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魔王によって彩る世界  作者: 伊草 推
14/23

第12節 ~表現での疎通~

 持ってきたものの検証が一通り終わると、少し疲れてしまい洞窟の中で少し休憩をする。

 リリアンはまだまだ元気だったが、一緒に洞窟に入って休憩させる。

 岩肌に背中をつけ、水を飲んで体全体の力を抜き、次は何をやるかを考える。

 昼飯まではもうすぐだろうし、出来れば周辺で済むことをやりたい。

 そうだ。リリアンがここに来た経緯を未だ、リリアンは知らないのか。

 あそこまで利口ならば、既にここに来た理由も気付いているかもしれないが、憶測に頼るぐらいなら、コストもかからないし説明するべきだな。

 説明って言ってもジェスチャーと入れられていた袋だけじゃなぁ

 まるで俺たちが誘拐したみたいな構図になっちゃうよ。

 どうしようかなぁ

 そうか。奥には盗賊もいるからそいつらを見せながら、説明すればうまくいくか。

 よし。そうしよう。

 そこから更に三分程度、休憩をし、村長とリリアンに話をつけに行った。

 その話をつけに行くだけなのにリリアンはついてきた。可愛いやつめ。

「リビン村長。今、捉えてる盗賊二人いるじゃないですか。面会させてください。もちろん拘束は解きませんし、近づく予定もありません。」

「それじゃあなんで、面会するんだ?」

「リリアンに、この村に連れてこられた経緯を知って欲しいからです。ワイエンも少し手伝ってくれないか。」

「よし。良いだろう。」

「俺も暇だし手伝うぜ。」

「ありがとうございます。」

 少し長引くかもと思った交渉もすんなりと終わってしまった。

 リリアンも付いてきていたし、袋も持って来ていたことから、直ぐに奥に向かって盗賊たちに面会しに行く。

 奥の奥まで行っても警備している人がいるわけでもなく、二人の盗賊がポツンと縛られた状態で放置されている。

 体は、偶に動いており、生きていることは間違いないだろう。

 あまり近づいても危険が増すだけなので三メートルぐらい離れた位置で止まり、そこで説明を始めた。

 ジェスチャーの内容は、まず盗賊二人を差した後、俺とワイエンを差し、悪そうな素振りをする。そして袋の口を開け、リリアンを指差し、その指を流れるように袋の口の中へと持っていき、急いで口を絞める。口を絞めたらワイエンと二人で空の袋を持ち上げて足踏みをする。

