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彼女は目が見えないんだ。


目が見える、これは生物にとってはごく当たり前のことだ。


生物が外部から得る情報は8割が目かららしいな。


五感の一部であり、生きる上で大事なもの。


『見て』楽しむ。『見て』学ぶ。


普通の奴ならそんな気にしたことはないんだろうな。



『目が見えない』日常を歩んできた奴の心境はよ。







「…ここが、新しい街か。俺の住んでたところは全然ちげぇや。本当に都会だな……どんな出会いが待ってるかな!」


まずは探索だな!


そうして俺は新世界を謳歌することにした。



「ここが繁華街か……」


建物でかすぎだろ!!俺みたいに首長くなけりゃ首痛めちまうぞ!?都会は暇しないとは聞いていたが、こりゃたしかに暇しないな……


ゲーセンに、カラオケに、ショッピング……遊びの楽園かよ!!!




          ガツッ




「いたっ」


「いてっ」


「わ、悪い!周りに不注意だったな……」


「大丈夫大丈夫、尻餅ついただけだから。よいせっ」


俺とぶつかった少女は軽々と姿勢を立て直す。


「それにしても、この辺りじゃ見ない種族だね」


「そうなのか?」


「うん、それに地図持って歩いてるってことはここらの出身じゃないでしょ。引っ越してきたか観光しにきたかのどちらかだね。まぁ、ここに観光名所と呼べるところはないから引っ越してきたんでしょ?」


「いやまあそうなんだけどさ……そうだ、それならなんか面白い場所とかあるか?」


「貴方話聞いてた?」


「別に都会なんだから穴場くらいあるだろ」


「その地図見てればわかるよ。それじゃあ私は用事があるからこれで」


「そうか。ぶつかって悪かったな」


「初回サービスで許してあげる」


「次会うかなんてわからないのに…」


「まぁまぁ、細かいことは良いじゃない。じゃあね!」


そうして少女は去っていく。


……俺も、そろそろ新居に行こうかな。






「ふぃー、この部屋の荷物はこんなものか」


にしても……一人でやるの辛すぎだろ。まだ一部屋しか終わってねぇし………そういえば、転校先はアルカディアとディマドリードが居たよな。少し手伝ってもらうか………




「………もしもし?」


「お、出てくれたか。ディマドリード、今暇か?」


「まぁ、それなりに」


「ちょっと部屋の片付け手伝ってくんね?」


「いいですよ」


「おう、助かるわ!」


「終わったら何か奢ってくださいね」


「見返りか……手伝ってもらう身だしいいだろう」


「そういえば、明日が入学する日でしたね」


「まぁ転校だが」


「そうだ、貴方の弟さんも呼びましょう」


「ああ、助かるよ。それじゃあ頼むぜ」


「ええ」


…これで大丈夫…だが、アルカディアも連れてくるってことはあいつも見返りを求めてくるってわけだからな……二人分のアイスでも買っておくか。


「明日から、あいつらと同じ学校か………」






アルカディアとディマドリードがやってきて、荷物の整理を手伝ってくれた。


「はぁ、引っ越し屋みたいな力仕事したわ……」


「良かったですね、私が女性じゃなくて」


「マジで筋肉痛だわ………それに比べてアルカディアは何もしてくれなかったじゃないか!」


「レイアウトは考えてあげたじゃないか、脳筋兄さんのためにね」


「その日のうちに終わったんだから良いじゃないですか」


「学校の案内してあげるからそうカリカリすんなよ」


「幸先が悪い……」





翌日のこと。


「ええ、みなさんにお知らせがあります。今日からこの学校に転校生が来ます。エルドラド君、入ってください」


「はーい……おぶっ」


俺は教室の入り口で頭をぶつける。


「俺の身長デカすぎて草。ええと、俺の名前はエルドラドだ。見ての通り龍だ。あんまビビらずに居てくれると助かる」


「それじゃあエルドラド君の席は……あそこね」


先生に指示されたところの席に座る。


「…ん」


隣の席の子、ただ座っているだけなのに他の奴らと雰囲気が違うな……



「デュクシ」



「いってぇ!?おい、お前………って!?」


あの時ぶつかった子!?


「まさか、貴方が転校生だったなんてね」


「お前こそ、ここの生徒だったんだな」


「そうだよ。転校生が来るとは聞いていたけど、まさか貴方とはね。どういう風の吹き回しなんだろうね」


「驚いたぜ、まさか本当にまた会うことになるとは」


「ま、時間がある時にまた話そうよ」


「そうだな」






「わ〜…マジで何もわかんねぇ。板書しただけだったわ……」


……正直、そんなことはどうでもいいのだ。隣が凄い気になる!!ただ座って授業を聞いているだけなのに!!凄い気になる!!表情も全然変えない!!


