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72 体育祭で勝つには




 体育祭で出場する競技を決めたその日の放課後、僕と五十鈴さんは芸術室に集まった。


 芸術室は時間を見つけてこつこつ整理している。

 だが夏休みに荷物移動をしたせいで夏休み前よりごちゃごちゃしていた。しかも教室の中に物が入り切れないから、廊下にまであふれ出している。杉咲先生の物を捨てられない性格が直らないと、この五階ががとんでもない事になりそうだ。


 まあこっちの問題は今はいい。

 今の問題は体育祭の種目についてだ。


「それにしても、なんで葵は五十鈴さんをリレーに参加させたのか」


 何度も確認するようだが、五十鈴さんは退院してまだ半年しか経っていない。体力と運動能力は人並み以下だ。

 どういうつもりなのか葵に問い詰めてみても『大丈夫!私の目に狂いはないから、幼馴染四人組でがんばろう!』と言って逃げられてしまった。


 幼馴染四人組って、五十鈴さんにとっての幼馴染は僕だけだろ………いやいやそうじゃなくて。


「五十鈴さんは体力測定の50メートル走の記録何秒でしたっけ?」


「……13.5秒」


 うーん…やっぱり速いとは言えない。

 ましてやリレーは最後に行われる重要な競技、各組から俊足の四人が選ばれるだろう。そんな戦いに参加して五十鈴さんは大丈夫なのかな。


「がんばろう……幼馴染組で……!」


 だが五十鈴さんは拳を握って意気込みをアピールしていた。葵に幼馴染四人組って呼ばれてから、ずっとテンションが高い気がする。


 …僕一人で悩んでても仕方がないか。


「はい、頑張りましょう」


 五十鈴さんはやる気になっているし、葵も無策で五十鈴さんを指名したわけではないだろう。ここは二人を信じてみよう。


「確認したいんですけど…五十鈴さんのノートによると、目指すは赤組の総合優勝でいいんですか?」


「うん……みんなで力を合わせて勝ちたい……!」


 クラスが一丸となって一つのことを成す…まさに青春だ。

 やりたいことノートには一切の妥協なくやりたいことが綴られている。五十鈴さんもノートを一緒に書いたアメ先輩とやらも、かなりの完璧主義のようだ。


「そうはいっても、勝てるかは運次第ですけどね」


 多人数で競い合う体育祭だから、いくら個人で頑張っても勝てるとは限らない。体育祭は中高合わせて六回のチャンスがあるけど、運が悪ければ一回も優勝できない可能性もある。


「やっぱり……難しいかな?」


 五十鈴さんが不安がっている。


「いえ、今回はいけるかもしれません」


「……?」


「うちのクラスだけでも葵、涼月くん、超野くんといった戦力が揃っています。あの人たちなら確実に勝利をもぎ取ってくれますよ」


 この華岡学校には数多くの天才が在籍しており、中には葵のようなスポーツの天才も潜んでいる。どの組が天才を多く獲得しているかで勝敗は決まる。

 僕の知っている限りだと、葵と涼月くんは大当たりだ。


「そうだ、葵から休みの日に練習しようって誘ってましたよ」


 こういった体育会系のイベントなら葵は頼りになる。


「うん……練習、したい!」


 五十鈴さんの出る種目は二人三脚とバトンリレー。

 少しでも勝率を上げるには練習あるのみだ。


 五十鈴さんが心配だけど、僕もしっかり練習しよう………間違っても僕が敗因にならないようにしないと。

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