終焉の空と覚醒の光 〜二人の運命は交錯する〜
「この世界に、決して存在してはならない力を持つ者がいたとしたら——あなたはどうしますか?」
すべての魔法属性を宿し、世界の理を超越した異端の存在。
それは神の祝福か、それとも——世界を滅ぼす呪いか。
これは、一度滅びの未来を予測した二人の科学者が、
新たな世界へと転生し、"異なる運命"を生きる物語。
王族として生まれた少年、アレクサンドル・ヴァルディア。
貧しき村で生を受けた少女、エレオノーラ・ヴァレンティーナ。
本来なら交わることのなかった二人の人生が、ある春の日、再び交差する——。
すべてを欺く最強のスキル《隠蔽》を持つ王子が選んだ道は、“無能な王子”として生きること。
それは自由を手に入れるための偽りであり、
そして、最も大切な人を探し出すための唯一の手段だった。
運命に導かれた二人が、滅びの未来を変えることはできるのか。
それとも、世界はすでに破滅の道を歩んでいるのか——。
これは、過去と未来を超えて紡がれる"再生の物語"。
その結末を、ぜひ見届けていただけたら嬉しいです。
◇◇◇
――落ちるぞ!!
轟音が機内を揺るがした。
窓の外には、闇を切り裂く閃光。
機体がきしむ音が骨に響き、悲鳴と警告音が入り混じる。荷物が宙を舞い、酸素マスクが降りる。
青山美咲は、乱気流に翻弄される飛行機の座席に押しつけられながら、隣の赤谷直樹を必死で見つめた。
「……直樹!」
とっさに手を伸ばすと、彼もまた、震える指で彼女の手を握り返した。
二人は、未来予測の研究を行うデータサイエンティストだった。社会課題を解決し、国の繁栄を導く――。
しかし今、その未来など存在しないかのように、彼らの乗る飛行機は墜落しようとしていた。
「クソッ……こんなところで……!」
直樹は悔しさを滲ませた。だが、その時。
◇
美咲のポケットで、何かが光った。
「……っ!?」
まばゆい閃光が機内を包み込む。
それは、彼女が幼い頃にもらった 「魔法の石」 だった。
――カッ――!!
意識が弾け、すべてが白に染まる。
◇◇◇
王族の名を持つ者
美咲が目を覚ました時、最初に見えたのは、巨大なシャンデリアと重厚な天蓋 だった。
豪華なカーテン、金の刺繍が施された装飾品、繊細なレース――。
(……夢?)
いや、違う。
彼女は 赤ん坊 になっていた。
「可愛い王子様ですね」
乳母が優しく微笑む。
(王子……!?)
美咲――いや、アレクサンドル・ヴァルディア は驚愕した。
王宮の広がる窓の外。そこに見えたのは、黒煙を上げる工場と軍隊の行進。
そして彼女は理解する。
――ここは、彼女たちが研究していた「未来滅亡シナリオ」の中の国だった。
このままでは、100年以内に確実に滅ぶ国。
(……なら、変えるしかない)
転生してしまった以上、もはや彼女は研究者ではいられない。
この国の命運を、彼女が握ることになるのだから――。
◇◇◇
もう一人の転生者
同じ頃――。
直樹もまた、目を覚ました。
だが、彼が見たのは宮殿の天井ではなかった。
古びた木造の家。肌寒い空気。
そして、鏡に映った――金髪の少女。
「……は?」
自分の手を見つめる。
そこにあったのは、か細く、透き通るような指。
「うそだろ……?」
自分が 少女として転生 していることを知った瞬間だった。
直樹――いや、エレオノーラ・ヴァレンティーナ。
彼は、美咲とは違い、貧しい村に生まれていた。
なぜ性別が入れ替わったのか?
なぜこの国に転生したのか?
その答えは、まだ霧の中だった。
◇◇◇
無能の王子
時が流れ、アレクサンドルは 王族としての教育 を受ける年齢となった。
この世界では、魔法は火・水・風・土・光・闇の六属性 に分かれ、王族は 二属性を持つ者が多い。
だが――。
アレクサンドルは、それら 全てを持っていた。
(これがバレたら、確実に消される……!)
“神の領域”の力を持つ者は、この世界には存在してはならない。
「ならば、隠すしかない」
そうして、アレクサンドルは 「無能の王子」 を演じることを決意する。
(待っていて、直樹。必ず見つけるから)
◇◇◇
運命の再会
そして――3歳の春。
王都の祭りの日。
アレクサンドルは、人混みの中で 金髪の少女 を目にした。
透き通る青い瞳。
どこか懐かしい気配。
心臓が、強く打つ。
「……直樹?」
少女――エレオノーラもまた、彼を見つめていた。
この再会が、二人の人生を大きく揺るがせることになるとは知らずに――。
◇◇◇
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
アレクサンドルが “無能な王子” を演じる理由や、隠蔽スキルの本質が少しずつ見えてきました。
本来なら王族の中でも圧倒的な才能を持つはずの彼が、それを隠しながら生きることを選ぶ理由。
そして、エレオノーラとの再会がどのように影響を与えるのか――。
次回は ついにアレクサンドルとエレオノーラが再会する祭りのシーン!
果たして、彼らは互いに気づくのか? それとも、すれ違ってしまうのか?
これからも二人の成長と運命を見守っていただけると嬉しいです!
感想や応援のコメントも励みになりますので、ぜひお待ちしています✨
それでは、また次回!