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89 華岡学園祭




 この華岡学校では、様々な天才たちが学業に努めながら世間を賑わせている。

 華岡学校の学園祭は、そんな天才児たちが数百人も集まってお祭りを開くのだ。周囲が騒ぎメディアが取り上げるのは必然だろう。


 学園祭の入場チケットは、選ばれた者にしか手に入らないプラチナチケットだ。


 チケット入手には保護者であろうとも書類審査や個人情報のチェックが必須という徹底振り。中には不正で侵入しようとする悪質な者が後を絶たないが、だからこそ華岡学校のセキュリティは超厳重。監視カメラ、電子ロック、警備員など抜かりはない。


 天才が安心して自らの技術を高められる環境、それが華岡学校の魅力だ。





 学園祭当日、開会式。

 全学年の生徒たちはイベントホールに集まり、開会の時を待っていた。総務委員である園田くんたち三人はイベントホール二階に上がり、カメラを構えながら開会式の様子を見守っている。


「いや~ついに始まるな」


 西木野さんはいつもよりウキウキしていた。


「学園祭は五日間…全力で盛り上げないとですね」


 園田くんは真面目な顔を作っているが、そわそわと落ち着きがない。


「……」


 五十鈴さんも無表情だが興奮を隠しきれていない。


 このお祭りで興奮しない生徒はほぼいないだろう。学園祭は生徒誰しもが浮かれてしまう、華岡で最大のイベントなのだ。


「そういえば学園祭のパンフレット、目を通しましたか?」


 落ち着きのない園田くんは昨日配られた学園祭のパンフレットを取り出す。

 総務委員が作った学園祭のパンフレットは売り物に出せるレベルのクオリティに仕上がっている。厚みも100ページと大ボリューム、手にしただけで期待感が込み上げてくる一冊だ。


「ああ…読み終わるのに一時間はかかったわ」


 西木野さんも自分のパンフレットを取り出す。


「このイベントホールでもイベントは盛りだくさんよね。学生タレントモデルによるファッションコンテスト。現役学生アイドルのライブと握手会。動画投稿サイトで再生数一千万を突破した超人気学生バンドの新曲発表…」


「なんか…世間が注目するのも納得ですよ」


 話題性はもう学生レベルを超えている。

 もはや日本中が注目するといっても過言ではない規模のイベントとなっていた。


「私たちは総務委員という建前があるから、どのイベントにも行けるぞ。五十鈴さんはどこか行きたいところある?」


 西木野さんが五十鈴さんに尋ねる。


「……どこでもいいかな……どこも楽しそう」


 五十鈴さんにとって学園祭は未知の塊。

 くじ引きでどれを引こうか悩む時と同じで、どこに行けばいいのか見当もつかないようだ。


「クラスメイトのみんな、五十鈴さんと学園祭を回りたがっていましたよね」


 そこで園田くんが昨日の出来事を思い出す。

 最初に野田さんが「五十鈴さんと一緒に模擬店を回りたい!」と手を上げたら、まるでコントのようにクラス全員が便乗して手を上げた。


 そんな騒ぎを収拾させたのが西木野さんだ。


「猫カフェの留守当番は決まってるから、代わり番こで五十鈴さんと一緒に回れるよう予定を組んだよ。もちろん五十鈴さんの自由を尊重して制限時間は一時間だけ、行き先を決める権利も五十鈴さんにあるよ」


 クラスメイトと模擬店を回る約束をした五十鈴さんは大忙しだ。


「うん……楽しみ」


 五十鈴さんにとって向こうからのお誘いは願ってもないものだ。クラスメイトと打ち解けることは、今年中にやり遂げたかった五十鈴さんの大きな目標でもある。


(僕はなるべく邪魔せず、五十鈴さんとクラスメイトの時間を増やしてあげよう)


 そんな五十鈴さんの予定を聞いて、自分がすべきことを考え直す園田くん。

 この学園祭は五十鈴さんとクラスメイトの距離を縮められるまたとないチャンス。いつも五十鈴さんの隣にいる自分は距離を置くべきだと、園田くんはそう考えた。


「……」


 この時の五十鈴さんはベストな形で学園祭を迎えられたと満足していた。だが五十鈴さんは、学園祭三日目で気付くことになる。


 自分がこの学園祭で一番やりたいことが何なのかを。

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