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74 体育祭の装飾作り




 平日の放課後。

 クラス委員の僕らは教室に残って体育祭に使う装飾作りに取りかかっていた。体育祭実行員の葵と超野くんは進捗報告で職員室に行っている。


「ふう…毎日居残りは堪えるね~」


 西木野さんが疲れた表情で肩を回す。

 何日も放課後残って単純作業の繰り返しだ、疲れも溜まってくる。


「よし。ノルマの飾り付け、作り終わりました」


「……!」


 僕と五十鈴さんは順調に装飾作りをこなしていた。


「作業が早いな…二人共」


 西木野さんは完成した装飾を確認しながら感心している。


「こういった単純作業は嫌いではないので」


 平凡な僕は、努力も才能も必要ない単純作業が好きだったりする。


「同じく……」


 五十鈴さんも疲れた様子はなく、むしろテンションが上がっている。根が凝り性だし、どんな作業も新鮮だから楽しくて仕方がないのだろう。


「園田くん、おつかれ」


 作業が一段落すると、体育祭実行委員の超野くんが爽やかな笑みを浮かべながら労いに来てくれた。向こうで葵も五十鈴さんの肩を揉んでいる。

 二人共、進捗報告から戻ってきたのか。


「超野くんもお疲れさま」


「うむ…」


 唐突に超野くんが僕のことをジロジロ見始める。


「ど、どうかしたの?」


「…近くで見て確信した。君は良い筋肉をしているね」


「え?」


 急になんだろう…筋肉?

 僕の体なんて葵との運動で自然についた筋肉しかないはずだが。


「運動に特化させた機能美のような筋肉だ。君の筋肉なら体育祭で大いに活躍できるだろう」


「そうかな…超野くんの方が筋肉すごいし、いろんな競技で活躍しそうだけど」


「僕の筋肉は運動に適してないのさ」


 運動に適している筋肉って何だろう…筋肉も奥が深いんだな。


「だから僕はみんなが期待するような成果は出せないさ」


「そんなことないよ。超野くんには綱引きや騎馬戦みたいな力比べで頼りにさせてもらうよ」


 それだけの筋肉が無駄になるはずがない。

 超野くんには力比べの競技で大いに活躍してもらう予定だ。


「…モストンマスキュラー!」


 唐突に超野くんがポーズをとると、筋肉が膨れ上がり着ていたジャージがはじけ飛んだ。なんだこの筋肉…というかなんだこの演出!?


「園田くんに褒められると、なんだか力が湧いてくる!君は素晴らしい縁の下の力持ちだね」


 縁の下の力持ち…そんなこと言われたの初めてだ。





 数日後。

 作業は順調に進み、残す仕事も僅かだ。


「さて、後はうちのクラスの看板作りね」


 西木野さんが最後の仕事に手を付ける。

 看板は僕らのクラスが集まる場所の目印に使われる。僕らの組である赤を基調にすれば、好きなデザインで作っても構わないとのことだ。


「…あれ?」


 西木野さんは手に取った看板を見て首を傾げる。


「もう出来てる…誰がいつの間に作ったのよ」


 そう…無地だったはずの看板はもう完成していた。


 実はそれ、僕と五十鈴さんで作ったのだ。

 美術部としてどうやって体育祭に貢献できか悩んでいた僕と五十鈴さんは、この看板を作る作業を見て同時に閃いた。それから僅かな時間を見つけて芸術室に集まり、少しずつ看板作りを進めていた。


「おお、見事な看板だね!」

「うちのクラスに隠れた芸術家でもいたのかな」

「作り手の体育祭に向けた意気が伝わってくるね!」


 みんなが看板を絶賛してくれてる。

 何せ杉咲先生監守の元、芸術室にある様々なアイデアを参考にして作ったんだ。まだ継ぎ接ぎだらけのつたない作品かもしれないけど、最初の作品にしては悪くない出来になった。


「…」


「……」


 僕と五十鈴さんはこっそり親指を立てて喜び合う。

 美術部最初の活動、悪くないんじゃないかな?

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