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魔王によって彩る世界  作者: 伊草 推
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第17節 ~疎通の証明~

 私は、ゴブリンに襲撃されることを伝えた後、申し訳なさに襲われていた。

 巣があるだけで王都の精鋭を呼ぶ。なぜゴブリンを恐れ、憎むのだろうか。

 考えてみれば、ゴブリンは恐ろしいという話はいくらでも聞くが、この村でゴブリンに直接的に襲われたという話は聞いたことがない。

 それに何もしていないゴブリンたちにとっては、理由もわからず自分の家を失うというのは辛いことだろう。

 リビンが座り込んで落ち込んでいる理由も良くわかる。

 私も『自分の家が、これから盗賊に襲われる予定だから今すぐ逃げ無ければ命が無いかもしれない。』などと言われたらどうしようもなく落ち込んでしまうと思う。

 そんな中、シュウヤがこちらに来くる。

 一言。

「リンゴ」

 と言ってジェスチャーを始める。

 意味不明だった。

 体全体を使って両手を大きく広げ、何周か手を回す。

 何が言いたいのかがまるでわからない。

 全く伝わっていないことがわかると直ぐに違う伝え方に変更した。

 次は地面に絵を描かいた。

 地面に描かれているのはたぶん木だと思う。

 次は、その木を指差し「リンゴ」という。

 リンゴの木と表現したいのかもしれない。

 その後、またさっきと同じ動作をする。

 この動作は何の意味があるのだろう。

 そして最後に、木の横に盾を描いた

 そこでようやく、言いたいことの全容を理解する。

「わかった。皆に伝えてくる。」

 思わず声が出てしまった。

 あのリンゴと畑を護りたい気持ちは私にもある。

 この村の皆にも見て欲しい。そう思えるほどに綺麗で神秘的な場所。

 その思いが前面に出て、声が出てしまったのかもしれない。

 小走りで村の皆のところに行き、お願いする。

「みんなにお願いがあります。たぶんだけど、ゴブリンの皆は討伐依頼が出たことを理解して、今からあの洞窟を離れると思うの。」

 それを聞いた村人たちはどよめきを上げた。

「リリアンのお母さんが言った通り、これから別のところに住処を移すのか。」

「あの地面に描いた絵だけで、襲撃されることがしっかりわかるのか。」

「そんなこと言って、襲撃される前にここの村を襲おうとしてるだけじゃないのか。」

 他にも色々な言葉が聞こえた。

 中には失礼なものもあって物凄く腹が立った。だけど、そこに怒っても仕方がない。

 本題はそこじゃない。

「みんなにお願いしたいのは、ゴブリンたちが大事に育ててきたリンゴの木と畑を護って・・・受け継いで欲しいの。」

「ゴブリンが畑を?そんなはずないだろ。」

 一人が大きな声で反論をした。

 それに便乗して、そんなはずはない。という声が所々で聞こえる。

「本当にあるんです。」

 便乗する声をかき消すためにも、少し大きな声で主張した。

「そこは凄く綺麗な場所で何かに護られているかのような特別な場所なの。そこだけ木が丸く拓けて、吹き抜けた様な青空から太陽が注ぐ綺麗な場所。真ん中にリンゴの木があって、その周りを囲うように野菜や豆が育ってる。そういう素敵な場所なんです。だからお願いします。」

 頭を下げると、村長が肩を叩いてくれた。

「いったいその畑はどこにあるんだ。」

 そこからは、場所の説明を細かくした。

 私も一回しか行ったことがなかったが、覚えていることを全部話した。

 洞窟から出て斜め前に進んでいくこと。

 川が近くに流れていること。

 場所的に考えて、林道からも問題なく辿り着けること。

「わかったよ。討伐隊が帰ったら、その辺を見てみるよ。」

「ありがとうございます。絶対に護ってください。本当に綺麗な場所なんです。1回行けばみんなその綺麗さがわかります。」

「わかったわかった。この村の全員が一回見学する。そうすれば、お前の言いたいこともわかるだろうし、ゴブリンたちに対する認識も改めると思う。お前はまだ若い、いや若すぎるぐらいなのによく頑張った。」

 村長さんの言われた言葉で、涙が零れそうになったが我慢した。

 たぶんここで泣いたら、止まらない。

 止まらなくなって、この村から出ていきたくなくなっちゃう。

 でも、本当にやりたいことは、ゴブリンたちと一緒に過ごして普通の人が知らないことを知ること。

 この村でのほほんと暮らすことでも、王都で沢山勉強して、偉い人になったりお金持ちになったりすることでもない。

 だから、頑張って泣くのを我慢した。

 そして、シュウヤとリビンの元に戻り報告をする。

 言葉は通じない。

 だから、笑顔と親指を立てて、成果を表現する。

 シュウヤは、頭をポンポンと叩いてきた。

 たぶん、評価をしてくれたんだと思う。

 よくやったって。

 だだ、何か見透かされている気がして、我慢していたものが更に溢れそうになった。


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