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魔王によって彩る世界  作者: 伊草 推
13/23

第11節 ~未知の言語~

 朝起きると、いつの間にか横たわり、熟睡していたことに気付いた。

 目の前には既に女の子はおらず、周りを見渡してもいる気配は一切ない。

「やらかした。」

 自分の失態が、思わず声に出してしまう。

 起きてからは心拍数が急激に上がった。寝ていた位置をもう一度探したり、寝ていた周辺の隠れられそうなところを探すなどの無意味な捜索をする。

 そんなことで見つかるはずもなく、どう責任を取ろうかなどと考えながら外に出ると、女の子は外で子供たちと元気に遊んでいた。

 棒をもって、危険な遊びをしているようにも見えたが、棒同士が当たる程度で双方体には当てていない。ただチャンバラ遊びをしているだけだった。

 そして、女の子はそこそこのお姉さんなのか、子供のゴブリンに斬られるとやられたと言わんばかりの演技をし、地面に倒れた。

 子供たちは大喜びし、女の子もそれを見て楽しんでいた。

 どこにでもありそうな光景を見て、少しホッとすることができた。

 だが、自分の失態が消えるはずもない。今日からは更に、気を付けようと心に誓う。

 食事ができたよと、呼び出しが掛かると子供たちは遊ぶのをやめて配膳を手伝いに行く。

 その言葉はわからずとも、それを見かけた女の子も見様見真似で配膳を手伝った。

 もはやゴブリンというものに対して脅威や恐怖感は、ゼロなのかもしれない。

 そして配膳が終わると、皆が座り始める。

 女の子は自然と隣に座り、周りが座ったことを確認すると、食器を持ち食べ始めようとした。

 口に運ぶ前に直ぐに止める。

 止めた時はこちらを見て少し不満げな表情しただが、周りを見ると誰も手を付けていないことに気付き、静かに食器を置いた。

 どうやら、あの村には食前の文化はなかったらしい。食べ始めようとする姿を見た皆は、少し驚きを見せていた。

「しょうがないよ。文化が違うんだから。」

 誰かが理解の声を上げるとと「そうだな。」という声も上がり、批判的な雰囲気はなくなった。

 そして村長はお決まりのフレーズを言う。

「恵みをくれた自然と、命を落としてもなお、我らの血肉になる野生の動物に感謝をささげるように。」

「はい。感謝します。」

 その姿を見た。女の子は周りに合わせ、少し遅れて、

「はい。感謝します。」

 と言った。

 声の抑揚や発音が違い、下手ではあったが全員に通じ、昨晩みたくまた一盛り上がりした。

 皆の盛り上がりが、自分を褒めてくれているのだと気付いてか少し恥ずかしそうにしていたが、口角は上がり、嬉しそうにしていたことも間違いない。

 それから食事は進む。

 途中「お肉食べる?」などの優しさからくるちょっかいもあったが、大ごとになることはなく、朝食を食べ終えた。

 食事が終わり片付けを終えると、女の子は子供たちに付いていこうとしたが、肩を掴んで引き留めた。

 俺は食事中、村長と確実なコミュニケーションをとるためには色々と試すべきだということを話し合っていた。

 やることは、変わらずジェスチャーだが、更に発展させることもできるかもしれない。

 ジェスチャーを実演するのは主に俺で、残りは見学。

 女の子も合わせた合計人数は五人。仕事が終わったり、仕事がなかったりする暇な人が見ている。そんな感じだった。

 俺と女の子は対面で座り、村長も合わせた三人は後ろで立っている。

 まず知りたかったことは、名前だ。

 どうやれば名前を知れるか、ずっと考えていた。

 思い付いたのはただ一つ。指を差して自己紹介すること。

