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少年と執事  作者: マン太


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19/33

18.帰宅

「シーン、これで最後だね?」


 ハイトが木箱を馬車の後ろに乗せて振り返る。シーンは仲間に挨拶を済ませた後、御者に出るように頼んだ。それからハイトを振り返り。


「ああ。さあ、行こう」


「うん!」


 一緒に乗り込み、馬車は出発した。

 街までは三キロ程度、三十分もあれば到着する。一週間ぶりの帰途にハイトは高揚した様子で。道中に広がる田園風景を眺めながらこちらを振り返る。


「エルミナもお祖父ちゃんもきっと驚くよ」


 昨日、電話で管理人を通して祖父ラルスへ連絡を入れてあった。午前中には──そう伝えてあったからきっと首を長くして待っているはずと、ハイトは嬉しそうに言う。


「これだけの荷物だ。それは驚くだろうな?」


「お祖父ちゃんへの服も用意してくれて…。シーン、本当にありがとう。俺、これからも頑張るよ」


「そうだ。ハイトは笑っているのが一番だ」


 言いながら、そうなのだと一人ごちる。

 ハイトが幸せであるなら、ヴァイスとのことなど、大したことではないのだと。

 大切な人が笑っていてくれるなら、自分の犠牲などどうでも良かった。


 こうしてこれからも、ハイトが笑顔でいられるなら。


 自分の思いが何処にあるにしろ、本当の理由はハイトには黙っておくつもりだった。言えばハイトは仕事を辞めると言い出しかねないだろう。

 ヴァイスとの関係はあくまで自分で決めたこと。自身とお屋敷の将来を思って受け入れたことなのだと思わせて置くべきだ。

 ヴァイスとそうなれば、いずれ知られる。

 ヴァイスと関係をもつ自分を見て、幻滅するに違いない。そうなれば、おのずとハイトも離れていくだろう。それ以上、理由を追求してくることはない。

 それでも、決意は揺らがなかった。


 ハイトの幸せの為に──。


 いつまでこうして傍らで笑っていてくれるのだろう。

 揺れる馬車の座席に座り、ただ笑みを浮かべ、はしゃぐハイトを見つめていた。

 馬車は程なくして街へ入り、指定した細い路地の前で止まる。


「すまないが、荷物を下ろすまで待っていてくれるか?」


 御者にそう声をかければ、


「勿論。…その、良ければお手伝いしますか?」


 意外な申し出におや? と、思ったが。


「そうしてくれると助かる──。荷物は玄関先においてくれればいい」


「わかりました」


 中年を半ば過ぎた人のいい御者は、手綱を一緒に乗せてきた見習いの少年に任せ、自身はシーンの指示の元、大きな木箱を抱えハイトの後に続く。大人が二人いれば、一往復で済みそうだった。


「ありがとう。すまなかったな」


 無事に運び終え、部屋の入口で手間賃も余分に払うと御者は畏まって、


「有難うございます。またごひいきに。…事に、旦那様はお屋敷で働いていらっしゃるんで?」


「そうだが?」


「いや、その、そんな立派な方がこんな下町に住むものに優しく隔てなく接しているものですから驚いて。いや、珍しいこともあるものですな」


「そうだろうか。いや、そうなのだろうな…。私は彼の友人でもある。隔てなく接するのは当たり前だな」


「あ、いや、そうですな! 気を悪くせんで下さい。私らみたいなもんにそうやって接していただけるのは本当に珍しくて…。いや、余計な事でした! それでは」


 そう言って、御者は腰を引くしてその場を後にした。シーンは軽くため息をつくと。


 珍しい──だろうな。


 ここの管理人も、シーンが訪れる度、物珍しそうに見ていた。友人だなんだと言っても、信じられないのが本音だろう。それが普通なのだ。


「シーン?」


 いつまでも玄関口に立っていた為、ハイトがどうしたのかと、声をかけてきた。


「ああ、今行く」


 シーンはキッチンにいるハイトの元へと向かった。

 キッチンのテーブルには祖父ラルスがいて、シーンが姿を見せると立ち上がって出迎えてくれた。

 

