村で起こる事件(1)
妖精の村の中心にそびえ立つ大樹は世界樹と呼ばれている木でこの世界の支柱となっているらしい。
生命エネルギーが満ちたこの一帯は花々が咲き誇り、木々も青々と茂っているのも世界樹の生命力で維持されているとか……を宴会の席で永遠と長老の長話を横で聞かさられていた。
「クッ…ヤマブキに妖精王を丸投げしたからか?」
「これは罰に違いないわ…。」
「お若いのに真剣に聞いてくれて嬉しゅうございますよ…ネム殿♪」
「え……と……でも、ソロソロ失礼し……」
周りの妖精達は私を掴むと逃しませんよって感じで動きを封じてくる。
(いゃ、何てチカラなのよ!?)
全力で動こうとしてもピクリもしない…小さい体になんてパワーを隠し持っているの!?って思いながらガッツリ2時間も長老トークに付き合わされていた。
夜も深まり、宴会も佳境を迎えようとしていた頃に状況が一変する。
「見て……」
「いやぁーッ!!」
妖精達が一斉に異変に気付いて悲鳴が聞こえてくる。私は世界樹に目線を向けると異変の正体にようやく気付いた。
「これは一体……?」
(さっきまで綺麗な緑色と光を放っていたのに…)
「終わりなの…」
「終わりデス…」
「終わりなのです……」
三姉妹も絶望感に沈んでしまっている…他の妖精も目から光は消えてしまった。
「コレは…人間が入ったからよ!」
「そうだ!人間を招いたからだ!」
「人間め!疫病神め!」
すごい言われようだけど、ワタシが反論しても焼け石に水……この場の全員がワタシを悪と断罪しているのが伝わってくる。
さっきまで仲良く話していた妖精も敵を見る目に変わり、一人孤立していた。
マーツもポックルもクリカもワタシを庇えないのは分かっている。
「人間……出ていけッ!」
「分かった…出ていくわ。」
ワタシはヤマブキを連れて行くために妖精王の屋代へと向かった。
「ごめんなさい。」
「ヤマブキの元へ行きたいの…通してもらえる?」
しかし、武装した妖精達はそれを拒んでワタシを世界樹から遠ざけようとする。
「皆よ待て!」
妖精王ジル・アルテ・オリジンとヤマブキが屋代から姿を現すと妖精達が心配そうに妖精王を見る。
「この現象はネムのせいではない!」
「ずっと前から寿命が近づいていたのをワシが無理矢理永らえさせていただけじゃて…。」
「皆、ワシの客人に無礼な態度は許さん!」
「即刻、謝罪せい…皆の衆。」
ワタシの疑念は晴れても深刻な問題は変わらないのでは……この木が腐ったりしたら世界はどう……
「ジルさん!世界樹が枯れたらどうなるの?」
「うむ…緩やかに崩壊していくじゃろうな…」
「崩壊……つまり……」
(ワタシの転生ライフ終了じゃん!)
「だったら……だったらワタシが何とかするわ!」




