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魔王によって彩る世界  作者: 伊草 推
10/23

第8節 ~衝撃~

 昼飯を食べ終わると約束通り、農作業へと向かう。

 向かう途中で、軽く自己紹介をされた。畑に向かうメンバーは自分を含めて3人。

 一人はデタさん。農業部門でリーダーをやっている。

 二人目はクンさん。この村の中では中堅らしい。

 自分も自己紹介をしようと思ったが自己紹介をする前に、昨日しっかり聞いたから。と止められてしまう。

 二人の自己紹介が済んだ頃には、畑の近くについたという。

 畑は五分程度歩いた場所にあった。

 畑に近づくにつれて徐々に木が少なくなり目的地に着いた頃には完全に木が拓け、その空間だけ青空が覗いていた。

 青空は拓けた木が作り出す綺麗な円形から覗かせている。円の中心にはポツンと赤いリンゴの実を付けた木が一本だけ植わり、神々しく、さんさんと日差しを浴びていた。そして、木の周りには放射状に畝立てされ、沢山の農作物が育つという不思議な空間がそこにはあった。

 広さに関しては広大とは言えないが、体の小さいゴブリンが五十人ぐらいであれば十分と言えるほどの広さだと感じた。作っている野菜は八百屋で見たような野菜や豆類が作られていた。

「ここは畑を作るために伐採したんですか?」

「いや、元々ここだけ拓けてて、土も良かったから畑にしたんだよ。それに真ん中にあるリンゴの木が神秘的だろ。アレに魅せられて作ったと言っても良いね。」

 確かに、ポツンとリンゴの木が生えているはシュールだが、神秘的な感じもする。

 それを中心に畑作をしても何ら効能はないだろうが、働く身からすれば気晴らしぐらいにはなるかもしれない。

「真ん中にリンゴの木が一本。不思議な光景ですけど、神秘的ですね。それに土が良かったってことは前も誰か畑作をやってたのかもしれませんね。」

「そうだな。そうかもしれないな。」

 何かがここには居る。

 そう感じ取れるそう思わされる場所。

 現代ならば観光地になってもおかしくない綺麗な場所に少し感動した。

「そういえば、今日は何をすればいいんですか?」

「少し面倒だとは思うが、水まきと収穫をよろしく頼む。道具はあそこにある鍋を使ってくれ。」

「わかりました。」

 広い畑をたった三人で水まきは時間が掛かるのでは?

 とも考えたが、提案しても何も変わることはないだろう。

 川はこの畑のさらに奥、歩いて一分程度のところにあり、往復の間はかなり暇になる。

 水まきを直ぐは初めて何か話すことはないかと探しては見たが、話すような話題はなくなにも思いつかなかった。

 そこからは無駄な抵抗はやめて黙々と、川と畑を行き来して水まきを行った。

 かなりの時間がたち、何十往復かしていると森の方からゴブリンが五人、畑に現れた。

 そのゴブリンたちは、鳥を獲ったらしく計四羽の鳥を持っていた。

「お前らやってるかぁ」

「やってるかじゃないよ。今日はお前らに二人取られてるんだから進むものもなかなか進まないよ。」

「いやぁでも、シュウヤがいるから良いだろ。そこで手伝ってるじゃないか。」

 呼ばれたので一応会釈する。

 話を聞くに、彼らは狩り部門で動物を獲って食料を調達するのが役目らしい。

 それで、狩りの修行をしたかった農業部門のやつを貸し出したがために人手が不足し、俺をスカウトしたらしい。

「それで、貸した二人はどんな成果を上げたんだ?」

「それが二人ともダメダメでさ。弓を射れば全く別の方向に飛ばすし、罠にかかった獲物も逃すし、剣を持たせてもうまく扱えずでもう散々だよ。」

「だからまだ早いって言っただろ。お前らは話を聞かないんだから。」

 そう怒られている先を見ると、見覚えのある顔つきで、初めて出会ったあの二人なようにも見えた。

「昨日はアイツを制圧できたから狩りもできると思ったんだよ。」

 片方が俺を指さしながらそう言い、片方がしょぼくれながら頷いた。

「それはシュウヤに敵対心がなかったからだろ。それに勘の鋭い野生の動物と勘が少し鈍い人間とじゃ全く違う。散々言っただろ。今日は実践してみてよく学べたか?」

 農業部門のリーダーがたしなめると、はい。と二人とも頷いた。

 指を差されてアイツを制圧できた。と言われたときは少しイラッとしたが、よくよく考えてみれば、短剣を抜けたところで勝てる見込みはなかった。

 まず、あの時、コケていなければ棒で頭を叩かれその時点で敗北。

 それに、棒を避けれたとしても短剣を抜くことができなかったあの状況で戦うことを選択していたら間違いなく無様な敗北を遂げていただろう。

「だからさ、俺らも大変だったわけよ・・・言いたいことわかるよね。」

 狩り部門のリーダー格が遠回しに何かを伝える。

「はいはいわかった。リンゴは一人一個くれてやるから、それで手打ちな。皆には秘密だぞ。」

 すると、狩り部門は手を叩いて喜こんだ。

「だが、イーペとテンバーお前ら二人は収穫がないし、それに迷惑を掛けた原因なんだからなしだ。お前らは迷惑かけた分、収穫作業をしなさい。あと狩り部門の残り三人は獲物を置いて体を洗いに行け。野菜に変な匂いが付いても困るからな。」

