表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/97

ソロモン 4

 第2航空隊の高田大尉めがけて、アメリカ軍の艦艇からいく筋もの光が伸びてきた。


 高射砲弾が炸裂し、機体が揺れる。

 輸送船団の彼方に、空母が見えた。


「突撃準備隊形作れ」

 高田大尉が命じ、小隊3機ごとの単縦陣となった。


「突撃せよ」

 艦爆隊は小隊も解散し、全機が単縦陣となって緩降下に入った。


 高度6000メートル。

 左からF4Fが現れた。


 曳光弾が危うく頭上をかすめ、必死に機首を下げて回避する。


 すぐに次の敵機が覆いかぶさってきた。

 銃口から流れる硝煙が見えるほど近い。


 なんとか逃れて体勢を立て直し、高度4000メートルから急降下に入る。

 高度計の針が最初はゆっくりと回り、やがて速度を増す。


「高度3500」

「2000」

「1000」


 南洋の湿気を含んだ熱気が流れ込んでくる。

 弾幕を突っ切るたびに、硝煙の匂いが鼻をつく。

 護衛艦艇の放つ曳光弾が、無数の光の帯となって機体を包み込む。


「700、用意」

「500」

「400、テーッ!起こせ!」


 最初の爆弾は、空母「エンタープライズ」の中央エレベーターを直撃、エレベーター底部を突き抜けて、ボイラー室を破壊した。


 2弾目は、後部エレベーターに命中、喫水線下で炸裂して破孔を作り、3弾目は右舷後部の対空砲台の兵員を吹き飛ばし、付近を火の海にする。


 高田機に、敵艦からの砲火が集中した。

 高度を一気に5メートルの超低空まで下げる。

 プロペラの風圧で海面が波立つ。


 高田大尉が振り向くと、空母から黒煙は上がっているが、こちらの後続機の姿は、どこにも見えない。


 編隊は、バラバラになってしまったようだ。

 艦砲射撃の閃光が走り、30メートルを超す水柱が行く手を阻む。


 砲弾が炸裂し、周囲に撒き散らされた破片が滝のように降り注ぐ。

 黒い煙雲が空を覆い、火箭が無数の十文字を描く。


 ようやく艦砲の射程距離を抜けたと思うと、今度はF4Fが待ち構えていた。


「敵戦、右、距離2000!」


「1000!」


 F4Fは主翼をわずかに揺らしている。

 まだ照準は合っていない。


 後席の92式7.7ミリ旋回機銃が、射撃を開始する。


「800」

「600」


 F4Fの揺らぎが止まった。

「右!」


 フットバーを一気に踏み込み、操縦桿を倒して機体を滑らせた。

 F4Fの曳光弾が、翼のすぐ脇を抜けて海面を叩く。


 敵機が切り返すのに合わせて、後方席から空の弾倉を交換する音がした。

 今度は左から迫り、距離を詰めてくる。


 ガンガンと音を立てて、機体に銃弾が命中する。

 左翼燃料タンクから、炎がほとばしる。


「70」

「50」


 突然、F4Fのエンジンが煙を吹いたかと思うと、急激に機首を上げて失速し、横倒しになって海面に激突した。


 7.7ミリの豆鉄砲が奇跡的に急所を射抜いたのか、偶然のエンジントラブルなのか、撃っていた本人にもわからなかったが、とりあえず絶体絶命の危機は脱したらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