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魔王によって彩る世界  作者: 伊草 推
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第20節 ~村長の決断~

 そして時間が経ち、日も落ちたころになると王国の討伐隊がやってきた。

「お疲れ様です。ここまで来てくださりありがとうございました。」

「いや、良いんです。これが私たちの仕事ですから。」

 討伐隊は七人。新進気鋭の若者といった感じで、その立ち振る舞いは如何にもな優秀さがあった。

「今日泊まれる宿はありますか。しっかり場所がわからない中で、夜に奇襲をかけては勝てるものも勝てないですからね。」

「それはもう、しっかりと用意させていただいております。さぁこちらへ。」

 そういって、私の邸宅に連れて行こうとするとジェインが道を塞ぎこう言い始める。

「リリアンお姉ちゃんがゴブリンに攫われちゃったんだ。ゴブリンはあっちの方向に行ったから助けてあげて。」

 ジェインは、秘密を暴露した。

「コラッ嘘つくんじゃありません。申し訳ありません。騎士様。」

 と横から母親が叱る。

「全く問題ない。それに少年。今言ったことは本当か?」

「本当だ。」

「いえ、そんなことはありません。最近子供たちの間で嘘を付く遊びが流行っているのです。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」

 必死に火消しをする。

 だが、騎士は一切の妥協を許さなかった。

「今は少年に聞いているのだ。あなたには聞いていない。」

 そういうと、母親は口を紡ぐ以外の選択はなかった。

「少年、リリアンお姉ちゃんがどうしたんだい?」

「皆嘘つきなんだ。リリアンお姉ちゃんのこと皆大好きなはずなのに約束とか言って嘘をついてるんだ。」

 ジェインは全てをバラした。

「約束。それは興味深い。少年のお母さん本当か?」

「えぇあぁそれはちょっと。」

「それでは村長。これは本当のことですか?事と次第によってはどうなるかわかっているでしょうね。」

 私は考えた。ここでバラスのと嘘を付くのと、どちらが得かを。

 私の身に何があっても構わない。

 だが、私がここで嘘を付けば、待っているのは村人への詰問。

 村人全員が嘘を付き通すなんていうのは不可能だろう。

「申し訳ありません。ジェイン・・・少年のいう通りです。」

「ほう、詳細を利かせてもらおう。」

 ゴブリンたち申し訳ない。そして、特に綺麗な白髪の青年。君には更に迷惑を掛けるかもしれない。でもどうか許してくれ。これもリリアンとこの村を守るためなんだ。

「今日の朝早く、この村に白髪の青年とゴブリンたち、そして数日前から行方不明だったリリアンという利発な少女が訪問してきたのです。」

「ほうそれで。」

「そして、リリアンが言うには「ゴブリンたちの生活は素晴らしく、まだまだ知りたいことがあるから私はこの村じゃなくてゴブリンたちと一緒に住みたい」などと訳の分からないことを言い始めたのです。」

「ふむ。」

「リリアンは、物静かないい子です。頭もよく王都の学校にもスカウトされるほどの天才でした。確かに、ゴブリンたちを理解して歩み寄る。そんな才能もあったかもしれません。何しろ、柔軟な子でしたから。ですが、帰ってきたリリアンはまるで別人でした。生活環境がまるで違うゴブリンたちと一緒に暮らしたい。そんなことをいう子じゃなかったんです。」

「続けろ。」

「そこで私は思ったのです。ゴブリンの集団の中にいる白髪の青年が怪しいと。青年は私たちに一切喋り掛けてくることはありませんでした。私たちに何か伝えたいことがあるときはいつもリリアン経由で話し、それ以外はゴブリンと談笑したり、こちらを見ているだけ。そんな不気味な人間でした。」

「ふっ面白いな。続けてくれ。」

「だから私は、あの青年がゴブリンとリリアンを操っていたのではないかと。そういう結論に至ったのです。リリアンは私たちと話し終えると、すぐにその青年の元へ戻ってしまいます。常に青年の手の届く範囲にいたのです。それに、ゴブリンが捉えたという盗賊を私たちに差し出したのです。その情景は「お前たちもこうはなりたくないだろう。ならば、この娘を渡せ。盗賊を捕まえたという手柄で手打ちだ。」そう言っているようにしか見えませんでした。リリアンは誰が見ても優秀な子です。あの青年も伸びしろを見出したのでしょう。」

「・・・」

「そしてなぜ、この件を秘密にしたか。それはあの青年の笑みがまるで悪魔の様だったからです。いくら私の可愛くて大切な村の民でも、あの不気味な笑みを見てしまっては委縮せざるを得ませんでした。だから、彼女の両親に頭を下げ、延いては村人全員に頭を下げて隠蔽を図ったのです。申し訳ありませんでした。」

 嘘も真実も混ぜて、今日の出来事を騙り、しっかりと頭を下げる。

 今までにないくらい、今までで一番誠意を示した一礼だったと思う。

 これでこの村の罪が晴れるのであれば安いものだ。

「少年、今村長が言っていたことは本当だと思うか。」

「本当だよ。村長さんは悪い人じゃないもん。それに僕も沢山のゴブリンを見たんだ。」

「そうか。一応聞こう。ご婦人、村長の言っていることに嘘はないか。」

「間違いありません。」

「それでは明日の討伐目標を変更する。討伐目標は白髪の青年とゴブリンだ。特に白髪の青年だ。そして救出目標はこの村の娘、リリアンだ。詳しい話は宿で詰めよう。案内してくれ。」

「わかりました。ではこちらに」

 そう言うと、誰のお咎めもなく、尋問は終わった。

「すまん。少し待ってくれ。少年・・・ジェインといったか。貴重な情報ありがとう。君はきっと誰にでも誇れる立派な人間になれる。頑張り給え。」

 その言葉を聞いたジェインは誇らしげに頷いた。

「それでは行こう」

 この言葉を確認し、一行を邸宅へと向かい入れた。

 その晩、私は心の中で謝った。

 すまないゴブリンたちと白髪の青年。君の笑顔、いや、君たちの笑顔は素敵だった。ゴブリンが普段はあんな顔をするなんて、知りもしなかった。

 それに言葉は通じずとも手を振りゴブリンと対話ができたことは誇りに思っている。あの光景は生涯忘れることはない。

 だが、本当に申し訳ない。

 村もリリアンも救うにはこれしかなかったんだ。わかってくれ。

 君たちの幸運を祈る。


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