第14節 ~決断~
リリアン寝かしつけた後、俺は決心した。
朝一番で村長に頼み込み、明日中に盗賊二人組とリリアンを村に帰すことを交渉すると。
そうじゃなきゃ、リリアンが可哀そうで仕方がない。
だから、明日でリリアンとはお別れだ。
『短い間だったが楽しかった。』
そう今すぐに伝えることができれば楽なのにと、言語の壁を恨んだ。
あの後は目を瞑るだけで寝れなかったが、昼寝もしたからか、皆が起きる時間になっては目がしゃっきりとしていた。
村長が起きたという話を聞くと真っ先に村長のもとへと向かった。
「村長、お願いがあります。今日中に、リリアンと盗賊を中人の村に帰したいのです。協力していただけますか。」
「おぉそうか。別に構わないぞ。リリアンがいなくなるのは少し悲しくなるが、子供で親や同じ人種たちに会えないのも寂しいだろう。帰してやりなさい。」
「それで、必要な人数なのですが、十人ぐらいは欲しいです。そして、ほんのちょっと武装してくれれば、理想的です。」
「人数は全く問題ない。十二人選抜しよう。武装に関しては、武装しないという選択の方が危険だからな。当然、武器の扱いに長けた奴を同伴させよう。」
「そんなに良くしてもらって大丈夫なんですか?」
「問題ない。あんなに嫌がってた狩り部門トップのイロンもリリアンが大好きだからな。協力してくれるはずだ。」
「ありがとうございます。それでは時間は何時頃にしましょうか。」
「早くて問題はないんだろ?じゃあ、朝ご飯を食べたらすぐに出発しよう。向こう様も夕方に来られるよりかはマシだろう。」
「それでは、朝ご飯を食べたらすぐでお願いします。」
「うむ・・・それと最後に俺もつれてってもらえるだろうか?」
「危なくないですか?」
「大丈夫、自分の身は自分で守る。」
こうして、リリアンと盗賊の帰還計画が動き始めた。
計画が立ったものの選抜部隊が発表されるだけで、忙しくなることはなかった。
ほぼいつも通りの朝を迎え、ほぼいつも通りの時間帯に朝ごはんが出来た。
今日も今日とて、リリアンは子供たちと遊んでおり、今日も今日とて、朝ご飯ができるとは以前の手伝いをした。
そして全員が席に着くといつも通り、儀式を行い、ご飯を食べ始める。
「今日は皆に言わなきゃいけない大事なことがある。知ってるものもいると思うが、今日の朝でリリアンを中人の住む村に帰すこととなった。皆寂しいと思うが、本来は別々に生きている人種、一緒に暮らせたことを幸運だと思って欲しい。」
何らかの、否定的な意見やえーといった声ができると思ったが、そんなことは一切なく、黙々とご飯を食べていた。
今更反対したところで、何も変わらないことはみんな分かっているのだろう。
そして、朝ご飯を食べ終わり、食器を方付ける。リリアンも食器を方付けたことを確認すると、手招きで呼び寄せ、地面に絵を描き今の状況を説明する。
描く絵は、洞窟と家の二つ。そして洞窟の前に棒人間を一人かいた。
そして、ジェスチャーで一つ一つの認識の擦り合わせを行っていく。
絵の洞窟を指し、すぐそこの村がある洞窟を指す。そして棒人間を指し、リリアンを指す。最後に家を指し、以前と同じく手で放物線を描く様なジェスチャーをして村と擦り合わせる。
そして、最後に棒人間の横から矢印を出す。そして行先は家。
これで伝えたいことは伝わったはずだ。
パッと見た感じ、リリアンも内容をしっかりと理解しているように見える。
説明を終え頃には、皆準備は整っていた。
ここからは、少し長い中人の村までの散歩が始まった。
と言って盛り上がる話題は一つもなく黙々と道なき道を歩く。
静寂を維持されるのは嫌だと思い、周りを見てネタを探した。
「そういえば、盗賊の二人は静かですね。」
「あぁこれな。これは眠りの効果のある薬草から抽出したエキスを口にあるさるぐつわにしみこませたからだよ。」
「連続での効き目はないけど、一回嗅がせれば半日は起きない優れものだし、眠れないときとかに便利だよ。」
「そうなのか。今度使わせてもらうよ。」
そんな便利グッズ紹介感覚で、睡眠薬を勧められてもと思った。
これ以外の言葉が出ず、その話題からの発展性がなかった。
そこからは無言で歩いた。
獣道を抜けて林道に入るとリリアンが俺の手を握ってきた。
もしかしたら、絵とジェスチャーでは意図が伝わらず、これから別の町に売り飛ばされるとでも思っているのだろうか。
それだったら問題ない。お前を中人の村に帰すだけだだからな。言葉が通じない分、リリアンの手をしっかりと握り返した。
そして林道が徐々に広がっていき、村が見えた。
「間違いない。買い物をしたあの村だ。」
「もうそろそろお別れになるだなんて悲しいな。」
村長も短い間だったが、リリアンの利発さが好きだったのだろう。
「この二人はどうでもいいが、本当にリリアンも行っちゃうのか?」
盗賊を運んでくれているゴブリンが聞いてくる。
少しの間答えることができなかった。
そして、振り絞って言葉を出した。
「そうだな。」
色々と慰めの言葉も考えたが、これしか出てこなかった。
本人不在の別れ話をしていると、村との距離は更に近づき、騒ぎ声が聞こえた。
敵視しているであろうゴブリン集団でこの村に近づいてきているのだ。
当然と言えば当然だ。
「みんなにお願いしたいことがある。村の人たちには攻撃されない限り、攻撃しないでくれ。出来れば敵意も見せないで欲しい。」
「そのぐらいはわかってるよ。」
誰か一人がそういうと、みな当たり前だというように頷く。
村の入口あたりには、剣を構えた人間が数人立っている。
そして、その後ろには主に男の人だかりができていた。
こちらは威嚇するでもなく、村の入口から少し離れた距離で止まった。
向こうは依然として攻撃を仕掛けてこない。リリアンがいるからか、それとも中人2人とゴブリンたちが共に行動をしているという不可思議さからか。
この光景を見た後ろの人だかりは、小さな歓声を上げ、一部の人は村の中へと走っていった。
ここまで来たのはいいものの、やはりこれ以上のことは計画をしていなかった。
村にリリアンを帰す。ただそれだけを目標にしていたに過ぎない。盗賊はおまけだ。
ここからどうするか、考えているとにらみ合いだけで数分が立ち、リリアンが手を放して、一歩二歩と歩み始めた。




