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魔王によって彩る世界  作者: 伊草 推
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第18節 ~別れと出発~

 リンゴの木と畑が護れることを聞いてから大体二十分間。

 特に何があるわけでもなかった。村人は依然としてこちらを見ている。

 うちの村長は徐々に回復し始め、立って体を動かしている。

 一方のリリアンは、報告が終わってからは少し離れたところで座り込んで俯いている。

 あんな大勢を相手に交渉をしたんだ。疲れるのも当然だろう。

 別れの時にはしっかりと起こす。それまではゆっくりしてやろう。

 そう思ったのもつかの間、林道からは大量のゴブリンが隊列を成さず、ぐちゃぐちゃの状態でここに来た。

 それを見た村人たちは本能なのか、少し後ずさりをしていた。

「お前らよく来た。事情はもう聴いているだろう。俺らはこれから前にいた村に一度戻る。そこから、立て直していく予定だ。異議のある者はいるか?」

「異議なし。」

 揃ってはいないが、迫力のある異議なしが聞こえた。

「それに、リリアンのおかげで、俺らの心の支えとなっていたあのリンゴの木と畑は中人たちが護ってくれることが決まった。またいつか・・・またいつかあの地に戻って、思い出話でもしようじゃないか。」

 そこからは、ゴブリンたちは大盛り上がり。

 それを見た村人は、今まで見たことないぐらいに怖そうにしていた。

 リリアンを起こそうと思ったら、既に起きていて気付けば俺の隣にいた。

 あれ?お前は帰るんじゃないの?と思い、リリアンを指し、その後村を指差した。

 すると、大きく首を振りゴブリンたちを指差す。

 つまり、俺たちと一緒に来るということだろうか。

 それじゃあここまで来た苦労は何だったのか。

 だが、襲撃を事前に知れたという意味では来なければ死んでいたのかもしれない。そう考えると損ではない。むしろ得だ。

 出発する直前、村人・・・買い物をしたときに合った服飾屋や肉屋、八百屋などの店主が、食べ物などを詰めた袋を用意してくれた。これのおかげでこの大所帯でも三日は持つだろう。ありがたい限りだ。

 そして更に、出発する直前。一悶着があった。

 小さい男の子が騒いでいる。ただ、ゴブリンが怖くて騒いでいるというわけではなさそうだ。

 何か理由がある騒ぎ方。

 それを見たリリアンは騒いだ子に近づいて行き、抱きつきながら何かを伝え戻ってきた。

 弟であろう子はさっき確認しているから、村にいた時に仲が良かった子供だろう。

 男の子は不満げな顔を浮かべ、こちらを睨みつけているが大人に抱きかかえられている。

 可愛い限りだ。

 リビンは全員揃っていることを確認し出発した。

 俺もそれに続き、ゆっくりと歩む。

 村の方を見ると皆が手を振って見送ってくれた。

 ゴブリンたちも不思議な感覚だろう。仲たがいしている中人から手を振られ見送られる。

 リビンを含め、全員が手を振り返すと、村人は更に盛り上がった。

 恐らく、この世界で初めての試みだ。

 だが、いつかこれが常識になる世界が来るかもしれない。

 村の入口が見えなくなる辺りでそう思った。


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