88 五十鈴さんとクラスメイト
学園祭準備期間でのこと。
「……」
五十鈴さんは行動的になっていた。
クラスの仲間が作業で困っている時も、率先して手伝いに行った。
「……!」
「あ、ありがとう五十鈴さん」
まだ声を出す勇気がなく、日本語不自由という誤解は解消されていない。それでも五十鈴さんは頑張っていた。
そういった頑張りを積み重ねることで、クラスのみんなの五十鈴さんを見る目も変わる。お嬢様にお手伝いはさせられない…そんな誤った考えは既に解消されていた。
「五十鈴さん、これ一緒に取り付けよう!」
今まで五十鈴さんと関わる機会がなかったクラスメイトにとって、学園祭準備期間は絶好のチャンス。陽気な性格の猫宮さんや相沢さんはぐいぐいと距離を詰めてゆく。
「……!」
五十鈴さんの表情は相変わらず硬いが、いい感じでクラスに馴染めていた。
※
「いい感じで馴染めてますね」
「うちのクラス、軽いノリの奴が多いからな…打ち解ける難易度は結構イージーだぞ」
そんな五十鈴さんの様子を、園田くんと西木野さんは保護者のような目で眺めていた。
「園田も頑張らないとな」
「う…」
西木野さんに言われ冷や汗を流す園田くん。
園田くんは五十鈴さんと親しいという理由だけで、学校中から嫉妬されている。なのでクラスメイトとも馴染めていない。
「やれやれ…」
西木野さんは呆れた笑みを浮かべ、教室を出ようとする。
「おーい鈴木の片割れ、木条くん」
そこで西木野さんは教室にいる男子を何人か呼び出した。
「廊下に出した荷物を空き教室まで運ぶぞ。園田も来いよ」
「え?は、はい」
その中に園田くんも入れる。
廊下には出し物に使わない道具、一人では持ち上げられない備品などが残ったままだ。
「…三人で運びましょうか」
五十鈴さんの頑張る姿に感化され、園田くんも勇気を振り絞る。
「お、おう…」
「ふ…任せるがいい」
ぎこちないながらも重たい荷物を協力して持ち運ぶ三人。
ちょっとしたお膳立てをすれば、園田くんも男子たちと馴染むことが出来る。それを西木野さんは感じ取っていた。
「男なんだからキビキビ働けよ~」
荷物を運ぶ男子たちを見送る西木野さん。
「…ようやくクラスがまとまってきたな」
西木野さんは文化祭の準備をするクラスメイトを見てしみじみと思うのだった。




