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櫓 2

「なあ、あんた」

木の上から声が聞こえる。

「村長さんが言ってたなんとかいう旅人なんだろ。ちょっと話そうぜ」

声をかけてきたのは半袖の服に短いズボンの如何にもと言わんばかりの腕白そうな少年だった。

 初めて見るな。

「頼まれてるから」

「そんなんどうでもいいだろう。どうせ持て余して適当に言ってるだけだぜ」

「それはサボる理由にならないです」

 深い森に一人で歩哨にたった所であまり意味はなさそうだが、実際問題、サボるに値する理由はないし

「ちぇ、けち。いいじゃんかよ村長様も自由にくつろげって言ってんだから」

がさり、と少年が木の上から降りてきた。

 ひょこりと、眼前に立つ。

 わんぱくそうな、どことなく見た事ある顔立ち。

目があった。普通は無視しないだろうと立ち止まる。

「あんた。外から来たんだろ。魔法って見たことあるか」

「ありますよ」

「どんなだった」

「どんな。といっても」

 どんなって、

まじまじと木の上の顔を見上げる。

小さな少年、年齢は若いことはわかる。状況的に村の子供だろう。

 種族は外見的にビト

村にも何人かいる。

 答えよう。とりあえず一般的に


普通は確か

「一般的には、肉体のある物質界に対して精神界からの干渉…」

「いや、そうじゃ無くてさ。見て、魔道具とどう違ったって」

 見て?


ああ、見せればいいのか。

 少しだけ身体を離す

「《魚群》」

 指で、宙に円を描くとひょこひょこと魚の形をとった水の塊が出てくる。

眼球の様な水膜と目があった。

…実は初めて使う。

だがこれでいいなら楽なものだ。

命令せずにいると、キョロキョロと回遊している。

「うわ。何これ」

 なるほど、同じ事を聞かれたら、何これって答えればいいのか。

ふよふよと、少年は動く魚を見続ける。

すると、恐る恐る魔法の魚に触れて、すごいだのなんだの言いながら追いかけまわし始めた。

あまり、危険性は無いだろうけど一応見ておこう。

 適当な大きさの岩を見つけて座る。結局サボってしまった。

危険がなさそうだと少年は魚モドキを追い回している。

暫くして少年が立ち止まった。

「なあ、これが使えれば人間とか簡単に殺せるんだろう」

 じいっと目を見つめる。

そういうわけでもないけど

「どうだろう。そういうふうに使った事がないし、普通はダメ」

「普通はダメって、人殺しなんて今時珍しくも無いぜ」


 どう返せばいいのやら、普通じゃなかったらいいけど、そりゃ子供にはダメですって教えるのが普通だし

「そういや、アンタなんていうの」

 返答に困っていると唐突に聞かれた。

なんて、名前…?

 前も聞かれたなあ



「ないんです」

少年は驚く

「え、ない?」

「覚えていないんです。何かしら呼ばれてた気はするんですが」

ああ、そうだと少年はニイっと笑う。

「いっそ村長様につけて貰えば?、あの人優しいしいい名前くれるぜきっと」

「村長さん。好かれてるんですね」

怪しげな旅人を鶴の一声で置けるくらいに

「そりゃそうさ。オレは小さかったからあんま知らないけど、あの人がいなきゃここの住民の大半は死んでたんだぜ」

「そうなの」

「そうさ。難民とか、戦場とかで拾われてきた奴らばっかだからな。おっさん連中からすると神様みたいなもんだ」

 神様、かあ

「君からするとどうなの」

「気のいい爺ちゃん」

なるほど

「名前は、まあいいか」

やんわりと断った。

「ふうん?まあいいや」

興味を失ったように呟くと

「オレはシャルペク」

ニカっと笑って言った。

 それから、手を出してきた。

握手だ。今度はわかる。


 ぐるる

掴む前に、獣の声が聞こえた。

 ビクッと反応してシャルペク共々振り返る。

黒い、イヌ科の動物だ。

 筋骨隆々とした獣というよりは番犬にも見える。

この手の獣はとりあえず?

 手を伸ばしてシャルペクを鷲掴みにすると、ヒョイと木の高い場所に捕まらせた。

「うわっ何すんだ」

「高い所なら襲われないんじゃない。ですかね?」

「自信ないんかよ。って足!」

掴むまで待ってやろう

 魔獣退治。と言ってもそもそも人間の棲みついている近くには基本的には見ない。

縄張りに入ったら殺そうとするだろうけど、村になっているんだったらそりゃ放置される。

 犬みたいな容貌をした魔獣だ。どうにかなるだろう


 あ、右足壊された。

ぐちゃりと動いて再生する。

 見かけは壊れているけど、普通普通

がしりと噛みつかれた足

 シャルペクが叫ぶ。

「そいつ、首輪がある」

 首輪?まあ後でいいや

噛みついてきた所に両手を捩じ込んで強引に開かせる。

 そのまま、どうしようか悩んだ。

…捻じ切る?

そもそも捻じ切れる?

「あ、」

 気の緩みにつけ込まれてひらりと逃げられる。

ぐるるる

 警戒されたのだろうか。

じっと、遠巻きに近寄ろうとしない。

 一歩出ると動かない。

もう一歩でも同じ

 三歩目で飛び掛かり、顔面?

両手をあげてガード、庇っただけだけど


 衝撃がない?


獣はひらりと身を翻して逃げていた。

森の奥に


 一応、追うべきだろうか?

とりあえず、見張り台の外に追い払えるまで 


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