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95 学園祭➄




 学園祭最終日。


 いよいよ五日に渡る学園祭も大詰め。

 最終日になると出し物に使う物資は大して用意しないから、飲食店系のほとんどが店じまいを始める。僕らの猫カフェもお昼頃に閉店だ。


 だからといって華岡学園祭の最終日が退屈になることはない。


 イベントホールでは吹奏楽部による演奏会、大人気バンドのライブイベント。夜になると外でキャンプファイヤーが行われたり、大きな花火が打ち上がったりと盛大に終わりを祝う。最後までイベントたっぷりだ。


「みんなお疲れさまー!」

「おつかれ~!」


 猫カフェの営業が終了すると、実行委員だった池永くんと野田さんが集まったクラスのみんなを労ってくれた。僕らの猫カフェは中等部の中でもかなり繁盛した方で、文句なしの成果といえる。

 最後まで仕切ってくれた二人には感謝だ。


「猫たちもお疲れさまです」


 僕は今まで働いてくれた猫たちにカリカリを与える。可愛い猫たちとの別れは辛いけど、また来年の学園祭で会えるかもしれないから期待しておこう。


「園田くん、クラスの中で一番猫たちに好かれてるにゃ」


 猫とじゃれ合っていると猫宮さんが声をかけてきた。


「そうですかね?」


「うん、間違いないにゃ。うちの猫たちが懐くなんて…園田くんって実は良い人?」


「今まで悪い人だと思われてました…?」


「まさか~にゃはは」


 笑ってごまかされた。

 確かに今までは五十鈴さんの隣を独占する悪者だったかもしれないけど、その印象ももう薄れつつある気がする。


「おーい園田くん、最終日だしみんなで学園祭回らない?」


 今度は池永くんたち数人の男子からお誘いがきた。こうしてクラスの男子からも普通に話しかけられるようになったし。


「ごめん…西木野さんから今日は総務委員の仕事があるから空けとけって言われてて」


「そうなんだ、残念だね」


 申し訳ないが池永くんからのお誘いは断るしかない。


 とはいえ…仕事って何だろう?

 今日はもう僕ら低学年の雑務はないはずだし、写真も撮りつくして後は現像するだけ。お昼が済んだら二階の空き教室に来いと言われたけど…


 取りあえず行ってみよう。





 集合場所である空き教室に行くと、そこには五十鈴さんしかいなかった。


「あれ、五十鈴さん一人ですか?」


「うん……」


「西木野さんは?」


「いない……総務委員の仕事はもう大丈夫だって」


 西木野さんが何か勘違いしてたのかな。だったら今からでも池永くんのお誘いを受けてこようかな。


「……」


 五十鈴さんが無言で僕の方をじっと見つめてくる。

 今日の五十鈴さんは予定とかあるのかな…いや、僕と同じで西木野さんに空けておくよう言われているから空いているはず。


 一緒に学園祭を回りませんか?


 そう誘ったら五十鈴さんは喜ぶかな、それとも困らせるかな。


「あの……園田くん!」


 僕が迷っていると、五十鈴さんが詰め寄ってくる。


「は、はい?」


「今日、暇……?」


「…今のところ予定はないです」


「じゃあ……一緒に、学園祭回らない……?」


「…」


 五十鈴さんから誘われた。


 ………


 五十鈴さんから誘われて嬉しく思う反面、先に五十鈴さんを誘えなかった自分が情けなくなった。僕に意気地がないせいで五十鈴さんに無理をさせてしまった。


「……」


 五十鈴さんは不安げに僕の返事を待っている。

 …後悔しても仕方ない。


「はい、一緒に回りましょうか」


「……!」


 そう答えると五十鈴さんは花開くような笑みを浮かべた。こうなったら全力で五十鈴さんを楽しませてあげないと。


「どこか行きたいところはありますか?」


 まず五十鈴さんに行きたい場所を尋ねてみる。


「……この、いろいろな作品が展示されてるところがいい」


 五十鈴さんはパンフレットを開いて僕に見せてくれた。

 この学校には様々な部活や研究会があり、中でもアート系の作品展示スペースは一つにまとめられている。場所は中等部校舎から徒歩数分の別館だ。


「面白そうですね。行きましょう」


「うん……!」





 こうして僕は五十鈴さんと二人きりで学園祭を回ることになったけど…こうなると心配なのは周囲の視線だ。今までは総務委員としてカメラを手に、西木野さんと三人で回っていたからこそ許されていた。


 五十鈴さんと二人きりで学園祭を回るなんて、全世界の男が憧れる所業。嫉妬されること必至だ。


 …と、思っていたけど。


「五十鈴さん、今度は従者を連れてるぞ」

「噂は聞いてたけど本当にいたんだな」

「こうして並ぶとしっくりくるな」


 ここにきてお嬢様と従者という誤解が幸いして、嫉妬の目を向けられることはなかった。いずれ解消したい誤解だけど今は上手く利用させてもらおう。


「着きました、ここが展示エリアですね」


 別館に入ると、様々な作品たちが僕らを迎えてくれる。


「粘土アート、サンドアート、キャンドルアート、ぬいぐるみ、フィギュア、騙し絵…面白い美術作品がたくさんありますね」


 クオリティもさることながら、とんでもない数と種類だ。流石は多くの天才を集めた華岡学校。ここを回っているだけで一日が終わってしまうほど見ごたえある。


「美術って奥が深いですよね」


「……何か作りたくなった」


 これらの展示物は僕ら美術部に大きな刺激を与えてくれた。

 面白い作品を見ていると、インスピレーションが沸き上がってくる。まさか平凡な僕に創作意欲が芽生えつつあるのか?


「何を作るか…そう考えると美術部って漠然としてますよね」


「……何を作れば美術部なんだろう?」


「後で杉咲先生に聞いてみましょう」


「そうだね……」


「せっかく美術部を立ち上げたなら、僕らも何か作りたいですね」


「うん……ここに展示できるような、立派な作品を……!」


 とは言ってもまだ未熟な僕らだから、アイデアが生まれるのは当分先になるだろうな。

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