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魔王によって彩る世界  作者: 伊草 推
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第16節 ~緊張と別れと・・・~

 少し時は遡り、リリアンが手を放し村人交渉を始めた。

 何もできずに任せっきりの自分が情けない。

 だが、当然俺らには言っている言葉が理解できない。強いて言うならゴブリンという言う単語一つだけが、理解できるという状況。

 少しかがんで、隣にいた奴とコソコソ声で話す。

「何話してるんだろうな。」

「リリアン、少し怒ってるみたいだし、なんか嫌なことでもあったんじゃないか?」

「それじゃあ、誘拐のそもそもの原因は家出か⁉」

「そうかもしれないな。」

 そして、リリアンが後ろを振り向く。

 それを見た村長がボソッと呟く。

「あれはもう大丈夫だから盗賊2人を村に引き渡せって言う意味かもしれないな」

「村長、アレはただ後ろを向いただけなのでは?」

 隣にいるゴブリンが疑問を投げかける。

「いいや、そうに違いない。お前ら盗賊二人を中人たちに引き渡してやれ。お前らが丁寧に運んだ苦労が報われる時が来たぞ。」

 リビンが合図を出すと、担がれている盗賊がリリアンの横を通り過ぎ、中人たちが集まる村の前に置かれる。

 その間、攻撃はなく、やはりリビンの言っていたことが正しかったのかもしれない。

「リビン村長、俺も少し疑ってましたすみません。」

「いいんだよ。こういうのは長年の野生の間が重要だからな。」

 そしたらまた、リリアンは村人と言い争いを始めた。

 そしたら村人たちの後ろから偉そうな人が出てきた。

 だから、こちらの偉い人であるリビン村長と話す。

「村長村長。あっちの偉そうな人、たぶん村長が出てきましたよ。対抗したほうが良いんじゃないですか。」

「対抗なんてしなくていいだろ。このまま見てればそれでいい。」

「なんか、すみません。」

 暇すぎて、変な雑談しかすることがない。

 本当は早く帰りたいのだが、リリアンが何か納得のいかないことがあるらしい。

 向こうに行ってこっちを向いて手を振るとか、両親と感動の再開そしてハグとか、そういうのを見れれば帰れるんだが中々にそういう機会は訪れない。

「話長いですね。」

「気に入らないことがあればトコトン詰めるべきでしょ。」

 そしたら次は女の人が出てきた。

「あれはお母さんなんでしょうかね?」

「たぶんそうだろうな。」

 隣のゴブリンに話しかけられ、即答するする。

「あら、もう一人出てきた。お父さんかな?」

「言葉はわからないけど口ぶり的にそうだろう。」

「あ、言い争ってる。やっぱり家出が原因かな?少し怒ってるみたいだし。」

 その後、何かを言いながらこちらに来る。

 語っている言葉の中でリンゴとオレンジだけは理解できる。

 いったい何を語っているのだろうか。

 そして、俺とリビンの腕を掴み、向こうを向いて微笑んでいる。

 これは、仲良しなんだよ見たいなアピールだろうか。

 このアピールに対し、母親は大変ご立腹の様だ。言葉は違えど、怒っているのはわかる。

 だが、お父さんがお母さんの肩を持つと、徐々に両親の怒りが収まっていくのが見えた。

 何か喧嘩の原因が解決したのだろうか。

 そしてリリアンは俺たちの腕をスルッと離し、村の方へ向かって歩き両親と抱き合い和解した。

「仲直りできてよかったな。」

「そうだな。」

 ゴブリンみんなと感傷に浸る。

 リリアンが兄弟たちとも抱き合っている姿を見て勝手に感動しているとリビンが皆に帰りの合図を出す。

「お前ら、帰るぞ。これ以上見る必要はないだろう。」

 リビンはいち早くリリアンに背を向け、のそのそと村に帰る。

 その背中は哀愁が漂っていた。別れはやっぱり寂しいな。

 本当の意味で短い間の付き合いだったが、同じ中人という人種とゴブリンに囲まれた状態で触れ合えた。

 これはきっと、今後も経験することのない思い出だと思う。

 しみじみとリリアンとの思い出を振り帰りながら歩いていると、リリアンに手を掴まれ、引き留められた。

 反対側の手で手を振ってバイバイとやると、首を横に振る。

 まだ帰るなということだろうか。

「おーいみんな~リリアンがまだ帰るなだって。たぶんまだ他にやることあるみたいだ。」

 そういうと皆の表情が少し明るくなって気がした。

 呼び戻されると、俺とリビンは手を引かれ横並びにならばさた。

 目の前には、何故かリリアンの両親がいる。そして手を取られ握手を求められた。

 握手中は何を言われているのか全く分からなかったが、父親の方は熱意が伝わり、母親の方からは何かを取り繕っている感じがした。

 村長の方を向いても、村長もただただポカンとして握手しているだけだった。

 結局、何のイベントだったんだろうか。

 握手が終わった俺とリビンは、皆のところに戻る。

 すると、向こうの村長が何かをしゃべり始め、それを聞いたリリアンが大声を出した。

