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絶対脱出してやるぞー。乙女の意地にかけて

「イモ掘って、タニシ採って、牛狩って焼肉じゃぁ」

野生の元OLともいうべき生活をしている。食べなければ死んじゃう。生き残るためには何でもするけどね。元はコールセンターの中途採用のOLなんだけどこうなってしまっては仕方ない。



 「大変申し訳ございませんでした。」

毎日毎日繰り返される言葉だ。私はコールセンターでヘッドセットをつけて訳の分からない苦情を承っている。元は大手の光学機器を製造していたのだけれど、人事課長にかわいがりという名のいじめを受け続け退職後にここに収まっている。


元はといえば

「どないなっとるの?」

「なんでやねん」

関西出身のエリート社員様である人事課長様は本社所属。私はグループ会社所属とはいえ派遣社員。課長様はヒラ社員とは違うんだよ。とばかりに関西弁丸出しだ。こちらはズーズー弁丸出しでバカにされている気もしていた。うんざりして部署移動を願い出て、光学機器の肝であるレンズを磨く職人さんたちと仕事をすることになった。


今までいた文系の仕事とは違い本当に腕ひとつで億のお金を動かす人たちの凄味をみるにつけて私の中の何かが変わってしまった・・・。つまりは彼らに魅了されたのだった。

勢いで人事課長に辞表を叩きつけるまでに時間はかからなかった。


辞めてすぐに気が付いてしまった。

「あ・・私に腕はないや・・・。」

仕方なく正社員として雇ってもらえる通信大手のコールセンターに就職することになったのだ。そして毎日謝罪をする日々。


コールセンターでは他社への苦情を受け付けマニュアルに従い対応するのだけど、実際に知らない会社の知らない業態に対する苦情を処理するのは難しいものだ。だって知らないもん。


車の構造なんてさっぱりわからないのに、整備士さんからの苦情も受け付ける。もちろんマニュアル頼みになるわけだけど、マニュアルにないものも当然出てくる。無理だった。苦情受付の私に苦情が来るまでに時間はかからなかった。


課長から呼び出され叱れること数度。もっと詳しいマニュアルを作ってほしいと要望するも反抗と受け取られ

「クライアントへの誹謗中傷は労働規約に違反します。厳しい処分も考えましたが、まだ入社したばかりという事情も鑑み、三か月後に稼働する宮古島支社へ移動をお願いします」

ようするにクビ宣告だったが、宮古島の響きの素晴らしさ。南国への憧れが私の中で膨れ上がる。

「はい。承りました。詳しい話を伺いたいのですが」

目を丸くして課長は説明をし始めた。断られるであろうと思い込んでいたのだろう。北国育ちの私にとって宮古島という言語はパラダイスと同義の響きにしかならないのであった。


美しい海 完璧なるパラダイスに乙女が降り立った。


オフィスと言われてたどり着いた先は一軒家だった。九州沖縄支社の人事担当者が迎えてくれたのはいい。辞令が書き換えられていた。

宮古島支社長

「あの?宮古島支社長というのは、お間違えではないでしょうか?」

人事担当の間島さんはさわやかな青年で仕事が出来る人のようだ。

「はい。本村さんがお一人で立ち上げるということで、支社長で間違いございません。人材集めと教育を担当していただきます。後日数名配属されるようですのでご準備をよろしくお願いします。うちのほうからも逐一連絡を取らせていただきますのでご安心ください。」


事務的にお答えになられる。

たぶん窓際族の筆頭に私は指名されたのだろう。電話一つ、パソコンが一つ。ガラーンとした一軒家が私の勤務先となるのだ。寮として指定されたのも一軒家。ここにのちに来るであろう人たちと同居するのだろう。


待てど暮らせど連絡も部下となるべき人も来ない。給与明細だけが届く。さすが大手である。なーんにも仕事してないのにお金は遠隔地手当など充実している。もともと係長以上の連中で有能な人なんてほぼいないと聞いていたから、無駄な人材だけは豊富なのだろう。その原資となるのは派遣社員やパート従業員といった人々からの搾取だ。派遣は割と高額を払っているのだけど彼らの懐に届くころには酷い額となるのだ。


それらの人々の苦悩を知りつつ働かず南国を満喫しているだけの私が給料を頂いている。

「きれいすぎて辛い」美しいこの島の夕陽が私の心をさらにえぐる。


支社長としての仕事は、ネットニュースを見ることである。地上波テレビもあるけど沖縄本島のニュースに何の感慨もわかない。私が慣れてないからなのかテレビでは伝えないニュースにくぎ付けになる。沖縄の海に他国が勝手に入ってきているというのを知る。

「ここ大丈夫なのかしら。」










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