 という二分程度で終わる簡単なものだった。

 リリアンはそれを見るとただただ頷いた。

 何を喋るでもなく、何か感情を出すわけでもない。

 正直こうなるとは予想をしていなかったが、気まずい空気がそこには流れていた。

「説明は終わっただろ。帰るぞ。」

 この気まずい空気を村長が切ってくれた。

 ありがとう村長と心の中で言い、盗賊たちのいる場所を後にした。

 洞窟の入口あたりに来ると、ご飯の匂いが洞窟内にも漂ってくる。

 リリアンは、洞窟内を走り、先に配膳の手伝いをしに行った。

 洞窟を出るまでの間、誘拐されたことを説明したのは間違えだったのかと考えた。

 だが、経緯の説明は絶対に必要だったことだと飲み込み、昼飯へと向かった。

 配膳を少し手伝い、いつもの定位置に座る。隣にはリリアンがいて、村長の儀式が終わりまで、食べるのを待つ。

 そして村長がいつも通り最後に来て儀式を行い、ご飯を食べ始める。

 食事中は特段何も起こることはなかった。

 ただ、村長からもうみんなが既に知っていることの発表があった。

「みんなはもう知っているかもしれんが、この中人の少女の名前はリリアン・パンサスというそうだ。リリアンと呼んであげてくれ。」

 そういうとリリアンは立ち、一礼をした。

 みんなはそれに拍手で答え、自己紹介は終わった。

 有ったことと言えばこれぐらいだろう。

 それ以降は本当に何もなく、ただの昼飯と言った感じだった。

 それでも食後の予定は考えなくてはいけない。人攫いにあい誘拐されてきたことも説明してしまい、本当にやることがない。

 また、検証をやればいいのだが疲れが前に出てしまい、どうにも今日はこれ以上、検証をやる気になれなかった。

 そうだ。リリアンと畑にでも行こう。

 そして、あの神秘的な景色を見せて、この村にもいいところがあるというところを見せてあげよう。

 そうは考えたものの、食後は直ぐに動く気に成れず、昼飯を食べ終わったら食休憩のために数分休む。

 休んでいるときは、何も考えず、ぼーっとしていた。

 そして、もう十分休憩しただろうと感じたタイミングで立ちあがり、リリアンを手招きして、一緒に畑へと向かう。

 畑に着くまでの間は、出来る限りゆっくりと歩いて、転ばないよう様子を見ながら進む。

 だが、獣道を歩くのには慣れているようで、歩幅分ゆっくり歩く程度しか必要はなかったようだ。

 そして畑に着くと、リリアンも畑の幻想的、神秘的な空間に魅せられ辺りを縫って歩いていた。

「デタさん、どうも。見学しに来ました。」

「おぉシュウヤ今日もきたか。あいつらが戻ってきたから人出は足りてるが、早く終われるから手伝ってくれてもいいぞ。」

「それじゃあ収穫の手伝いなら手伝えますよ。リリアンにここの綺麗さを見せたかったんですが、思った以上の効果でしたね。心ここにあらずな感じなのでしっかり見ておかないと。」

「完全に魅せられてるな。まぁそれだけ綺麗な場所ってことだ。ゆっくりさせてやれよ。じゃあリリアンの様子も見なきゃだし、隣の区画を収穫してもらえるか。」

「わかりました。」

「それじゃあよろしく頼むよ。」

 デタさんは手を振って、水を汲みに行く。

 言い訳はしたが、実際は水汲みという重労働を避けたかっただけである。

 まぁそんなことは置いておいて、野菜の収穫を行う。

 昨日も一応、野菜の収穫は手伝っているし、収穫すべき大きさも見てわかる。

 作業も何ら滞りなく遂行できるだろう。

 問題は、リリアンだ。

 危ないということはないが、他の農業部門の邪魔にならないように動いているか逐一見なければいけない。

 収穫中に農業部門とリリアンの双方をチラチラ見るのは、非常に面倒くさい。

 早く正気に戻って欲しいところだ・・・・・

 かれこれ十五分程度経ち収穫は終わったが、リリアンはリンゴの木と畑、日の光で構成された神秘的な空間に魅せられたままだった。

 その後、リリアンはこの空間を一通り、歩き回り満足げな表情をしてこっちに駆けてきたが、こちらとしては監視と収穫で労力が掛かり、疲れがどっと来た。

 この疲れを如何にして復習してやろうか・・・

 そうだ。リリアンと一緒に水まきをやらせよう。川の場所も教えられるし一石二鳥だな。

 鍋を持ってリリアンの手を引き、川に行く。

 川に着いたら一休憩し、リリアンに水を汲ませ、畑に戻り、水を撒く。

 何事もなく、健全的な復讐が完了した。

 戻るとそこには狩り部門もおり、リンゴの木の前で休憩をとっていた。

 農業部門も休憩しており、近づき何を話しているか聞いてみると俺がこの村に来た話だった。

 話に混ざることはなかったが、思い返すと皆がフレンドリーなこともあり、既に一週間は経っている気がした。

 そして話は進み、昨日の盗賊とはち合わせた話題になる。

「リリアンはまだ昨日ここであったことは知らないんだろ。」

「盗賊に誘拐されたっていう話・・・っていうか、ジェスチャーで説明はしたけど、ここの話はしてないな。」

「そうだろう、そうだろう。俺らで寸劇やるから見ててくれよ。リリアンにもしっかり説明してくれよな。」

「いいけど、少し時間をくれ。」

「大丈夫だ。俺らもすぐできるわけじゃない。準備がある。」 

 リリアンにはどう説明をするべきか。「寸劇をやるから見てて」と言うのはどうやってジェスチャーで伝えればいいんだ?

