77 体育祭①
ついに始まった体育祭。
初めて華岡のイベントを目の当たりにしたけど、やっぱり規模が違う。
高等部が手掛けた装飾の数々が学校を彩り、今までの学校とはまるで別世界に変わっていた。来場者は保護者や学校の卒業生など、かなりの人数が来ている。しかも学校の入り口では食べ物などの屋台まで展開されており、まさにお祭り状態だ。
体育祭だけでこれだけ力を入れるなんて…
「さあ、私らは傍観してばかりはいられないよ」
西木野さんの言葉で僕は我に返る。
僕、五十鈴さん、西木野さん、葵、超野くんは実行委員側だ。
今は入口で来場者に今日の予定が書かれたパンフレットを配っている。他にも雑務はてんこ盛りで、のんびり競技を観戦する暇は僅かしかない。
そして…いつも通り五十鈴さんは周囲の視線を集めていた。
「…な、なにあの綺麗な子」
「あれで中学一年?嘘でしょ…?」
「またすげー生徒が入学したな」
多くの人が足を止め五十鈴さんを見物している。
人の多い所に五十鈴さんが現れると、確実に人の流れを止めてしまうのは考えものだな。誘導係の人には申し訳ない。
「……」
多くの視線を集める五十鈴さんはやはり無表情で緊張している。
でも…その表情はいつもより楽し気だ。
初めての大きな学校行事、それは五十鈴さんが入院中にずっと夢見てきた瞬間だ。夢を叶えた五十鈴さんの心境は僕なんかじゃ想像もできない。
華岡体育祭、いよいよ開催だ。
※
パンフレットを配り終えた僕らは、開会式が始まる前にうちのクラスが集まる場所に戻らないといけない。目印は僕と五十鈴さんで作った看板だ。
「ついに決着をつける時が来たわね!向日葵!」
その途中、一人の少女が僕らの前に立ちふさがる。
前髪をヘアピンで開け、広いおでこが特徴的の活発そうな人だ。体操服には一年と書かれているから、同学年で別クラスの女子だな。
「お、朽木ちゃんだ。いい勝負しようね~」
葵の知り合いらしい、仲良さげに手を振っている。
だが向こうはやけにピリピリした様子だけど…
「仲良さそうに話しかけんな!」
その朽木さんはやはり葵に対して敵意を剥き出しにしている。
「お前の知り合いなんだよな?」
僕は小声で葵に事情を聞いてみた。
「うん。朽木明日香ちゃんはソフトボール部で、唯一の一年生レギュラーなんだ」
「向こうはお前を敵視してるみたいだけど、なんかしたのか?」
「ううん、普通にソフトボールで遊ぶ仲だよ。仮入部の時にも対決したし、体力測定の時も競い合ったよ」
「…それでその対決、勝ったのか?」
「もちろん私が全勝!」
葵は悪びれることなく言い放つ。
なるほど…大体の事情を察することが出来た。
「私の華々しいデビューに泥を塗ったあんたは許せない!」
朽木さんは子供みたいに地団駄を踏んでいた。
恐らくソフトボールの天才で周囲から期待されていた朽木さんは、華岡学校入学で華々しくデビューする予定だったのだろう。それを葵というダークホースがめちゃくちゃにしたと。
葵はスポーツに一生懸命な人との相性が悪いからな…小学生時代も同じようなことが何度かあったし。
「最後の種目、リレーに出るのよね。そこであんたに敗北をプレゼントしてやるから覚悟しなさい!」
そう言い残して朽木さんはこの場を去っていった。
「厄介なライバルになりそうだな」
わかっていたけど、最後のリレーに出る人は運動部のエース級ばかり。対してこっちの幼馴染四人組は誰も運動部に所属していない。
本当に大丈夫なのだろうか。
「ふふふ…ライバルが多いと燃えるでしょ?」
対して葵はいつまでも能天気だ。
このスポーツバカめ…
「まあ、怪我しないように頑張りな」
「サイドトライセッピス!君らならきっと勝てるさ!」
西木野さんと超野くんがマイペースに応援してくれている。
なんだか僕も緊張してきた。
五十鈴さんほどではないけど僕だって一般人だ、人並みには緊張する。それも最後の競技で五十鈴さんや葵と一緒に走らないといけないなんて…
「園田くん……がんばろ」
緊張する僕を見て五十鈴さんが肩に触れてくる。
う…まさか五十鈴さんに心配されるなんて。
「…はい、頑張りましょう!」
僕は自分を奮い立たせた。
もうやるしかないんだ、覚悟を決めよう。