 軽く咳ばらいをし、自分に指をさす。

「シュウヤ」

 たぶん自分一人を紹介しただけじゃ名前であることを理解してくれない。

 だから、後ろにいる三人も一人一人、指を差しながら紹介する。

「リビン」

「ワイエン」

「ルチグム」

 すると、後ろにいたゴブリン二人が嬉しそうに声を上げた。

「シュウヤさん、いつの間にか俺の名前覚えててくれたんですね。」

「そうですよ。覚えててくれたならもっと話してくれてもいいじゃないですか。」

 確かに、称賛はありがたいが、今じゃない。

 だから手を振りながらお礼をする。

「わかったわかった。あとでな。」

 そしてもう一度、一人一人に指を差し、自己紹介する同じ動作を行った。

 シュウヤ、リビン、ワイエン、ルチグムと。

 そして最後に、女の子に指を差し、首をかしげてみる。

「リリアン・パンサス」

 それを一度目で聞けたとき、嬉しさからか背筋がスッとした。

 後ろの三人も、名前を聞けたことに「おっ」と思わず声が出た。

 だが、まだリリアン・パンサスが名前であるとは限らない。

 だから、もう一度、一人づつ女の子も含めて指を差して尋ねる。

「シュウヤ、リビン、ワイエン、ルチグム、リリアン・パンサス?」

 女の子は頷く。

 更に指を差し、同じような質問をする。

「リリアン?」

 笑いながらしっかりと頷く。

「リリアンって言うのかぁ知れて良かったぁ」

 気が抜けると自然に声が出た。

 名前が確定すると、後ろの3人は更に盛り上がった。

 そして、その内の一人、ルチグムが森の方に走って行き、振り向いてこう言った。

「名前がリリアンだってこと皆に広めてきまーす。」

 そう言うと、また走り出し、直ぐに森の中へと消えていった。

「あいつ、皆に広めるためだけにここに残ったな。」

 村長が笑みをこぼしながらボソリという。

 残されたワイエンは走っていく姿がツボに入ったのか、爆笑している。

「あいつのことは放っておいて、次に行こう。」

 村長がそういうと、次の質問に移った。

 次は、リンゴとオレンジを向こうの言葉で何というのかということを調査した。

 昨日と同じようにリンゴを手に持ち、指を差す。

「リンゴ。」

 そしてリリアンを指さし、その後、口の前で親指と他4本の指をパクパクさせる。

「リンゴ。」

 多少トーンの違いはあれど、綺麗に返答してきた。

 だが、そうじゃない。中人の言葉で何というのか知りたかったのだ。

 だから、目の前で手を振り、もう一度同じジェスチャーを行う。

「リンゴ。」

 だが、結果は変わらず。

 どうすれば、向こうの言葉でリンゴを何というか聞くことができるだろうか。

「それじゃあ、ここではリンゴと呼んでることを伝えて、中人の住む村では何て読んでるか聞いてみればいいんじゃないですか?」

 ん?どういうことだ?

 ワイエンが提案してくれるもイマイチ理解ができない。

 ここではリンゴと呼んでいることを伝える・・・?

 どういうことか悩んでいるとワイエンが補足してくれた。

「ここの村の人が、リンゴって言う呼び方をしているということが伝われば、伝わると思うんですけど・・・」

「あーそういうことか、それなら伝わるかもしれないな。」

 ワイエンの提案通りかはわからないが、それ通りにやってみる。

 まずは、洞窟を指さし、手を広げ大きく回す。その後リンゴを指さて、リンゴ。であることを伝える。

 その後、森の奥、手を斜め上にあげて放物線を描くように指を差す。その後、また手を広げ大きく回し、リンゴを指さす。その後、口の前で親指と他4本の指をすぼめ、前に出しながら広げることで発声を表現した。