 取り合えずリリアンの手を引いて、リンゴの木から離れる。

 そしてリンゴの木を指して、さっきの誘拐のワンシーン。麻袋を担ぐ盗賊の真似をする。

 これで盗賊にあったという説明は察してくれただろうか。

 他にはどうするべきか。

「シュウヤ~ちょっと来てくれ。」

 全然、説明が済んでない気がするのに、突然あいつらに呼ばれてしまった。

 取り合えず、リンゴの木が見えるように座らせ、人差し指を自分の目元においた後、流れるように指を持っていき、リンゴの木に指を差す。

「シュウヤ~早く来てくれ~」

 急かされてしまったため、これ以上待たせるわけにはいかない。

 俺がリンゴの木に向かおうとすると、リリアンもこちらに来ようとするように見えた。

 だからもう一度座らせ、さっきと同じジェスチャーをする。ついでに、そこで待っててと伝える意も含めて、両手を広げて前に掲げストップとやった。

 すると、意味が理解してくれたのか、その場で留まってくれた。

 ちょっと待っててね。と心の中で謝りつつ、皆のもとへと向かった。

「遅いよ。何やってたんだよ。」

「リリアンに寸劇の説明してたんだよ。」

「あぁそうか。それは悪かった。で、説明はできたのか?」

「うん、まぁたぶん。」

 自信はないが、誘拐事件に関係する場所ってことぐらいは、理解してくれているはずだ。

「まぁお前が大丈夫って言うならいいか。で、お前を呼び出したのは他でもない。盗賊役をやってくれないか?」

「お前らだけで寸劇をやるんじゃないのかよ。」

「最初はそう思ってたんだけど、よくよく考えたら人が足りなかったんだよ。良いだろ。同じ中人なんだしさ。」

「まぁいいか。」

 気乗りはしなかったが、盗賊役をやることとなった。

 用意された道具は袋。

 昨日の光景通り、袋を肩に担ぎ、リンゴの前で置き、リンゴを食べるふりをして欲しいという。

「待ってくれ。そういえば、盗賊って農具で頭を叩かれてたよな?演技だし、本当に叩かないよな?大丈夫だよな?」

「その辺は心配すんなよ。叩かない叩かない。ただ軽く当てるから、当たったなって思ったら倒れて、そのままの状態で気絶付した振りしてて。」

 その言葉が少し怖くも感じたが信用することにした。

 そして寸劇が始まる。

 リリアンはしっかりと見てくれていた。

 手も振ってくれているが、劇中だから手は振れない。役に集中する。

 袋をもって少し大げさ感じで歩き、木の前に袋を置いたら、リンゴをむしり採ったふりをして木の前で座る。

 あとは、ゴブリンたちの盗賊討伐劇を待つだけだ。

 だからしばらく間抜けそうに、リンゴを食べるふりをした。

 その間にもしっかりと劇は進み、狩り部門たちはリリアンの後ろのあたりにスタンバイする。

 スタンバイしているということはもうすぐ、後ろから叩かれるということだろう。

 後ろからガサゴソした音聞こえる。もうそろそろ、あの咆哮が来るんじゃないかと、身構えたが咆哮はなく、少し脅している風の声が遠くから聞こえた。

 その声を聞き、向かってくるゴブリンに驚いたふりをする。

 そして、農具で軽く叩かれたのを合図に、前方向に倒れこむ。

 あとは、倒れたふりをしていれば、それで終わり。

 倒れた状態で話を聞く限り、取り逃がした奴はこの世から抹消されたようだ。

 俺は史実通り、倒れたがもう一人の盗賊は抵抗してしっかりと戦っている。

 脚色もいいところだ。

「何だお前ら、この野郎。俺がてめぇらを倒してやる」

 盗賊役の言葉を聞いていると、まだまだ寸劇は続くようだ。

 倒れた人間がいきなり生き返るわけにもいかないし、寝ているしかないだろう。

 間抜けな体制だが次第に眠くなってきた。

 何も考えずに土と草の匂いが混じった匂いを嗅いでいると、いつの間にか意識が飛んでいた。


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