 残酷な宣告を言い渡された二人は明らかに落ち込みながら収穫へと向かった。

 一方、狩り部門の三人は獲物を置いて川の方へと歩いていく。

「シュウヤも水まきはもうすぐ終わるから行くぞ。」

 言われた通り、鍋をもって川へと向かった。

 川に向かう途中、少し前で農業部門と狩り部門がしっかりと喋っている。

 そこから読み取るに、やはり例え言葉が通じても人種が違うと気まずさというのがあるのかもしれないなと、少し落ち込んだ。

 だが、たった一日で打ち解けることができる人の方が珍しいかと思い直し、歩くスピードを少し早めた。

 川に行くと、狩り部門が下流で体を洗い、農業部門は汲んだ水を置いて雑談する。

 流石に一切話題に入らないのは、向こう様にとっても気まずいだろうと、気を利かせて必死に話題を探す。

「そういえば、さっきデタさんは、あの二人に狩りについて怒ってましたけど、狩りの経験はあるんですか?」

「そら狩りの経験ぐらいあるよ。各部門のリーダーは基本的に全仕事の内容が一通りできるからね。って言っても、リーダーは一番適性があるところに配置されるんだけどね。」

 リーダーは、各部門の専業プロフェッショナル割り当てられるものだと思っていたので意外だった。

 きっと、リーダーだけでも緊急時においても対応できるように仕事でもできるようにしているのだろう。

「そうだったんですね。じゃあ、狩り部門のリーダーさんも農業を経験したんですか。」

「当然。って言っても短かったけどな。それよりも、俺が農業部門だったときにデタさんが狩り部門のリーダーだったんだが、毎日のように肉が食えたし、本当にすごかったんだよ。だから、下手なこと言うとやられちゃうかも知れないぞ。」

「そんなことしないって。それにあの時は偶々獲物が多くいたから毎日とれただけで、運が良かっただけ。イロンも毎日のように取ってきてるじゃないか。」

「いやいや、そんなことはないっすよ。」

 その後も狩り部門リーダー、イロンのデタさんは凄いは続き、聞いている内に時間は過ぎて、狩り部門もすっかり、体を洗い流せたようだ。

 話の内容は主に狩りの内容だったが、主に弓の使いが上手かったという。敵に気付かれない距離から敵を射て乱獲していたのは伝説らしい。

 農業部門のもう一人のクンも頷いていることから相当にできる奴だったのだろう。

 帰り道も同じような話題が続いた。

「お前らにリンゴを渡すという約束をなかったことにしようかな。」

 一言ボソッと呟いてからは、イロンもすっかり静かになり、畑へと向かった。

 畑に着くとどこか、とてつもない違和感があった。

 畑に入る直前にデタさんは水を置き、手で姿勢を低くするように指示を出した。

 圧倒的な違和感の理由は、ただ一つ。中人が話しているからだ。

 周りを見渡すと中人は三人。全員小太りと言った感じの体系であり、見た目で言えば、まともな生活を送っていないようにも見えた。

 そして、その中で一番デカい奴は、大きな袋を肩に担いでいる。

「何しに来たんでしょうね?」

「たぶんあいつらは盗賊だ。畑でも荒らしに来たんだろう。」

 小声で尋ねると、デタさんが直ぐに返答をくれた。

 中人を見た狩り部門一行は、武器と獲物を置いた場所を目指し動き始める。

「あいつらを始末するために弓を取ってきます。お前らも行くぞ。」

「ちょっと待ってください。相手は殺さないでください。たぶん、殺しても良いことはありません。」

 小声で提言したものの、渋い顔をされてしまった。

 たぶんこれからあの中人たちは死ぬのだろう。

 目の前で人が死ぬ。そう思うと、どこか悲しい気分になった。

 それから農業部門は特にやることはなかった。リーダーは周りをよく見て次の手を考えているようにも見えるが、特にできることもないだろう。

 敵は三人。一人は畑で育っている作物を観察している。残りの二人は、畑で育っている作物などには目もくれず、リンゴの木の近くに荷物を置き、リンゴを採り、木を背にしてリンゴにかぶり着く。