 客観的に見れば滑稽だが、これで伝わってくれるとありがたい・・・

 リリアンは少し悩んだ表情を見せる。

 だがその後、何かに閃いたような表情を浮かべた。

「メワド」

 これまた嬉しくて、提案してくれたワイエンとは一緒に手を合わせ喜んだ。

 ついに伝わった。

 苦労はしたが「メワド」は間違えなく中人の言葉で言うリンゴだ。

 そして、リリアンに発音などが正しいかを確認してもらう。

 リンゴを指さし、中人の言葉で使った。

「メワド」

 リリアンは首を振り、もう一度、正しい中人読みリンゴを教えてくれた。

「メワド」

 次は、正しく言うことができていたらしく、首を縦に振り、何とか認めてくれた。

 こんな小さなことではあったが、認めてもらえたことは凄く嬉しかった。

 だが、相当に頭でもよくない限り、こんな読みや発音などすぐに忘れてしまう。

「リビンさん。紙と書くものってここにはありますか?草でできた紙とか、動物の皮でも大丈夫ですので。」

「紙はないが羊皮紙ならあるぞ。」

「それじゃあ持ってきてもらえますか?」

「わかったちょっと待ってろ。」

 紙はなくとも羊皮紙があるのはありがたい。

 自分のことだ。しっかり書き留めておかなければ忘れてしまうに違いない。

「メワドメワドメワドメワドメワド・・・」

 何度も中人語でリンゴを繰り返す。

 その度を聞いて、うんうんと頷いてくれるリリアンは良い子に違いない。

「羊皮紙と筆記具持ってきたぞ。筆記具は木炭か、インクと羽の好きな方を使ってくれていいぞ。」

「ありがとうございます。」

 インクは使ったことがないし、液が垂れそうで嫌だったから木炭を使うことにした。

 メモの内容は「リンゴ = メワド」と書き記した。

 無事にリンゴを書き記すことができ一安心することができた。

 次は、オレンジを試した。リンゴと同じようにジェスチャーを行うと今度は一発で、中人語を教えてくれた。

「イッズム」

 というらしい。

 さっきと同じ様に言葉を繰り返し、確認してもらう。

「イッズム」

 今度はすんなりとOKを貰うことができた。

 自分が発音している文字を丁寧に探し「オレンジ = イッズム」という記述になった。

 最後は、干し肉。同じようにジェスチャーを行う。

「ねおひひえつおつわひね?」

 さっきと比べると長い言葉が返ってきた。

 途中ジェスチャーを省略したが、しっかりと理解してくれたと思う。

 だから、この干し肉の正式名称を言ったのだろう。

「ねおひひつわつおひね?」

 首を振られ、もう一度教えてくれた。

「ねおひひえつおつわひね」

 やはりパッと覚えることは難しい。

 この確認作業を何度か繰り返し、何とか、メモできるまでの理解に及んだ。

「干し肉 = ねおひひえつおつわひね」

 これ単体では役には立たないだろうが、何れは役に立つだろう。

 リンゴとオレンジにしてもそうだ。たぶん一単語一単語では役に立つことはない。だが、きっといつか役に立つ。

 そんな時、ふと中学校の国語の授業でやった外国語研究を行った人の話を思い出す。

 確かその人は、わからない語学を研究するために本場に出向き、公園で遊ぶ子供たちを集め、メモ帳に絵を描いて見せ、子供たちの答えを聞いて、研究をしていたという。

 最初は誰でも知ってそうな絵を描き、答えを聞いていく。

 そして、頃合いになったら誰にも理解できない、ぐちゃぐちゃな絵を描き子供たちに見せる。すると子供たちは外国語で「なにこれ?」と言う。

 そこで知った「なにこれ?」を使って、色々なものを指し、子供たちに単語を聞いていった。

 その話を授業で聞き、凄さに驚いた記憶があった。多少、記憶違いはあるかもしれないが、概ね話の内容はあっているはずだ。

 今、リリアンと俺の状況は、その外国語研究を行った人と真逆ではあるが、実践するメリットはあるだろう。

 周りには自然しかなく、物がない。

 できればものが近くにあれば、色々なことを聞くことができる。

 だから村長に少し無理なお願いすることとした。

「村長。お願いです。一度短剣を返してもらえませんか。」

 いくら仲間と認めてもらったとは言え、あって数日の中人に武器を持たせるのはリスクが高い。たぶん、返すという選択はしないだろう。

 だが、反応は違った。

「あれ?まだ返してもらってなかったの?」

「え、返してくれるんですか!?」

「え、返して欲しいんじゃないの?」

 どうやら返すのを忘れていただけらしい。