 そして、向こうの村長の話を聞くにつれ、肩を落としどこかがっかりしたかのような表情を見せてこっちを見た。

 その後、俺とリビンは再度呼ばれると、リリアンは地面に絵を描き始めた。

 何か伝えたいことがあるのだろう。

 絵の内容は、洞窟と家と城だった。

「全くリリアンは何を伝えたいんだ?」

 村長が少し呆れる。

「まぁまぁしっかり見てから考えましょうよ。」

 リリアンは五本の線を引き、何かを時系列順に語ろうとしていることが分かった。

 そして一本目の線。

 説明するときに、リリアンは、人の上にビックリマークを描いた。

 感嘆符を使っている。感嘆符が通じるのか。

 何よりも、まずそのことに驚いた。

「村長、ビックリマークってわかりますか。」

「そこに書いてある奴だろ。洞窟の絵とビックリマークから察するに中人が洞窟を見つけたということだろう。」

 なるほど、この世界でもビックリマークは使えるのか。

 これは便利だ。もっと便利な疑問符はあるのだろうか。凄く気になるが、これはまたの機会にしよう。

 絵の方に考えを移すと、察するにゴブリンの巣を見つけたということなのだろう。

 そして二本目に移ると村の人間が城に行ったということだろう。

 詰まる所、ゴブリンの巣を見つけたと報告したということだろうか。

 三本目には馬が出てきて、馬が村の方へと向かってくる。

 これは騎士が、馬に乗ってここに来るということを表したいのだろうか。

 三本目には丸マークを描いた。これはどういう意味なのだろうか。

 四本目には馬が、村にいる。

 そして、これには二重三重の丸が書かれている。これはもうこの村に騎士がいるということなのだろうか。

 五本目は、とても直接的だった。剣や槍を持った人が洞窟を襲っている。つまり、ゴブリン退治をすると言うことだろう。

 一連の流れを見たリビンは、少し嫌そうな表情をして村民たちの方を見た。

 リリアンはそれに見てからすぐ、各々に数字を当てた。

 だが、数字を見ずとも大体は把握できた。

「村長、これ、たぶん襲撃されるって言うことですよね。しかも、城から来るほどの強い奴らが来るんでしょうね。」

「そうだな。事前に巣を見つけた奴を排除できなかったのは非常に悔しい。だが、これはリリアンのせいじゃない。あの場を捨てるのは惜しいが、逃げるしか手はないのだろう。」

 村長は凄く悔しそうにしながら、決断をした。

「お前ら、今すぐ洞窟に行って、移住に必要なものを全部持ってここに来るように招集をかけてくれ、出来るだけ早くだ。」

「移住するってどういうことですか。」

「この後、中人たちの精鋭が俺たちの洞窟を襲撃しに来る。勝ち目はない。だからあそこは捨てる。時間が惜しい。これ以上の質問はなしだ。」

 そう言うと、納得していなさそうな奴も当然いて、中には中人を睨むものもいた。

 だが、それ以上は何もなく、ここには、村長と俺だけが取り残された。

「村長、あんなこと言って大丈夫なんですか?畑とか狩りとか行ってる奴らはしっかりと集合できるんですか?」

「大丈夫だ。問題ない。今日は、ここに精鋭を連れてくる予定だったから狩りも農業もやってない。」

 村長は座り込んで、落ち込んだ。

「あそこで結構楽しくやれてたんだけどなぁ」

 何か声を掛けようと思ったが思い付く言葉はなかった。

「あと二十日、早くシュウヤとリリアンが来てれば変わったのかもな・・・」

 リビンはタラればを漏らす。

 一方の村民の方を見ると、申し訳なさそうな顔をしている人間もいた。

「そうだ。あのリンゴの木と畑。あの二つはこの村に維持してもらえるように頼めないだろうか。あれは村の宝だ。何とか守って欲しい。」

「そうですね。頑張って伝えてみます。」

 リリアンの元に行き、頑張って伝えて畑のことを伝えたい。そして、村民に伝えて欲しい。

 畑に関する言葉で、伝わるのはリンゴだけ。

「リンゴ」

 そう一言言って体全身を伸ばし、木を表現するが伝わる気配がない。

 村民たちは、凄く不思議そうな顔をし、こちらを憐れんでいるようにも見えたが、そんなことを気にしている暇はない。

 次は、少しやり方を変える。

 地面に木を描き、指を差して、リンゴという。

 その後、広い空間を想起させるべく、もう一度体全体を使い両手を何度も広げる。そして、最後に地面に盾を描く。

 盾がこの世界の形に合っていなければ伝わらないがどうだろうか。

 すると、リリアンは大きく頷き、一言二言何かを言って、村民の方小走りで向かいジェスチャーの内容を話し始めた。

 話は少し難航していたが、向こうの村長さんが出てきて無事、まとまったようだ。

 話し終えると、リリアンはこちらに歩いてきて、どこか空元気に見える笑顔を見せながら親指を立てた。

 俺は、その頭をポンポンと軽く叩き評価した。

「村長、これであのリンゴと畑は守られ続けますよ。」

「そうか、それは良かった。」

 さっきまでは声に覇気はなかったが、幾分元気が出たようにも聞こえた。


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