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90 学園祭①




 学園祭一日目。


 開会式も終わり、いよいよ学園祭の開始だ。

 うちの教室には十匹の猫たちが自由に寛いでおり、とても学校の中とは思えない見事な猫カフェに仕上がっている。

 だがお客さんの数はそれなりだ…いくら猫の力があっても所詮僕らは中等部の出し物。大勢の人が押し掛けることはなかった。


「おーい園田」


 廊下から猫カフェの様子を見ていると、背後から猫耳をつけた西木野さんに呼ばれた。


 まあ…うちのクラスはみんな猫耳をつけてるんだけどね。


「ちょっと写真を何枚か撮りに行くか」


「そうですね、行きましょうか」


 総務委員の仕事である写真撮影。

 ノルマは写真五十枚くらい、中等部の様々な模擬店を撮ってきてほしいと指示されている。そんな大変な仕事じゃないから、早めに終わらせてしまおう。


「五十鈴さん、一緒に模擬店回ろう!」


 同じ総務委員の五十鈴さんは…星野さんを含めるクラス数人に囲まれていた。これから学園祭を回りに行くのかな。


「……」


 五十鈴さんは写真撮影に出る僕と西木野さんに気付いて不安そうにしている。


「こっちは大丈夫だから、みんなと回ってきな」


 そんな五十鈴さんの視線に気付いた西木野さんが笑顔で手を振った。僕も小さく頷いて五十鈴さんを安心させる。

 雑用なんかよりもクラスメイトと親睦を深める方が大事だ。


「……」


 五十鈴さんは申し訳なさそうに、静かに頷く。

 少し心配だけど、星野さんや出雲さんもついて行ってるから大丈夫だろう。

 

「じゃあ私が園田くんとゆーちゃんについて行く~」


 すると西木野さんの背後から朝香さんが現れた。


「はいはい…じゃあ三人で行くか」


 五十鈴さんの代わりに朝香さんが加わり、三人で学園祭を回ることになった。





 僕たち三人は中等部の別館、フード系の模擬店が密集している区間を回っている。飲食店は洋風、中華、インド…いろいろあるぞ。


 あ、ノルウェー料理まである。

 ノルウェーってトナカイを食べるんだ…なんか抵抗感あるな。


「それにしても、五十鈴さん成長したな~」


 そんな多彩な模擬店を写真に収めながら、西木野さんはしみじみと呟く。


「はい、何と言いますか…感慨深いものがありますね」


 僕も西木野さんと同じ気持ちだ。

 ついに五十鈴さんがクラスメイトと打ち解けることに成功した。まだまだこれからだけど、これまでの努力と苦労が報われて本当に良かった。


「二人共、五十鈴さんの保護者みたいだね~」


 そんな僕らを見て朝香さんが笑う。

 保護者か…的は得ているかも。


「私はそれほどじゃないけど、園田は寂しいだろ?五十鈴さんが独り立ちするのは」


 西木野さんは意味ありげな笑みを浮かべながら僕の顔を覗き込んでくる。

 確かに五十鈴さんがクラスのみんなと仲良くなれば、僕と話す機会は極端に減るだろう。芸術室で集まる必要もなくなるかもしれない。


 それでも…悔いはない。


「いえ、五十鈴さんに友達が増えるのは喜ばしいことですよ」


「ふーん…園田は大人だねぇ」


「それに寂しくないです。五十鈴さんのおかげで西木野さんや朝香さん、星野さんや木蔭さんとも仲良くなれましたし」


 五十鈴さんと仲が良いという理由で僕は周囲から敵視されてきたけど、五十鈴さんのおかげで増えた繋がりもたくさんある。

 いろいろあったけど、結果オーライだ。


「今の園田、五十鈴さんグループに囲まれてハーレム状態だからな」


「いや…ハーレムではないですよ」


「こうして両手に花で学園祭を回ってるし」


「…」


 言われて見れば…女子二人と一緒に学園祭を回るなんて、すごい贅沢なシチュエーションだよね。五十鈴さんグループとばかり関わって感覚が麻痺してたけど、僕ってかなり贅沢な学校生活を送ってる…?


「他に女がいるからって、五十鈴さんをほっとくなよ。学園祭を一緒に回る時間くらい作ってるんだろうな?」


 面白がってからかったかと思えば、急に真剣な表情に変わる西木野さん。

 今回は五十鈴さんとクラスメイトとの交流を第一に考えて、僕は距離を置こうかなと思っていたんだけど…


「作った方がいいですかね?」


「え、何の約束もしてないの…?」


 西木野さんは呆れていた。


「五十鈴さん内気なんだから、園田から誘ってやれよ」


「は、はい」


 うーん…誘うにしても、引っ張りだこの五十鈴さんにそんな暇があるかな。それに五十鈴さんってやりたいことは我慢せず伝えてくれるから、一緒に行きたい場所があったら事前に教えてくれるはずだけど…


「ねえねえ、あっちからいい匂いするよ~」


 五十鈴さんについて話し合っていると、急に朝香さんが僕と西木野さんの手を引っ張る。


「時間もお昼頃だし、行ってみよ~」


「え、朝香さん!?」


 がっちりと手を繋がれてしまった。

 こういうスキンシップを女子からされると、僕みたいな平凡男子は動揺するぞ…!


「諦めろ園田、希はマイペースなんだ…」


 西木野さんは無抵抗で朝香さんに引きずられていた。


 慣れたつもりになっていたけど、やっぱり女子と接するのは落ち着かないな…僕も五十鈴さんに負けないよう男子の友達を増やしていきたい。

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