……見た感じ、凄い可愛い子なんだけど……これならクラスの人気者でもおかしくないよな……?


…声、かけてみるか。


「……なぁ」


「…………」


「……え、無視?」


聞こえなかったのか?


「おーい」


「何してるの貴方」


「ぐわああああ、いきなり後ろから声をかけるなああああ」


「挙動不審な変態が居たから」


「変態……」


「っと、まだ自己紹介してなかったね。私は黄泉 寂滅」


「おう寂滅、少し聞いていいか?」


「いいよー」


「隣の子、どうして何もしてないんだ?授業中も、ずっと同じ姿勢で話聞いてるだけでよ……何も反応してくれねぇし……」


「ああ、幻のこと」


「幻?」


「あの子は黄泉 幻。私の妹だよ、三つ子なんだ」


「寂滅の妹だったのか」


「姉さんはもう一つ上のクラスなんだけどね」


寂滅はしばらく間を置くと、少し困り顔で……



「幻はさ、目が見えないんだよ」



「……!? 目が………?」


「うん、しかもちょっとワケアリでね………あまり触れないであげて」


「あ……ああ……」


ワケアリ……昔に何かあったってことだよな……学校…楽しめてるのかな……





「……ってことがあったんだ」


俺は休み時間に二人にあのことを話していた。


「なるほど、彼女の隣の席になったんですか」


「兄さんのことだから見過ごせないんでしょ?」


「高校生活は一度きりなんだぜ? 盛り上がらないともったいないだろ」


「はっ、兄さんのお人好しが。ま、時間をかけていくしかないだろうね」


「そうですね、あんなことがあったんですし………人間不信も仕方ありません」


「お前ら、幻のこと知ってるのか」


「当たり前ですよ、ずっとあの学校に居るんですから」


「それはそれは大きな事件だったよ」


「…なるほどな」


「まぁ、いつか彼女の方から話してくれると思うよ」


「まずは気軽に話せるようにならないとな」


「頑張ってください、応援してますよ」





俺は幻と仲良くなるために色んなことを試した。たまにそっぽ向かれることもあったが、時には若干笑っているように見えた。


…少しずつ打ち解けてる、そう感じた。






「それで、成果は?」


「なかなかだとは思う」


「ははは、幻さんが兄さんに心を開く時が近いってことかな?」


「二人が相談に乗ってくれたからだな」


「まぁ僕も幻さんのことは気になっていたしね。それで、まだ会話はできてないんだっけ?」


「俺の言葉に返事をしてくれたことはまだない、でも頷いてはくれるんだぜ」


「めっちゃ進歩してるじゃん!!!」


「お前たちのおかげだな。時間の問題だな、これは」


「そうかもしれないね」





「………あれは、エルドラドとアルカディアか。確か兄弟なんだっけ?まぁそんなことはいいか。幻、貴方はどう思う?あの金色のドラゴン……」


「………」


「もし、貴方が彼を信じられるというのであれば………話してあげても良いんじゃないかな?」


「………」


「まぁ、最後に決めるのは貴方なんだけどさ」


「何を話しているんだ、愛しの妹達」


「姉さんか、わざわざ上の階から来たんだね」


「妹が居るところに姉ありってやつだよ」


「今あそこでご飯食べてるドラゴンについて幻と話してたところなんだ」


「ああ……転校生のエルドラドか。たまに見かけるくらいだが、あの龍よく幻に構ってるよな」


「放っておけない性格なんじゃないかな。姉さんはどう思う?彼のこと」


「………………………まぁ、彼のような人なら幻に危害は加えないんだろうけど、転校してきて日も浅いからな」


「でも、幻はしつこいとは思ってないみたいなんだよ。そうなんだよね?」


「……(首を縦に振る)」


「そうなのか。幻が………」


「私はエルドラドさん面白いと思いますよ」


「神居か」


「音廻も居るよ〜」


「あはは、昔懐かしの精鋭が揃ったね」


「あの時行動を起こしたのは私だがな」


「姉さんはやりすぎなんだよ」


「ふん、妹に危害を加える輩は滅ぶべき。私はその信条に従ったまでさ」


「ま、無事解決して良かったじゃん。幻さんも不登校じゃなくなったしー」


「その辺りは神居さんと音廻ちゃんがなんとかしてくれたよね。……っと、あまり本人の前で話す話題でもないか。ごめんね幻」


「………………」


「さて幻、ここからは貴方の判断になるわけなんだけど………あのドラゴンは貴方と積極的に話したがっている。受け入れるかは貴方次第なんだ。話したいならそうしてもよし、まだ怖いなら私達から言っておくよ。別に今ってわけでもないなら期限があるわけでもない、じっくり考えるんだよ」




「……私は」





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