「いや、驚きました。ありがとうございます…」


 ラルスはお土産の品々に恐縮しっぱなしだった。


「私はお下がりばかりで…。これもハイトがしっかり仕事をこなしたからです。皆のお礼の気持ちだと思って受け取っていただければ──」


「有難うございます。エルミナ、ほら礼をいいなさい」


 エルミナ用のワンピースを見せられ、すっかり虜になっていた彼女はそこで漸く顔を上げた。高揚した顔はハイトそっくりだ。


「ありがとう! シーン、とっても可愛いお洋服…」


「それは家政婦長が是非にと、姪御さんのお下がりなんだが、まだまだ着れると持ってきてくれたんだ。着てみてごらん?」


「うん! まっててね、シーン!」


 エルミナは薄いピンク色のそれを抱きかかえ、奥の部屋へかけていく。そんな様子にハイトは笑うと。


「エルミナはすっかりシーンが好きみたいだ。俺なんかちっとも振り向いてくれないや」


 パイ生地の支度をはじめながら、肩をすくめてみせる。それに気付き、シーンも手伝うためにキッチンへ立った。


「私も手伝おう」


「いいよ。これは俺からのお礼。って、言っても全然たりないけど…。お茶でも飲んでそこで休んでいてよ」


 ハイトは譲らない。


「わかった──。そうしょう」


 仕方なく、キッチンテーブルでお茶を飲むラルスの向かいへと座る。それまで手の中のカップの紅茶をじっと見つめていたラルスだったが、ふと顔を上げ。


「まだ一週間だが、ハイトは上手くやっているのかね?」


「はい。それはもう、厩番のキエトも気に入って酒瓶をよこすくらいですから」


 先ほど荷ほどきした際に、ラルスにと渡されたワインがテーブルに置かれていた。ラルスは笑みを浮かべると。


「良かった…。あの子にもエルミナにも、せめて幸せになって欲しくてな」


「ハイトはきっと幸せになります。今まででずっと、辛い思いをしてきたのですから」


「そうか…。お屋敷での噂はわしの耳にも入ってくる。跡継ぎの息子の噂もな。あまりいいうわさは聞かないから心配していたんだ。シーンがそう言ってくれれば安心だ」


「…大丈夫です。私の目の届く限り、ハイトに害が及ぶ様な事はありません。これからも、安心して下さい」


 しっかりとラルスの目を見てそう答えた。


+++


 暫くすると、ばたばたと駆けてくる足音がしてエルミナが姿を見せる。


「シーン、見て!」


 裾にレースの施された薄ピンクのワンピースを身にまとったエルミナは誇らしげにシーンの前まで来ると、くるりと一回転してみせた。急にお転婆になった妹に、ハイトが慌てだす。


