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東京 5

 連合艦隊司令長官の米内大将、宇垣参謀長、竹内首席参謀、第3艦隊の小沢司令長官、加来参謀長が顔を揃えた。


 まず竹内首席参謀が、口火を切った。


「7月2日に37隻、3日に45隻、合計82隻の大輸送船団が、アメリカの西海岸を出港し、フィージー、サモア方面に向かっています。わが軍がミッドウェー島上陸作戦に用意した輸送船は18隻ですから、その5倍近い数です。


米国の保有する貨物船の数は一見膨大ですが、実は旧式の沿岸航行船が大半で、外洋航行に適した船はそれほど多くはありません。これだけの数を集めたとなれば、何か思い切った作戦を計画していると見るべきでしょう。


エスピリトゥサント島に長距離爆撃機用の飛行場を建設しているという報告も踏まえると、連合国の反攻が、ツラギ島を皮切りに、ソロモン諸島伝いにラバウルへ東から迫る可能性が無視できなくなりました。


これまでは、オーストラリアからニューギニアを経てラバウルへ北上するルートを想定し、防衛線の構築を進めてきましたが、再検討する必要があります。


ツラギ島はラバウルから1000キロ離れており、その間に陸上機の基地はありません。97式艦上攻撃機や99式艦上爆撃機は片道しか飛べず、往復できるのは陸上攻撃機だけです。


直掩の零戦はなんとか行けるとはいえ、空戦可能時間はわずか15分、万一陥落すると面倒なことになりかねません」


 小沢中将が言った。

「ミッドウェー帰りの山口多聞が、第3艦隊の出撃を声高に主張しています。貴重な外洋貨物船の大船団が、日本軍の攻撃圏内を航行するとなれば、空母が護衛についてこないはずはないと言うのです。ミッドウェーの敵討ちをする、絶好のチャンスだと」


 米内大将が苦笑いしながら応えた。

「相変わらず、猪突猛進だな。だが、航空隊を揃えられるのか?」


 加来参謀長が答えた。

「ミッドウェー作戦に参加した母艦航空隊のパイロットは283名、そのうち224名が生還しています。最後まで戦った飛龍こそ、多数の戦死者を出しましたが、赤城、加賀、蒼龍の百戦錬磨のベテランパイロットの多くは健在です。もう一仕事してもらいましょう」


 米内大将が尋ねた。

「空母はどうか?」


 加来参謀長が答えた。

「飛龍は無理ですが、翔鶴は修理も終わり、出撃可能です。隼鷹のレーダー搭載工事も、突貫作業で終わらせました。瑞鶴、瑞鳳はメンテナンスのためのドック入りをキャンセルしましたし、龍驤はいつでも出撃できます」


「また待ち伏せを食って、ミッドウェーの二の舞を演じることはないか?」


「前回の敗因は3点、すなわち、

偵察機の数が少ない上に、低速の水上機に頼ったこと、

直掩する戦闘機が払底し、反撃の機を逸したこと、

対空レーダーが無く、来襲する敵機の発見が遅れたことです。


今回、偵察には2式艦上偵察機と艦爆を投入することとし、戦闘機も大幅に増強しました。

さらに、戦艦の霧島、空母の翔鶴、隼鷹に、対空レーダーを搭載しております。

同じ間違いを繰り返すことはありません」


 米内大将が小沢中将に言った。

「何としても、戦争を年内に終わらせるんだ。第3艦隊を擂り潰しても構わない。もし来年末まで戦争が長引き、アメリカの新鋭空母や戦艦が続々と竣工したら、もはや講和の余地はない。肉を切らせて骨を断つつもりでやってくれ」


 小沢中将は微笑んで答えた。

「望むところです。海軍きっての猪武者を、2人も司令官に据えたのは、そのためですから」

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