「はい・・・返して欲しいです。他にもお願いがあるんですけど良いですか?」

「何だ?」

「縄でも、鍋でも、食器でも何でもいいのでかき集めてここに持って来て欲しいんです。」

 一瞬間があったが、村長は頷き快く受け入れてくれた。

「ワイエン、聞いての通りだ。あとは頼んだ。短剣は俺の物置の近くにあると思う。」

「えっ、はい・・・行ってきます。」

 ワイエンは、村長に逆らうことが出来ず、道具収集を命じられた。

「量が量なだけに、大変だと思うがよろしく頼む。」

「このぐらいお安い御用だよ。」

 そういうと、ワイエンは洞窟の中に消えていった。

 道具を持って来てもらっている間に、中人語の「なにこれ?」を聞きださなければいけない。

 取り合えず、そこら辺にある木の棒を取って、地面に何を書くかを考える。しかし、難しい形状のものは書けないし、かと言ってもいいものも浮かばない。

 被ってしまうが、リンゴもしくはメワドと言わせたいからリンゴを書くか。

 描くものも決まり、気合を入れるために少し太腿を叩いてからリンゴを描き始めた。

 果たして、小中高と美術が苦手分野だった俺の地上絵でリンゴと伝わるだろうか。デッサンの授業で描いたリンゴや手の点数が十点中四点しかもらえなかった記憶。不安だ。

 描きあがったリンゴは自分では十分にリンゴと認識できたが、不安は見事に的中。

 書き終わった絵を見て、リリアンには何が書きたかったの?みたいな顔をされ、村長にも微妙な顔をされた。

「リンゴ、メワド」

 補足をするために、本物のリンゴも持ち出し、交互に指を差す。

 リリアンは、笑い何かボソッといった気がした。

 何と言っているかわからずとも、下手とかそういう系統のことを言われたのは何となく察した。

 確かに絵は下手だし、今まで色んな人に下手だのなんだのと言われてきたが、何故か今回は、ちょっとした復讐心が芽生えてしまった。

 だから、お前なら書けるのか?と思いながらリリアンに木の棒を渡し、地面にリンゴを描くように指示した。

 すると、リリアンは立ち上がってものの十数秒程度で誰でもわかるリンゴを描いた。

 書き終えたその顔は得意げで少しイラッとするものがある。

 だが、そのぐらいは可愛いものであり、しかも例え簡単なリンゴだとしても、上手い絵を描いたならば、褒めなければいけないだろう。

「上手いよ~いい子いい子。」

 頭に手を乗せ、普通にナデナデをする。

 丁度ナデナデをしている時、言葉が通じないということを思い出し、意図することが通じたかと心配になった。

 ナデナデを終えて、手を離すと、少し嬉しそうにしていた。

 それを見てホッとし、木の棒を返してもらう。

 次も形状が簡単で、言葉を知っているオレンジを描くことにした。

 数十秒かけオレンジを描くもまたもや笑われてしまう。

 笑いながらリリアンは何か言っているが、イッズム以外の単語の意味はまるでわからない。

 話の流れから察するに「オレンジを描いたつもりだろうけど下手くそ。」とでも言っているのだろう。

 描かれたオレンジは、多少いびつな形はしている。だが、地面に描くのは難しいから仕方ない。と言い訳を下手なだけであることからは目を逸らす。

 笑い終わったリリアンは相当に乗り気で、早くその木の棒をよこせと言わんばかりに手を差し出してくる。

 木の棒を渡すとすぎに描き始め、数十秒で、柑橘類系の果物に見える絵を描いた。

 これはオレンジと言っても問題ない。

 一応、答え合わせも兼ねてオレンジを描きたかったのかを確認してみることとした。

「イッズム?」

 自信満々に頷く。この画才が少し羨ましい。

 またさっきと同様、ナデナデをすると喜んだ。

 そしてまた木の棒を返してもらい、次は何を描こうかを考える。

 肉を描くと単調になってしまう。でも裏をかいて、他の物を描いたとしても絵が下手な上に伝わらなければ、こちらの言葉と中人語が一致せずに終わってしまう。

 そこで思い出す。何かよくわからない絵を描くならば、今なんじゃないか。と。

 思わず、なにこれ?ボロっと出てしまうような絵を描かなければいけない。だが、なにこれ?と確実に言わせることができるほどの画力は持ち合わせていない。

 ならどうするべきか。思い付いた考えは一つ。

 なにこれ?と言いたくなるような状況を作ることだ。

 それを実行するためにまずはリリアンの肩を掴んで、後ろを向かせた。

 これで何を描いているかわからないというドキドキ感が生まれるはずだ。

