。


アシュレイはしばらく彼を見つめ、そして、ゆっくりとその手を取った。


「……悪くないな」


かすかに微笑んだ。


それは、彼がこの世に生まれて初めて、「誰かを信じてもいい」と思えた瞬間だった。


アシュレイの小さな手を握るアレクサンドル。


その瞬間——


彼らの間に、言葉にできない何かが芽生えた。


アシュレイは今まで、人間を信用したことがなかった。

だが、この王子は違う。


「お前は、俺の仲間だ」


アレクサンドルのその言葉が、アシュレイの胸の奥に静かに刻まれる。


これまでずっと「不要」とされ、誰にも必要とされなかった彼が——


今、この王子に必要とされた。


(……なら、俺は)


その誓いはまだ口にはしない。

しかし、アシュレイは心の中で、たった一つの決意を固めた。


——この王子には、俺のすべてを賭けてもいい。


その誓いが、のちに王国の未来を大きく変えることになる。


だが、それを知る者は、まだ誰もいなかった——。


その夜…。

静寂を裂く羽音が、夜闇の中に溶けていく。


王都の夜空には、雲一つなく、月が冷たく光を放っていた。


まるで蒼白い絹を紡いだかのような月光が、王城の石畳を滑るように照らしている。


——ふわり、と。


漆黒の闇の中、一匹の蝶が宙を舞った。


青紫の(はね)に淡い光をまとい、夜の空気に溶け込むように優雅に揺れる。

それはまるで、闇夜に咲いた一輪の花のように——美しく、妖艶に。


しかし、その光景を見つめる者は、この夜の王城にはいなかった。


ただ一人。


闇の中から、その蝶を見つめる影がいた。


「ふふ……」


かすかな笑い声が、夜の静寂に溶ける。


王城の屋根の上——

黒いマントをまとい、すらりと伸びた脚を組むようにして、影が月を見上げていた。


その女の名は——ルシア・ノクス。


影に生きる者。

闇をまとう女。


「私の名を知る者は、影に消える運命……あなたも、例外ではないわ。」


黒曜石のような漆黒の髪が夜風になびき、月明かりを背に受けたその姿は、どこまでも幻想的だった。

妖艶な微笑を浮かべながら、細く美しい指が長い髪をかき上げる。


「王子様……ふふ、あなたはどこまで私を楽しませてくれるかしら?」


その言葉には、どこか楽しげな響きがあった。


訓練場での出来事——

彼女はすべてを、影の中から見ていた。


アシュレイを助けたアレクサンドル。

抑え込んでいた力が、一瞬だけ解放された瞬間。

それを見た兵士たちの(おび)えた顔。


すべてを、静かに、興味深そうに見つめていた。


「隠していたのね……ふふ、これは思ったより面白い展開になりそう」


目を細めると、ルシアはゆっくりと屋根の端に足をかける。

風がそっと彼女のマントをはためかせた。


その瞬間——


蝶が、彼女の指先にとまった。


青紫の翅がゆっくりと動き、月光を受けて(はかな)く輝く。


ルシアは、そっと指で蝶の翅をなぞる。


「あなたが私の“駒”で終わるのか、それとも運命を変えてみせるのか……?」


月を見上げ、唇にかすかな笑みを浮かべた。


「私の手で、もっと面白いものにしてあげようかしら?」


彼女の言葉に応えるかのように、蝶がひらりと舞い上がる。

夜の(とばり)に溶けるように——


そして、ルシアの姿も、次の瞬間には影の中へと消えていた。


王城の静寂の中、誰も気づかぬまま、一つの影が動き始めた。


それは敵か、あるいは……?


月明かりの下、影はただ王子の存在を見つめていた。


次回、影のルシア・ノクス——その目的が明らかになる。



影の暗殺者ルシア・ノクスが登場しました。

妖艶さと神秘性をまといながら、王子に興味を抱く彼女の目的とは。

彼女の視線が意味するもの、そして今後の展開にどう関わるのか。


次回、影の中で交わされる駆け引きにご期待ください。

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