商談は出会った時から始まっていた…!?
この出会いは奇妙でいて難解だ。お爺さんと信じて疑わなかった相手が実は絶世の美女…しかも、その女性がワタシの商談相手だなんて。
彼女の変装の技術は誰も見ぬけないでしょう。
ワタシが言える立場じゃかないけどさ……。
「早速、始めましょうか」
「ハイッ……」
緊張からか声が裏返ってしまってしまいながら話は進む……。ワタシ達を自分の屋敷に招待したのはポーションの独占が狙いだったようでその辺りは偽りなく、素直に話してくれた。
「それでさ〜どうかしら私と契約してくれたらこの裏市で商いをやっている連中よりも5割増しで取引してもイイと思っているわ」
正直に言ったら『5割増し』と言われてもピンとは来ていない。商売関係には疎くて得しているのか損してるのかなんて見当も付いていない。
チラッと横にいるマーツを見てみたが、彼女は元は妖精族……人間の商品価値はわかっているとは思えない。
「うーん」
「ほぉ…渋るとはな」
ちょっと勘違いされてしまっているけど、悩んでいるワケじゃない。『うーん』って言ったのはお手上げって意味なんです。
「じゃあ、7割でどう?」
「それでお願いします!」
本当は毎日、食事と衣服が買える程度のお金があれば十分なんですが……。
そんな問題では無くなっていく。
「まいどあり♪今から先払いで支払うけどかまわないよね?」
「あっ…ぜひお願いします!こちらも直ぐにならいくつか出せますよ?」
ストレージを確認すると回復ポーション50本と元気になれるポーション30本、爆弾型ポーションが20本で合計……100本が手元にあった。
それを、マリーさんに言うと顔が青ざめていた。
「あなた……ワタシを破産させる気かしら?」
「いや、別に…持ち合わせの話ですから!」
マリーは少し悩むと支払いができる範囲と初回ってのもあり、少なめに見積もるとワタシに20本の回復ポーションをお願いされた。
「はい、どうぞ♪」
ストレージから一本ずつテーブルに回復ポーションを並べるとマリーさんも布袋に詰めた財貨を手渡した。
「本当にポーションって作れるのね〜これを受け取ってね!取引先にはサービスしてるわ❤︎」
中を見ると金貨が山のように入っていた。これはどのくらいの価値かは分からないけど、金貨って普通は高価なはず。だとしたら……
「ちなみに無知そうだから教えとくけど、この量なら……2年は遊んで暮らせるわ!」
「にっ……2年!?もらい過ぎじゃないの!」
驚いて声を上げた。タダのポーションにそんな価値があるとは到底……ドッキリ?
「もらい過ぎって…少なくしたのに……」
「え?」
「あっ……何でもないわ!ちなみにそれだけあれば家も買えるわよ?」
確かに家はあると便利よね……ずっと宿屋はちょっと嫌だと思っていたし!
「あと、取引は一カ月に一回にしてもらえないかな?ネムとの取引は高額になるから宛ができるまでは頼むよ」
「わかりました!ワタシもその方が都合が良いですし、取引先が一つだと助かります♪」
ワタシ達は次の取引の日に直接この屋敷に転移できるようにしてもらうとその日は街に戻って宿に泊まることにした。