「エルミナ! あまり走っちゃだめだよ!」


「大丈夫! ほら、綺麗でしょ?」


 頬を高揚させるエルミナだったが、やはり急すぎたのか、めまいがしたようでそこでよろめく。シーンは、すぐにその細い腰を抱きとめ、エルミナと向き合うと。


「ああ、とても綺麗だ。でも少しお転婆が過ぎた様だね? 綺麗なドレスにはお淑やかなのが似合っている──。ほら、そこへ座って。私からもプレゼントがあるんだ」


「なになに?」


「シーン?」


 椅子に座ると興味津々になって見上げてくるエルミナ。キッチンに立つハイトは訝し気だ。

 シーンは持ってきたカバンを開けると、そこから一冊、本を取り出した。子供向けの児童書だ。それなりの厚さはある。


「エルミナのような女の子が頑張るお話だ。きっと気に入るよ。大事に読むんだよ?」


「わぁ、素敵! 私でも読める?」


「もちろん」


 事前にハイトに読み書きは出来るかと尋ねてあった。スラスラとは行かないが、分かりやすい単語なら理解できる。母親がよく読み聞かせをしていた為だとハイトは言った。

 ハイトは済まなそうにしながらも。


「シーン、ありがとう。エルミナ、お礼を」


「うん! 私ご本大好き! シーンも大好き! ねぇ、大きくなったらお嫁さんにして! ね?」


 シーンの腕に無邪気に抱き着き、顔を覗き込んでくる。大きな瞳に覗き込まれ、一瞬言葉に迷った。すると見かねたハイトが。


「エルミナ、困らせちゃだめだよ。本も洋服も大事にしまっておいで。どっちも汚したら大変だ。ね?」


「やだ! シーンがうんて言うまで離れない!」


 ぎゅっと更に抱き着いてくる様は、ヴァイスに比べれば可愛いものだった。シーンはそっとエルミナの身体を離すと、片膝をついて向き合い。


「エルミナはとてもかわいらしい。きっと大きくなれば皆がエルミナを好きになるだろう。私もそのうちの一人になるかもしれない。けれど、先の事は分からない。ただ、今のイルミナもとてもかわいいと思うよ。私も大好きだ」


「ほんと! 私も大好き!」


 シーンは直接には答えなかったが、それでもエルミナは『大好き』という言葉に満足した様で、もう一度ぎゅっとその首元に抱きついた。

 その後、エルミナは本を大事そうに抱え、今度は衣装を片付けるため、ラルスとともに部屋に戻って行った。

 ハイトはそれを見送ったあと、ため息交じりに。


「シーン、ごめんね。エルミナはまだ子どもだから」


「いいんだ。本当にかわいいと思うよ。妹がいればあんな感じなのだろうな」


「うん…。きっと、エルミナは綺麗になる。さっきのは冗談だけど…。でも、エルミナもあと十年もすれば立派な女性になる。その時、シーンが一人だったら、まだ付き合いがあったなら──」


「どうだろう」


 ハイトが言い終わる前に、言葉をかぶせた。其のあとに続く言葉を予測できたからだ。


「私は自分の気持ちには正直でありたいと常々思っているんだ。冗談でも、将来を約束など出来ないな。真面目だと笑われるが…」


 ハイトは自分とエルミナが結ばれればいいとそう思っているのだろう。

 自分を気に入ってくれているのなら、それも当たり前の考えだ。身内になればずっと側にいられる。けれど、それは自分が望む姿ではないと分かっている。

 ハイトの側にいるだけならそれでもいいのだろう。けれど、自分の思いはそれだけでは収まらない。エルミナの無邪気な思いに応えながら、そう確信した。


 やはり私は──。


「ごめん…、気を悪くさせるつもりはなかったんだ。ただ、シーンとはこれからも仲良く付き合っていきたいから…」


「すまない。不安にさせてしまったな? 違うんだ。これは私の中の問題で…。すまない、やはり座っているのは性に合わないな。せめて助手として手伝わせてくれないか?」


 するとハイトはぷっと噴き出して。


「シーンが俺の助手って、おかしいの。でも、じゃあお願いする。まずはそこのふるいをとって」


「ああ。これか」


 棚から出してあったふるいを手に取ると、計り終えた粉を持ってハイトが傍らに立った。


「こっちのボウルにふるって入れてくれる? 終わったらバターと牛乳を計って置いておいて。其のあと、その牛乳を人肌程度に温めて、ふるった粉をそこへ少しづつ入れて欲しいんだ」


