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魔王によって彩る世界  作者: 伊草 推
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第4節 ~余暇~

 ゴブリンの村、周辺に到着した。尋問を受けた場所からはそう遠くなく、五分程度歩いたところだった。

「説明してくるから少し待ってろ。」

 そう言われ、立たされている場所のすぐ横はやはり岩壁。

 少し離れたところが洞窟のようになっていて、説明に行ったゴブリンはそこに入っていった。

 考えるに、人間たちの住む村のようなものではなく、部落や集落と言ったようなのだろうと思った。

 洞窟の前では、ゴブリンたちが木の棒を振り鍛錬でもしているように見える。

 出来る観察を全て終えると、ゴブリンが数匹出てきてこちらに向かってくる。やはり個体ごとに少し、体の大きさが違い呼びに行ったゴブリンよりも少し大きいゴブリンを連れてきた。

 しかも、そのゴブリンたちはしっかりと武装している。

「お前が俺らの言葉がわかるという中人か。」

 雰囲気が偉そうなゴブリンに問われた。

「そうです。あなたたちの言っている言葉はしっかりと理解できます。」

『中人』というのが何なのかはわからないが、違うと言えば殺されるかもしれない。それに緊張から頭が回らず、都合よくそう答えた。

「そうかそうか、確かに確認した。こんなこともあるものだな。食事も出そう。詳しいことは夕食のときにでも話そうじゃないか。」

 そういうと、偉そうなゴブリンは洞窟の方へと去っていった。

 一言二言の短い間だったが、あの偉そうなゴブリンに認められたことによって、ゴブリンたちの緊張も解けたように見える。

「こっちにこい。そして、あそこに座れ。」

 だが、囚人のような扱いは変わることなく、洞窟の入口近くで座らされ、夕食時まで待った。

 座っている間はやることは全くなかった。バッグの中身は既に整理済み。

 出来る手遊びもなく、暇を潰すためだけに周りの自然をただただ見渡すことしかできなかった。

 強いてできる暇つぶしと言えば、ゴブリンたちの日常生活を観察することぐらいだった。

 洞窟の前の空きスペースで鍛錬してるように見えたゴブリンたちは遊んでいるだけだった。いるのは身長一〇〇センチメートルにも満たない小さいゴブリンだけ。

 その中に、初遭遇したゴブリンたちが混ざりに行く。

 片方は俺の愛刀を持っている。

 短剣を持ったゴブリンは子供のゴブリンたちに対して、これ見よがしに剣を持っていることを自慢する。

 所持者の自分ですら使ったことがないのに、自慢の種に使われる。あの短剣を持ったゴブリンに嫉妬を覚えた。

 例えるなら消しゴムを友達に貸して結果、カバーが付いている部分の角が使われた。

 そんな悲しさや虚しさをふと思い出した。

 ごめんよ。愛刀・無名。

 名前がないばかりか、一番最初に使ってやるのが俺じゃなくて・・・

 でも、初めて切るのがご主人様という悲劇を避けることができたのは喜ぶべきことなのかもしれないな。

 そんな下らないことを考えても、中々時間は過ぎない。

 子供のゴブリンたちもチャンバラ遊びをに飽きて、次第に子供たちは遠くからこちらを指差し、何かを言っている。

 手招きをして話し相手になりたいが、そういうわけにもいかないだろう。

 そんなことをしたら下手をしなくても殺されてしまうかもしれない。

 ただ座っているのが今の仕事。

「まぁ殺されなかっただけましかぁ」

 周りの自然を堪能しながら、愛刀が傷つかないように願い夕食の時を待った。


 日も落ちる頃になると、大きな鍋を持ったゴブリンが森の中から出てきた。

 そのゴブリンも俺が洞窟の近くにいることに驚いた様子だったが、周りが平然としているところをみて、何もなかったかのように洞窟内に帰ってきたことを知らせた。

 知らせを聞いたと途端に洞窟前は騒がしくなった。石積みされた場所では火が起こされ、中からは切られた食材や調理道具のようなものも出てきて、本格的に夕食の準備が始まったことが実感させられる。

 森から帰ってきたゴブリンは水を汲んできたらしく、小さな鍋に水を移し、火をかけた。残りの水は洞窟の中に運ばれていった。

 料理が始まったもののお構いなしに遊んでいるゴブリンもいる。きっと、今遊んでいるゴブリンたちは子供のゴブリンなのだろう。

 他にも発見はあった。ゴブリンの中には、メスのゴブリンも料理をしており、その姿は新鮮そのもので、どこか得をした気持ちになった。

 ただ、周りの景色が慌ただしくなってもすぐに料理ができるはずもない。

 結局、暇であることは変わらず、ゴブリンの料理方法を見ながら時間を潰した。


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