 そのリンゴの木の奥をよく見ると、休憩している盗賊二人の後ろから農具を持ったあの二人がジリジリと距離を詰め、奇襲を仕掛けようとしていた。

「デタさん、あそこ見てください。あの二人奇襲しようとしてますよ。」

「そうだな。不味いな。近距離で気づかれたらあの二人じゃ勝ち目はないだろうな・・・イーベ、テンバーお願いだ。変なことをして気づかれないでくれよ・・・」

 その言葉は少し焦っているようにも聞こえた。

 それからは祈るように奇襲の動向を見ながら狩り部門をチラチラと確認していた。

 狩り部門の三人は、もうすぐ武器に辿り着けそうだった。一方の奇襲を仕掛ける二人は相当に距離を詰め、限界まで近づいていた。

 限界を察してか、デタは立ち上がり咆哮を上げ、リンゴの木まで駆けて行った。

 すると、盗賊三人組は驚きの表情を浮かべ、注目はデタ一点に絞られた。

 そのタイミングに合わせ、あの二人は休憩していた盗賊二人組を奇襲。思いっきり頭を叩き、その音はここまで聞こえるほどの鈍い音だった。

 この一瞬の出来事を見聞きした残りの一人は、他二人を置いて逃げ出した。

「弓を投げてくれ。」

 デタが狩り部門に指示を出す。

 狩り部門は一瞬も迷うことなく、デタの到達するであろう地点に弓を投げる。

 それをキャッチし、近くに刺さっている細い棒を抜き逃げ出した盗賊へと放った。

 だが、矢は腰当たりに浅く刺さる程度で軽い足止め程度にしかならず、盗賊はそのまま逃げて行った。

「あーあ、外しちゃった。」

 デタは少し残念そうにしながらこちらに戻ってくる。

 あの咄嗟の判断、クリーンヒットはしなかったものの命中する精度。

 伝説ともてはやされるのは伊達ではない。

「こっちは活躍できなくてすみません。にしても凄いですね。生で見れて感激です。」

「いや、仕留められなかったから恥ずかしいんだけどね。」

 デタは謙遜しながらリンゴの木へ向かう。

 一緒にリンゴの木へと向かい盗賊二人の生死を確認すると、気絶しているだけだった。

 一方、盗賊を倒した二人は共に肩を落とし、心ここにあらずというような表情をして座り込んでいた。

 それを見かねた狩り部門は盗賊二人を縛り、意識が戻ったとしても抵抗できないようにした。

 そして、デタは大きなため息をつき、息を吸った。

「いつまでボーッとしてんだ。」

 ビクッとして二人は意識を取り戻す。

「お前ら、あの状況が危険だと思わなかったのか。気付かれて反撃されてもおかしくなかったぞ。気付かれたときの対処は考えていたのか。」

 二人は何も言わずにうつむいた。

「それに周りは見えてたか?こっちはお前らを見えてたし、制圧するために気付かれないように武器の調達もしていた。」

「ごめんなさい。」

 うつむいた状態を維持して、覇気もなく謝った。

「まぁ気付かれなかったこと、盗賊二人を無力化できたこと、それにイーベ、テンバー、二人とも生きていること。この二つからお前らの実績を認めて、リンゴをくれてやろう。」

 それを聞いた二人は顔を上げ、次第に笑顔を見せた。

「よくやったな。」

 そう言いながらデタは、リンゴを渡した。

「ありがとうございます。」

 リンゴを貰った二人はお礼を言うと直ぐに頬張り喜びをあらわにする。

「だが、条件が一つある。二人でこのデカい方を村まで運ぶこと。わかったな。」

「はい・・・」

 既に食べた後、想定外だったのか少し嫌そうに了承した。

 それからは狩り部門にリンゴを渡し、主に休憩時間となった。

 残る一番の謎は、大きな袋だった。

「この袋なんなんでしょうね。」

 そう言いながら袋に触れると、人型をしていた。

「中身は人だろ。盗賊が人攫いをするなんて普通だからな。」

「確かに、人の形はしてますね。」

 中身を確認しようと袋を開けてみたが、ここで表に出すわけにはいかず、足だけを確認して、また袋を閉じた。

「村まで誰が運びましょうか。この大きな袋一つ分なら一人で持てますけど、流石に盗賊を一人で持つのは厳しいですかね。」

「なら我ら狩り部門の二人が盗賊のもう一人をもてば問題ないだろう。農業部門は、収穫した野菜を持たなきゃだろ。」

「そうだな。だが、野菜で何も持てなくなるわけじゃない。盗賊を運ぶ奴らの分の武器ぐらいはこちらで持とう。」

 何気ない問いかけにリーダーたちは一言二言で調整を済ませた。

 その後は、ちゃちゃっと野菜を収穫し、帰路についた。

 帰り道はこれといった会話があったわけではないが、盗賊のデカい方を運ばされていた二人は「もう無理」などと所々で弱音をこぼしていた。それも農業・狩り双方の全員から「鍛え方が足りないんだよ」と一脚され、置いて行かれた。


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