「了解。…色々やることはありそうだな?」


「もちろん。こき使うから、よろしく。シーン。こんな機会は滅多にないもの。俺がシーンに指示をだす! なんてさ」


 笑い出すハイトにシーンもつられて笑う。


「分からないさ。もしかしたら、立場だって逆転するかもしれない」


「あはは。そうしたら、とんでもなくおっちょこちょいな従者が出来上がるよ。いつもオスカーさんに怒鳴られっぱなしだ」


「そんなことはない。きっと愛らしい従者が出来上がる──」


 と、そこでハイトが不意に顔を上げた。

 視線がまともにぶつかって、珍しく動揺する自分がいた。近い距離に昨晩を思い出したからかも知れない。


「…俺を可愛いなんて、そんなこと、ないや」


 すぐに下を向いてしまったが、その頬が赤く染まっている。

 なぜだろう、愛おしいと言う気持ちが収まらない。近い距離に立つハイトに胸の鼓動が聞こえそうで困った。


「いいや…。ハイトは可愛いよ。これは君を下に見ているからじゃない。ただ、そう、思えるんだ…」


 理由は──言えない。


 言えばハイトを困らせるし、もうこんな風に話してくれなくもなるだろう。


「ううん。シーンに、そう言われるの、嫌じゃないよ…」


「そうか?」


「…うん」


 恥ずかしそうにでも、嬉しそうな笑みがそこに浮かんでいた。


+++


 その後も作業は順調に進み、あとはオーブンに入れて焼くだけとなった。

 薪を焚くと一気に火が回る。火加減に注意しながらハイトは熱心に窯を見つめていた。

 袖をまくった腕には赤いルバーブのジャムが少しばかり張り付いている。他にも小麦粉や使ったカスタードが頬に飛んでいた。

 久しぶりに焼くから心配だと言っていたのが、その表情からもうかがえる。どうしても失敗はしたくないのだろう。

 その賢明さがまた可愛いのだが、それは口にしなかった。


「そろそろ良さそうだな?」


「うん、もういいみたい」


 オーブン用のミトンで取っ手に手をかけ真剣なまなざしで中を見る。パイはすっかり綺麗なキツネ色に焼けていた。


「うん! 成功」


「私が取り出そう。重いだろう?」


「これくらい大丈夫──」


 中の鉄板に手をかけた所で、扉からの熱風にハイトが驚いた。

 その拍子に鉄板が滑り落ちそうになるが、それをすんでの所でシーンが手近なタオルで押さえ落とすのを免れる。


「間一髪だな?」


 ふうと息をもらし熱い鉄板をパイごと調理台に置くと、ハイトがややしょげた様子で。


「…ありがとう。素直に頼んでおけば良かった…。パイを台無しにするところだった…」


「でも、落とさなかった。二人で協力すればなんとかなる、そう言うことだ」


「うん…!」


 ぱっと表情が明るくなる。素直な反応に思わず笑みがこぼれた。


 焼き上がったパイはそのまま昼食用となる。ラルスもエルミナもテーブルを囲み、賑やかな昼食となった。


「ん、おいし」


「生地も良く焼けている。流石だな?」


 ハイトは満足気だ。シーンもその腕前に感心する。

 生地はパリッと焼けていて、底までしっかりと火が通っていた。

 フィリングのカスタードクリームとルバーブのジャムの塩梅が丁度よく、甘すぎず、ジャムの酸味と良くあった。

 母親仕込みのパイは確かに美味しく。それを懸命に作っていたハイトの姿が後押しした。

 エルミナは小さめに切ったひと切れを、無言になって食べている。そんな様子を微笑ましく見ていたラルスは。


「シーンが来てくれて、良かった。とても家の中が明るくなったよ」


「大した事は何も。私がハイトと話したくて押しかけた様なものですから」


 手を休めて答えれば、横からハイトが。


「シーンの押しかけなら大歓迎だよ。もっと押しかけてくれていいよ」


「そうなのか? なら、遠慮せず来よう」


「ぜひ、そうしてよ。お屋敷にいる間はのんびり話せる時間は夜くらいだし…。ここならうちの家族だけでシーンを独占できるもの」


