行方不明者
それから、森を彷徨ってもシャルペクは見つからなかった。
日が夕方の青に染まり始めた。
いずれは暗い夜に呑まれるだろう。
カチャカチャカチャ
数人の集団が手に灯りを持って現れる。
先頭の彼は憤懣やる方ないと、声を荒立てた。
「おい。旅の、哨戒はもう終わってるだろう。人数確認できないと帰れないんだよ」
「子供の、シャルペクが見つからない」
「はあ?餓鬼、シャルペクだあ。餓鬼どもは森に出てこれねえよ。しかも偏屈なオテクの息子だろう」
「いや、正確にはシャルペクと名乗っていたんですが」
先頭の男は頭を掻く。
「冷静だな。アンタ」
不愉快そうに鼻を鳴らすと
「神隠しか?分かった。確認しに人を出す。代わりに捜査範囲を狭めて、砦周辺から潰していく。それでいいな」
そして、実際に不在が確認された。
子供が消えた。それは狭い社会である事もあり、すぐに村に広まり村長が音頭を取って人手が動員された。
その夜、操作範囲は拡大されて魔獣避けの結界の間際までに迫ったらしい。
森の事だからいまいち把握できない事もあって上手くは把握できない。わかるのは危険性を考慮して大きな道の近くに限られた事だけだろう。
大事になった。
当然、捜索には参加したが一つ気になる言葉が聞こえた。
「三人目の子供が消えた」
どうも既に何人か見つからないというのだ。
ーーー
篝火が煌々とした広間
ざわざわと、騒がしくなってきた。
山の寒村であるここでは非常に珍しい。
村の中、奥は広間の様になった場所になっている。
入り口から奥までは入り組んでいて辿り着き辛い。
村長のグリンブルの家はそんな所にある家屋だ。
遠巻きにされながらついてこいと言われてやってきた。
何が理由かわからないけども
「村長、もう我慢ならねえ。何人か消えてんだ。魔物が来てるわけでもない」
「対策は、警備の一部の者に割り当てているはずですよ」
「見つけてねえんだ。無能だったに決まってる」
罵声と、言い返す声が大きくなる。
村長はそれを制すると
「それで、貴方がたの言い分は何でしたかな」
「よそもんだ。よそもんがやったに違いない」
それで漸く男はこちらを指を差した。
「それで彼と」
「そうだ」
ああ、そっか疑われたたんだ。
まあいいか。来た当初からこういうところ、はあったから
腹は立たない
不愉快で、威圧的なのが気になる程度だ。
気付いてみれば、まるで裁判のような形式だった。
傍聴人、というより野次馬に
被告は、僕として
彼等は、言い掛かり?当たり屋?
弁護が、村長。よかったのかな一番の権力者だ。
「しかし、報告を持ってきたのも彼ですね」
グリンブルは言外に、言う理由ありませんよねと告げている。
そりゃそうだ。申告すれば怪しまれる。
立ち位置が微妙ならば尚更である。大丈夫、大丈夫
「だけども、先に言って雲隠れしようって気かもしれねえ」
「そうであれば、やはり言わない方が良いでしょう。なにせ露見しますから」
男は激した。
「俺の息子だ。なまったるいこと言ってられるか!」
「オテク、そうですね。それなら…」
「殺すんだ。殺せばいい!」
「おとなしくしてろよ」
反射的に反応しようとすると、武器を背中に突きつけられる。長物だろう
酷いなちょっと動いただけなのに
そも走れば振り切れそうではある。でも普通はこのままだろうな。
ボンヤリする。なんて暇な
殺すべきだ。確かに言えません。牢屋に入れるべきだ。疑いだけで拘束するべきではありません。
喧々諤々、自分だけがほったらかしだ。
というかあの子供は大丈夫だろうか。
「では、こうしましょう。見張りをつけるんです」
話は続き、何も声を上げる事なく経過を見守った。