 そして二つ目は、少し大きく絵を描くこと。インパクトを与えることで、声がポロっと出てくれるかもしれない。

 三つ目は、この世に存在しないモノを描くこと。ぐちゃぐちゃだけだとインパクトが足りないかもしれないと思ったのも要因の一つだ。

 最後に四つ目は、存在していなさそうな文字を数文字書くこと。これは、読めないということから言葉を引き出せるんじゃないかと考えた。

 多少画力が必要だが問題ない。難しそうなものを書けば直ぐに異物が完成する。

 リリアンに背を向けさせる以外の三つを織り交ぜた作品は時間が掛かり、一分を過ぎてもまだ完成しない。

「あれ何かいてるんですか?」

「わからない。」

 短剣や道具を持って来てくれたであろうワイエンと村長がそんなことを話している。

 しかも、ワイエンと村長も何を描いているかわからないという。

 これは好反応だ。

 最後にいい加減な文字を書いて完成させた。

 両手をはたきながら自分の作品の出来倍を確認する。

 なんだこれ?

 まぁ自分でもわからないものなんだ。リリアンもきっとわからないだろう。

 というよりもわからないでいて欲しい。

 そして、なにこれ?と言って欲しい。

 その願いを込めながら肩を掴み、体を反転させた。

 反転させたが、反応がない。

 まさかの失敗かと思い、表情を見るため前へと回り込む。

 表情を見ると、呆気にとられつつも笑みと可愛らしさを残した真顔をしていた。

「あねとみ?」

 こちらを見て絵を指差しボソっといった。

 声のトーンから言った言葉は何か怒られているような気にもなった。

 ごめん。

 そういいたくなる気持ちを抑えて、今の言葉を頭の中で反芻し、直ぐに紙に書いた。

 そして、持って来てもらった愛刀を初めて鞘から抜き、指を差し、頭の中で何度も反芻した言葉を言った。

「あねとみ?」

 このジェスチャーとその言葉を聞いたリリアンは真顔が段々と雪解けして行き、次第に楽しそうな顔になった。

 たぶんこの子は、凄く利口だから理解も早く、切り替えもすぐにできるんだろう。

 普通の人間なら意味不明な絵を見せられた後に、いきなり短剣を抜き、自分たちの言葉で「なにこれ?」と言われたら馬鹿にされていると思うだろう。

 リリアンは答える前にぴょんぴょんと撥ね出して、次にはしゃがみ込み、そして立ち上がると元気にこういった。

「ちわ」

 短剣は「ちわ」というらしい。

 いつも通り確認をして、合格を貰えたら紙に書く。

 その一見詰まらない作業もリリアンは嬉々として取り組んでいる。

 未知に触れる。

 それは何らかの効用を与えるのかもしれないと強く感じた。

 あの作業は短剣の後も続いた。

 短剣と一緒に持って来てもらった縄、鍋、皿、フォーク、スプーン、袋の六つと、自分のバッグの計七つ分検証したのだ。

 それぞれの結果は

 縄は「まを」

 鍋は「あじ」

 皿は「はま」

 フォークは「ソォッツ」

 スプーンは「タデ」

 袋は「なはずつも」

 バッグは「ザーヅ」

 という結果になった。

 今回検証したのはリンゴ、オレンジ、肉、短剣、縄、鍋、皿、フォーク、スプーン、袋、バッグの計十一個。

 たったの十一個しかわかっていないが、特に前半の労力はとてつもなく、相当のカロリーを使った気がする。

 そして最後に思い付く。この世界の通貨を出したら何というのかと。

 袋の中から全ての通貨を一枚づつ出して聞いてみる。

 1円(仮)は「ペレねせ」

 10円(仮)は「ペレびょぬ」

 100円(仮)は「ペレしゅつ」

 0.1円(仮)は「スンテねぇ」

 小数点以下が、スンテであることは皆目見当もつかなかったが、整数に関しては見立て通り円(仮)はペレが採用されていた。

 さらに、驚いたこともある「なんちゃらペレ」ではなく、「ペレなんちゃら」といった形で、単位を前に持って来ているところだ。他の単位はどうなっているかというのも今後の検討課題だろう。

 それにしても、後半戦は「あんとみ?」を覚えたことによって効率性は飛躍的に向上した。だが、十一個と通貨四枚しか確認していないのも事実、思っていた以上に時間が掛かった。

 そう考えると日本語と英語、日本語とスペイン語、日本語とポルトガル語などなど。

 現代で使われている言語は他にも数多く存在する。それを一つ一つ翻訳し、後世に伝えていったに人には頭が下がる思いになった。

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