67 休み明けの計画
僕らは五十鈴さんの部屋に通された。
「ここが五十鈴さんの部屋か…」
部屋の中にはベッドに勉強机、テレビにテーブルとけっこう広い。特徴的なのは、そこかしこに置かれているくまのぬいぐるみだ。
「おお、くまがたくさん」
「くま…好きなんだね」
西木野さんと木蔭さんは飾られてるくまのぬいぐるみをもふもふしていた。
大小様々なくまのぬいぐるみにも目を惹かれるけど…僕はテレビの近くに置いてある夏祭りの戦利品、新型ゲーム機が気になる。
「くじ引きでゲーム機が手に入ったのは本当にすごかったですよね」
「うん……遊べる物を部屋に置けて良かった」
「ああ、それでくじに挑んだんですか」
友達を自分の部屋に招待しても退屈させないよう、遊べるものを確保したくてくじに挑んだのか。結果オーライだったからいいけど、流石にくじは無謀だったよ五十鈴さん。
「次にゲームで遊ぶ時は、五十鈴さんの家に集まるのもいいですね」
「うん……でもゲームソフトがまだない……」
「今度いろいろ貸しますよ。それに無料ゲームならすぐにでもダウンロードできます」
「どうやって……?」
「えっとですね…」
僕はゲームの電源を入れ、五十鈴さんはその様子を観察する。
「こらー今回は勉強会でしょ」
西木野さんが後ろから僕と五十鈴さんの頭に軽いチョップをかます。
「う……」
「う……」
二人して西木野さんに怒られてしまった。
今回は勉強目的の集まりだから、ゲームは別の機会だな。
※
しばらく僕らは真面目に宿題の予習をした。
「ふう………うん、みんな問題なさそうだね」
ある程度の範囲を見直し終え、西木野さんが一息つく。
この場に集まったみんなは前期のテストも悪くなかったし、ここまで念入りに予習していれば休み明けテストは問題ないだろう。
「問題があるとすれば、この場に集まらなかった面々ですね」
来なかった葵、星野さん、朝香さんは大丈夫だろうか。
三人はテストの平均ギリギリだったし。
「希が心配だなー…どうせ今日は勉強が嫌で来なかったんだろうし」
「葵も同じでしょうね…夏休み明けが不安です」
西木野さんも僕も、世話の焼ける幼馴染を持つと苦労する。
「もうすぐ終わりなんだよね、夏休み…今年は楽しかったな…」
木蔭さんは寂し気に呟いた。
「そうね、私もこんなに楽しい夏休みは初めてかも」
西木野さんが頷く。
今年の夏休みは濃密だったな…僕も少し名残惜しい気持ちになる。
「……」
五十鈴さんも物悲しそうに俯いている。
部屋の中に、少ししんみりした空気が流れた。
「…そうだ、夏休みが明けたら体育祭の会議があるんだよね」
すると西木野さんがクラス委員の話題を持ち出す。
「体育祭……!」
体育祭と聞いて目を輝かせる五十鈴さん。
切り替え早いな…
「体育祭実行委員、クラス委員が決めていいんですよね」
僕はクラス委員の役割を思い出す。
華岡学校には数多くの行事があり、その実行委員はクラス委員が勝手に決めていいことになっている。この場には丁度良くクラス委員が三人揃ってるから、今のうちに話し合っておこう。
「誰に任命します?」
「男子なら中山くん、女子は向日ちゃんでいいんじゃない?」
あっさりと適任者を決める西木野さん。
確かにスポーツ好きの葵なら喜んで引き受けるだろう。それとあの筋肉ムキムキの中山くんは…話したことないから分からないけど、体を動かすのは得意そうだ。
「学園祭も多忙になるらしいから、早めにやること決めとかないとね~」
「学園祭……!」
学園祭と聞いてさらに目を輝かせる五十鈴さん。
「華岡学園祭、テレビ局とかも来るらしいよ…」
木蔭さんの言う通り、華岡の学園祭はかなり有名だ。
華岡には多くの天才が在籍しており、その才能は何度もメディアで取り上げられている。そんな天才集団が学園祭で大暴れするんだ、世間が注目しないはずがない。
「学園祭実行委員、やってみたい……それと、模擬店も全部回りたい……」
そう言って五十鈴さんは手を上げた。
その二つの願いは、確かやりたいことノートに書いてあったな。
「うーん…一度に両方は厳しいと思うよ」
「そうなの……?」
「華岡の出し物ってすごい数あるから、開催期間三日をフルに使わないと回り切れないと思う。実行委員は仕事の量が半端ないから、模擬店を回る暇を見つけるのは厳しいよ」
「……」
西木野さんの言う通りだ。
「二頭追うものは一頭も得ずですよ、五十鈴さん。目標は定めた方がいいです」
「むぅ……」
五十鈴さんは苦悩している。
何も一年でやりたいことを全て達成する必要はない。中高と六年あるんだから、一つ一つ挑めばいいんだ。
「もしも~し、スイカを持ってきたよ」
すると五十鈴さんのお母さんがスイカを持ってやって来た。
「ありがとうございます!少し休憩しようか…休憩中ならゲームしていいぞ」
西木野さんは僕を見てニヤリと笑う。
「…じゃあ少し遊びましょか、五十鈴さん」
「……!」
五十鈴さんは嬉しそうに頷く。
今だってやることが盛り沢山なんだ。夏休みが終わっても、友達と過ごす学校生活が五十鈴さんを寂しい気持ちにはさせないだろう。
42 友達を家に招待する。×




