第0節 ~はじまりの地~
目が覚めるとそこは森か林か、朽木もあれば、まだまだ成長途中の幼い木もある。草木の生い茂る自然豊かな環境で寝そべっていた。
起き上がり、伸びをし、体全体をペタペタと触り変なところがないかを確かめる。
「よし、変なものも持ってないし、今回も異常はないな。」
そして、現状を確認するために周りを見渡しても何もない。あるのは木ばかり。
「うーん、なんにも見えないなぁ・・・取り合えず歩くか。」
言葉通り、適当に歩き始める。
「本当に、いつになったら終わるんだろうか・・・」
体を動かし始めたからだろうか、少し歩いたところで自然と口が動き愚痴がこぼれた。無意識だとしてもこんな一言が出たことには驚いた。
確かに辛いことは多々あるが、人生そのものを悲観することなんて最近はなかったはずだ。また自分の精神が荒んでしまっているということなのか・・・
ではなぜ、こんな一言が出た理由。
それは所謂、異世界転生を繰り返していたということが原因だ。様々な世界で生きて死にまた別の世界へと飛ばされる。
この繰り返しから抜けだすため、終結させるに様々なことも試した。だが結果は実ることなく、その世界で死ぬと次の世界へと飛ばされた。
そんな生活を何回も、何回も繰り返していた。
もう死んだかなんて覚えていない。死んだ回数は二十回を超えたあたりから数えるのをやめてしまった。死因やあらましも途中まで真面目に覚えていたが、三十回か四十回を超えた辺りから防御本能が徐々に働くようになり、記憶できなくなっていた。
今となっては、前回の死因は疎か暮らしぶりや世界観も思い出せなくなる始末。
それに転生前にいた世界である現代と似た雰囲気の世界にも、何度も飛ばされたことも相まって、転生するようになった大よその理由すらわからなくなっていた。
流石に名前が大友修弥であることや両親兄弟の顔と名前、親友の顔と名前、好きだったゲームなどは確実に思い出せる。
だが、他の記憶は転生前の記憶か転生後の記憶かわからない、思い出せないのが現状だ。
早くこんな人生から抜け出したい。と思うことは不思議ではないだろう。
こんな中でも希望はあった。
一度か二度、飛ばされる前の世界と全く同じ現代の世界に飛ばされたのだ。
何かが掴める何かが変わる。現代に転生されるとそう感じてならなかった。
だが、結果は何も変わらず『死んで次の世界に行く』という状況を打破できなかった。
この何度も何度も死に回数を重ねても、抜け出せない状況から強い閉塞感と挫折感を味わい自暴自棄にもなった。
考え得る様々自死を試したり、逆に何もしなかったり、無謀な喧嘩を売り死ぬなど一通りの苦い経験し、廃人状態にもなった。
その間に数十回は死んでいるだろう。
しかし、何も変わることはなかった。
死ぬ度死ぬ度、新しい世界へと飛ばされる。
ただただ、それが繰り返されるだけだった。
そんな無気力な状態の俺を立ち直らせてくれた人がいる。
どんな世界の誰の助けを借りて廃人から抜け出し、前向きになれたのかということは覚えていない。
だが、今では廃人状態から抜け出すこともでき、地に足をつけ歩くこともできている。
「いつか希望は見える。必ず道は見える。」
これは、廃人から抜け出したときに恩師がよく言っていた言葉だ。
その言葉だけが耳に残り、今も大事に呟いている。
楽天的でご都合主義な言葉だが、凄く気に入っている。
この言葉を言っているだけで良いことがある。そんな気がするのだ。
それにこの言葉を言っていると、前回前々回の世界にいた自分が頑張って生きていたに違いない。覚えていなくともそう感じられる。
たぶん、転生するたびにそんなことを思いながら生活を送っている。とりあえずはそれだけで現状は十分なんじゃないか。その気持ちを胸に歩みを進める。
そんな思い出を振り返っていたら森を抜け、林道に着いた。
「おぉやっと道に出れた。」
抜けた先に見えたのは、踏み固められた地面。整備はされていないものの、人が通り、雑草なども生えていない。
程よく使われている道で町などに繋がっている何よりの証拠を手に入れた。
「本当に道に出れてよかった~とりえず町を目指すか。」
右か左かという些細な悩みはあったが、棒を倒して左に行くことを決めた。
そして、両手で頬を叩き、気を入れなおして「ヨシッ」と声を出し、街を目指した。