「そうか」


 独占、そう言われて口元がほころぶ。そう思ってくれたことが素直に嬉しかった。


 その後、ラルスはまだ本調子ではないため、部屋で休むと言い、はしゃいでいたエルミナもうとうとし出した為、ハイトが部屋に連れて行った。

 リビングで新聞を広げていると、ハイトが戸口に立った気配に気づき顔を上げる。

 ハイトは部屋に入らずそこに立ってぼうっとしていた。


「どうした?」


「あ…ううん。その、いいなって思った…」


「なにを?」


 ハイトは少し弾むようにしてこちらに向かってくると、隣の椅子に座り。


「おじいちゃんやエルミナ以外の人がそこに座ってるのがさ。まるで、家族が増えたみたいで…」


 照れくさそうに笑うハイトに、同じく笑みを浮かべ。


「そう思ってくれていい。これからも家族同様に」


「もちろん! エルミナも喜ぶ。──俺も、嬉しい」


 控えめにそう付け足した。

 自分に対する思いは思慕なのだろうが、シーンにとってそれは嬉しい言葉だった。

 

+++


 食後の休憩後、ハイトと二人で足りない一週間分の食料や生活用品を買い込む。

 なるべくラルスに階段の上り下りの回数を減らすためにも必要な事だった。あれやこれを買い足すうちに山のような荷物となる。


「ありがとう、シーン、助かったよ。流石に一人じゃこの量、一度に済ませられないもの。良かったぁ」


 どさりと両手に抱えていた袋をキッチンのテーブルに置く。

 シーンも同じく抱えていた木箱をテーブルに置いた。山のような荷物でテーブルはいっぱいになる。


「いいや。これくらいしか出来ないからな? 生活用品は暫く買い足さなくてもいいだろう」


「だね。石鹸も、これだけあれば当分大丈夫」


 ハイトは安く買える店を良く知っていて、顔なじみの店も多かった。多く買えばその分安くもしてもらえる。買い物上手だった。

 ハイトは早速それらを手際よく定位置にしまっていく。


「嬉しそうだな?」


「うん! ものがこれだけ揃うとね。いつもぎりぎりで生活していたから…。棚がいっぱいになるなんて、なかったもの。これも安定した仕事を貰えたから。本当に、シーンのお陰だよ」


「何度も言うが、私は仕事のあっせんをしただけで、キエトに気に入られたのはハイトの実力だ。ハイトが自分で引き寄せたんだ」


「…ありがとう。シーン」


 困ったように少し照れてそう返す。

 もう、否定はしなくなった。シーンが事あるごとに謙遜しすぎるなと言ったのが功を奏したのか、必要以上に自分を否定していたハイトにはそれで丁度良かった。


「ね、シーン。今日はどうするの? このままお屋敷へ?」


「そうだな…」


 屋敷に帰るのが妥当だろう。

 ハイトと別れるのは惜しい気がしたが、明日になればハイトは帰ってくるのだ。


 すぐに会える──。


 それでも、名残惜しい気持ちは残ったが。


「その、ここへ泊まっていくのは?」


 その提案に驚いてハイトを見返す。


「…いいのか?」


「うん。シーンが良ければ。ただ、ベッドがひとつしかなくて…。母さんが使っていたのは古くて処分したから、寝るなら俺の使っているのしかないんだ。良ければ使って」


「ハイトは?」


「俺は別にどこでも寝られる。エルミナと一緒に寝ても…」


 前にラルスの部屋へ入った際、ちらと見えた隣室のエルミナのベッドは、サイズが小さかった記憶がある。


「私と一緒は? エルミナのベッドは子供用だろう? 私は気にしない。ハイトが嫌なら仕方ないが──」


「嫌とか、そんなんじゃないけど…」


「恥ずかしいか?」 


「だって、もう子どもじゃないし…。二人で寝るのは…」


「邪魔したのは私なのに、君にそんな思いはさせられない」


「じゃあ、一緒に…」


 最後はシーンの押しに照れくさそうにおずおずと頷いて見せた。


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