83 学園祭の会議
今日は生徒会と全学年のクラス委員が集まって学園祭の会議が行われた。
何度も言うけど、華岡の学園祭は他の学校とは違う。
まずこの学校はクラスの出し物が必須ではない。
華岡学校には部活、クラブ、研究会が星の数ほど存在する。学園祭はそういった課外活動をするグループを中心に出し物を出店する。個人で出店することも許されており、多少無茶な内容でも審査が通れば模擬店を出せる。
もちろんクラス内で出店することも可能だ。
でもここは個性的な天才が集まる華岡学校。バラバラな才能を持つ生徒が集まって出し物を行っても、ちぐはぐになる場合が多いらしく強制はしていない。
出し物をやらない生徒は、学園祭を盛り上げる課題が与えられる。
課題といっても大したことはなく、学園祭を回り出店を利用するだけでいい。最低でも十店舗は利用するのが決まりで、もしサボったら罰則が科せられてしまう。
そして僕らクラス委員は学園祭の時だけ“総務委員”となり、学園祭全体のサポートに回る。ただ雑務は強制ではなく、クラス内で別に学園祭実行委員を推薦して仕事を押し付けることも可能。
総務委員は出し物の審査、イベントでの裏方サポート、予算計算、学園祭のパンフレット作り、写真撮影などなど雑務は多い。忙しそうに見えるけど総務委員の人数は多いし、上級生が手慣れているから僕らはそこまで忙しくはならない。
今は学園祭の禁則事項やら、衛生面での注意などの悦明を受けている。学園祭の規模が大きいだけに、その辺りは厳重だ。
因みに今日の会議に五十鈴さんは連れて来ていない。
最近は友達も増えて学校という環境に怯えることがなくなったけど、流石に上級生が多く集まる会議に赴くのは無理だった。
後で会議の内容を五十鈴さんに伝えないと。
※
会議が終わり僕は会議室を後にしようとする。
「ねえ、きみが一年の園田くんだよね」
その時、誰かに呼び止められた。
「はい?」
相手は今まで面識のない高等部の先輩だった。
なんの用だろう…
「学園祭でファッションコンテストやるんだけど、よければ五十鈴さんも誘ってみてくれない?」
その人に便乗して、他の先輩方も集まり始める。
「うちでやる演劇の役者に是非とも五十鈴さんを出演させたい!」
「自分は写真部なんだけど、五十鈴さんをモデルに何枚か撮りたいんだ!」
「手芸部ですが、是非とも五十鈴さんに着せたい服が…!」
凄い勢いで先輩たちが詰め寄ってくる。
そりゃそうか…学園祭は別学年、別クラスの生徒にとって五十鈴さんと関わることが出来る数少ないチャンスだ。しかも五十鈴さんの美貌は催しを盛り上げるにもってこいの人材、出し物に全力な先輩方は黙っていられないだろう。
でも今の五十鈴さんに上級生の依頼をこなすのは酷だ。
どう断ればいいのか…
「はいはい。失礼ですが先輩方、そこまでです」
そこで間に入ってくれたのが、同じクラス委員の西木野さんだ。
「その件は後日話し合うことにしましょう。五十鈴さん本人の意思が第一ですからね」
大勢の先輩を前にしても、西木野さんは毅然とした態度で振舞いこの場を収めてくれた。僕は西木野さんに引っ張られ、なんとか会議室を脱出することが出来た。
「ありがとうございます、西木野さん」
「いやー五十鈴さんのジャーマネは大変だな」
西木野さんは楽し気に笑いながら僕の背中を叩く。
「従者の次はマネージャーですか…」
それにしても、僕は五十鈴さんの側近として学校中で有名になっているんだな…
先輩方が五十鈴さん本人に直接お願いしに来ないのは、まだ五十鈴さんが日本語不自由な怖いお嬢様という誤解が解消されていないからだろう。それか五十鈴親衛隊から圧力がかかっているかだ。
「さぁ気を取り直して、教室に戻ったらクラスの出し物を決めないとね」
「そうですね…課外活動を優先する人もいるでしょうし、話し合いは長引きそうです」
これから教室に戻ってクラスの出し物を決める。
華岡学園祭は部活、研究会の出し物がメインだ。
だからクラスでの出し物は無理に決めなくてもいい。それでも可能であれば出し物を開きたい、僕らのクラスはその意見でまとまっている。
「その辺は学園祭実行委員の池永と野田ちゃんに丸投げして、私らは傍観してよっか」
西木野さんは気楽にそう言う。
「はい、僕ら総務委員は別の仕事がありますからね」
芸術室で話し合った時に決めたのだが、五十鈴さんは実行委員をやらず総務委員として活動するつもりだ。五十鈴さんが今回の学園祭でやりたいこと、その役割を今回の会議で確保できた。
後は学園祭実行委員の池永くんと野田さんに任せて、僕らはクラスの出し物決めを見守っていればいい。




