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73 美術部の活動




 体育祭の話し合いが一段落したら、僕は夏休みの出来事を思い出す。


「そう言えば僕ら、美術部になったんですよね」


 夏休みに杉咲先生から荷物運びを頼まれた時、流れで僕と五十鈴さんは美術部を立ち上げることになった。


「杉咲先生は今日来るんですか?」


「ううん……来れるか分からないって」


 五十鈴さんは首を横に振る。

 先生は毎日ここに来るわけではない。


「美術部として、どんな活動をします?」


「うーん……」


 レタリング検定の勉強をするだけだといつも通りだし、この芸術室に置いてある作品みたいなのを作れればいいんだけど…


 僕は近くに置いてある絵を手に取る。

 何だこれ…一生描ける気がしない。華岡学校の卒業生が描いたのなら、きっと人間国宝級の天才が手掛けたのだろう。


 こんな芸術品じゃなくて、もっと簡単な物を作りたいな…


「…そうだ、クラス委員の仕事で体育祭に使う道具作りがありますよね」


 中等部一年の仕事は、細かい飾り付けや応援用のボンボン作りなどだ。


「美術部として……綺麗な飾り付けを作りたい……!」


 五十鈴さんが意気込む。

 それはとても美術部らしい活動だ。


「とはいえ難しいお題ですね」


 僕も、恐らく五十鈴さんも美術は未経験。

 二人だけで体育祭を彩るアートが作れるだろうか…


「…ん?」


 絵が置いてあった場所に、綺麗な装飾が詰まったダンボールを発見した。


「これ、イベントの飾り付けですよね」


「すごい作りが凝ってる……」


 この倉庫には卒業生の作品以外にも、イベントで使われたであろう小道具が多く保管されている。そのどれもが見事な作品だ。


「これを流用できればいいんですけどね…」


「うーん……」


 僕の案を聞いて不満げに唸る五十鈴さん。

 そりゃそうか…新しい物を作らず過去の作品に頼るのは美術部っぽくない。


「利用してもいいですよ~」


 すると背後から声がかかる。


「杉咲先生…」


 ビックリした…いつの間にか美術部顧問の杉咲先生が来ていた。


「夏休みの時に言ったでしょ?芸術室にある物を有効活用して学校行事に役立ててねって。この作品たちが埃を被って終わるのは忍びないからね」


 杉咲先生は過去の作品を撫でながら寂し気に微笑む。


「新しい物を作らなくていいんですか?」


「そうね…ならここにある作品たちを生かして、新しい物を作る参考にしたら?」


「参考にですか…」


 なるほど…ここにある素晴らしい作品たちを参考にすれば、僕らでも良い物が作れるかも。でもそんな模倣みたいなことしていいのだろうか?


「いいんですか……?真似して、模造したりして……」


 五十鈴さんも同じ考えだった。


「確かに一から十まで模造するのは良くないけど、芸術家の卵はまず好きな作品を真似するところから始めるのよ。二人はまだ学生なんだから、いろんな人の技術やアイデアを学んで自分の引き出しを増やしていきましょう」


 …杉咲先生から、とてもためになる話を聞けた気がする。


「………………」


 話を聞いた五十鈴さんは芸術室に置かれている様々な作品を見回した。


 ここは文字通りアイデアの宝庫。

 僕だって才能がなくとも学ぶことは出来る。この絵だって描けなくても、色合いやデザインを参考にして体育祭を彩るアートを…


「…ふふ、新しい美術部は勤勉でいいわね」


 杉咲先生は嬉しそうに僕らの活動を眺めるのだった。

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