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93 学園祭④




 学園祭四日目。


 今日の僕は猫カフェで受付をしている。

 いくら総務委員の仕事があるからって、クラスの出し物にまったく協力しないのはよろしくない。写真撮影のノルマもこなしたし、今日の受付担当の人に代わってもらった。


「じゃあお任せするね、ありがとう園田くん!」


 池永くんは仕事を引き受けた僕に感謝してくれる。

 学園祭で五十鈴さんが交友関係を広げたおかげで、クラスメイトの僕を見る目も変わった気がする。鈴木くんや木条くんともけっこう話せたし。


「園田くんは毎日忙しそうだね」


 受付でぼーっとしていると、城井くんと涼月くんが現れた。

 二人は僕の数少ない大事な男友達だ。


「城井くんはもう学園祭を堪能した?」


「それなり。面白い噂も集められた」


 満足げな城井くん。

 模擬店よりも噂で楽しんでるのか…相変わらずだ。


「涼月くんは楽しんでる?」


「………(別に…)」


「もしかして全然模擬店回れてないの?」


「………(興味ないから)」


「せっかくの華岡学園祭なのに…」


 涼月くんは相変わらずクールだ。

 もっと学校生活を楽しめばいいのに。


「お兄ちゃーん」


 すると今度は妹が現れた。


「うわ、本当にみんな猫耳つけてる」


 妹は僕らを指差して笑っている。

 この状況を身内に見られるの、すごく恥ずかしいな。


「何しに来たんだよ…」


「お兄ちゃんからチケット貰ったんだし、遊びに来たに決まってるじゃん。学校案内してよ~」


「店番してるから無理」


 妹に時間を割く暇なんて僕にはない。

 …あ、そうだ。


「涼月くんと一緒に行って来たら?」


「………(おい)」


 涼月くんは僕を睨んでいるけど、もう遅い。


「じゃあ行こう涼月くん!」


 妹に引きずられていく涼月くん。

 涼月くんは妹に逆らえない。弱点を突くようで悪いけど、女子と二人で学園祭を回る楽しさを涼月くんにもおすそ分けだ。


「園田くんって身内には容赦ないよね」


 城井くんは二人を見送りながら受付近くの椅子に座る。


「園田くんは今日、女の子と一緒に学園祭回らないの?」


「う…知ってたんだ」


「もちろん知ってるよ。噂になってるし」


「え、噂になってるの?」


「五十鈴さんの影に隠れてるけど、五十鈴さんグループの女子はみんな男子に人気あるんだよ」


 へぇ…でも分かる気がする。

 西木野さんはしっかり者で頼れるし、朝香さんや星野さんは男子が相手でも気軽に接してくる。木蔭さんは影が薄いから誰にも注目されないけど、よく気が回る優しい人だ。


「だから園田くん、そっち方面でも叩かれてたよ」


「ええ…五十鈴さんと距離を置けばヘイトが緩和されると思ったのに」


「いや、毎日女子とデートしておいてそれはないでしょ」


「…」


 まったくその通りだと思った。

 デートのつもりはないんだけど…





 しばらく僕は、城井くんと一緒に受付で時間を潰した。涼月くんを見送っておいてあれだけど、学園祭で騒がしい中こうしてのんびりするのも悪くない。


 模擬店の中にはデリバリーサービスをやってる飲食店があるから、注文してみようかな。


「そういえば城井くん、学園祭で起きたトラブルってどんなのがある?」


 噂好きの城井くんにそんな質問をしてみた。


 木蔭さんが追い求めている探偵からの挑戦状。あれから僕も協力して情報収集にあたっているが、まだ筆の魔女を見つけられていない。


 考えてみればこの手の推理は、学校中の噂を集める城井くんにもってこいじゃないか。


「トラブル?」


「例えば事故で閉店した模擬店があるとか」


「それならいろいろあるよ。一日目は大食い喫茶が在庫切れで閉店、二日目のスイーツ喫茶は配達にトラブルがあって閉店、中華喫茶では調理器具のトラブルで閉店」


 …ここまでは木蔭さんと見た広場の絵と一緒だ。どの模擬店も気の毒になるほど悲惨で災難な事故だった。


「それじゃあさ、今日にでも閉店しそうな模擬店に心当たりはある?」


「今日?うーん……」


「城井くんなら予想できるんじゃない?」


「いや…僕は噂を集める以上の能力はないよ。僕が知れるのは物事が起きた結果だけ。知った時には閉店してると思う」


「そうなんだ…」


 城井くんの情報網なら何かわかると思ったんだけど。


 いや、そもそも予測なんて出来るはずがない。

 一日目ならともかく、二日目と三日目の閉店は予想できない事故が原因だった。それとも天才探偵なら推理で予測できてしまうのだろうか…


「閉店には関係ないけど、今回の学園祭で起きた一番の騒ぎはファッションコンテストだよ。モデルだけじゃなくアイドルや女優まで飛び入り参戦して、学園一の美少女を決めるミスコンになってた」


「うわー…それってどうなるんだろう」


 まさに美少女のオールスター戦だ。

 華岡学校には多くの天才が集まるから、天才同士の衝突なんて日常茶飯事。学園祭でこんな騒動が起きるのも当然か。


「それで一位は誰に?」


「最後は女神のような謎の美少女が全てを持っていったらしい」


「女神?」


 比喩表現としてはこれ以上ない誉め言葉だ。

 それは五十鈴さんよりも美人なのか…


「…そういえば五十鈴さん、中にいないよね」


 僕は猫カフェの中を覗く。

 確か昨日クラス全員と模擬店を回り終えて、今日からは五十鈴さんの自由時間だと西木野さんが決めていたはず。


「五十鈴さんならイツメンと一緒にどこかへ行ったよ」


「そうなんだ」


 今日は五十鈴さんグループ全員で学園祭を回るのかな。

 学園祭はもう明日で終わってしまう。西木野さんは五十鈴さんとの時間を作れと僕に言っていたけど…どうするべきなんだろう。

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