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ソロモン 7

 第3艦隊参謀長の加来少将は、ミッドウェーで「飛龍」を守った輪形陣を艦隊全体に拡げた。

 空母の脆弱な防御力を補強するためだ。


 小沢司令長官が座乗する第3艦隊旗艦「霧島」と戦艦「比叡」は、駆逐艦「浦風」、「磯風」、「谷風」、「浜風」、「野分」、「舞風」の6隻とともに、空母「瑞鶴」、「瑞鳳」を守る。


 山口少将が率いる第1航空戦隊旗艦「翔鶴」を中心に円を描くのは、重巡「利根」、「筑摩」と駆逐艦「秋雲」、「夕雲」、「巻雲」、「風雲」、「嵐」、「萩風」だ。


 さらに、角田中将が司令官を務める第2航空戦隊旗艦「隼鷹」と空母「龍驤」を、重巡「熊野」、「鈴谷」、軽巡「長良」、駆逐艦「初風」、「雪風」、「天津風」、「時津風」が囲んでいた。


 このうち、対空レーダーを搭載しているのは、戦艦「霧島」と、空母「翔鶴」、「隼鷹」の3隻だから、輪形陣ごとに1隻を配したことになる。


 戦艦「霧島」の艦橋に声が響いた。

「敵機多数、距離130キロ」


 誰かが小さな声で呟いた。

「日本海軍のレーダーが、実戦で探知した初めての敵機だな」


 加来参謀長が命じた。

「直ちに直衛機を上げて迎撃せよ」


 空母「瑞鳳」から、大隅大尉率いる9機の零戦が発進した。


 高度4600メートルで水平飛行に入り、高度2700メートルを飛ぶアメリカ軍の第1次攻撃隊を発見する。


 F4Fが8機、その下に3機のSBDドーントレス艦上爆撃機、さらにその後ろに9機のTBDデバステーター艦上雷撃機が続いていた。


 大隅大尉は、ゆっくりと方向を転換して太陽を背にすると、後方上空から襲いかかった。

 瞬く間にTBDデバステーターを3機撃墜する。


 直掩するF4Fが慌てたのか、編隊を崩した。

 これ幸いと、隙を突いて3機を撃ち落とす。

 ここまでは一方的な展開だった。


 だが気負いすぎたのか、大隅隊は弾丸を早々に撃ち尽くしてしまう。

 零戦の20ミリ機銃の1丁当たりの携行弾数は60発、アメリカ軍のF4Fの12.7ミリ 450発はもちろん、同じエンジンを搭載する陸軍の「隼」の12.7ミリ270発に比べても大きく見劣りする。


 3機の艦爆、6機の雷撃機が無傷で残っているのに、攻撃するふりをして牽制することしかできない。

 母艦に増援を要請したくても、機上無線電話は雑音ばかりの役立たたずときている。


 F4Fが、こちらの弾切れに気が付いたのか逆襲に転じ、零戦が2機撃墜された。


 時を同じくして、米軍の第2波が日本艦隊上空に達する。

 F4F4機とSBDドーントレス15機だ。


 別動隊の零戦14機が迎え撃ち、2機のF4Fと3機のSBDドーントレスを撃墜したが、零戦も3機が落とされ、艦爆12機の侵入を許してしまう。


 空母「翔鶴」の防空指揮所は、艦橋屋上にあった。

 露天ながら装甲された鉄の壁に守られ、計器や伝声管がびっしりと並ぶ。

 艦長の丸岡大佐は、そこに仁王立ちして空を睨んでいた。


 突然、防空見張員が叫んだ。

「右舷後方、敵爆撃機!」


 振り向いてそれを確認した丸岡艦長は、伝声管に大声を張り上げた。

「航海長!取舵!」

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