63 夏祭り④
河川敷の向こうで大きな花火が上がり始めた。
定番の花火から、色とりどりの花柄、最近の人気アニメのキャラ、そしてラストのド派手な一斉点火。地元民すら飽きさせない多彩な花火は素晴らしいの一言に尽きる。
だが今回は、少し見劣りしたな。
「…」
「…」
「…」
星野さん、木蔭さん、妹も僕と同じ感想を抱いただろう。
何故なら…
「……!」
花火を見て感動する五十鈴さんの方が、一億倍は見ごたえあったからだ。
※
花火が打ち終わり、河川敷はいつもの静けさを取り戻す。
「いや~楽しかった。こんな楽しい夏祭りは初めてだよ」
「うん…!」
「私も、いつもと違ってすごく楽しかった!」
星野さん、木蔭さん、妹は興奮冷めやらぬといった面持ちだ。
「……!」
五十鈴さんもいつもの無表情に戻っているが、その表情は満足げだ。僕もこんなに楽しい夏祭りは久しぶりかも。
「それじゃあ帰りますか」
シートを畳み、バックに詰めて木蔭さんに渡す。
「…出来ればみんなを家まで送りたいのですが」
時刻はすっかり夜だ。
男として女子を家まで送るのは当然の義務。だが男は僕一人、距離は離れていないが帰り道はみんなバラバラときている。
「へぇ、紳士だね。誰を送ってくれるのかな?」
「無理しなくていいよ…?」
「……」
三人が僕の答えを待っている。
「さぁお兄ちゃん、どのルートでいくの!?」
そして何故か急かしてくる妹。
どうしたものか…やはり重たい荷物を持っている五十鈴さんかな。
「…いたた」
僕が悩んでいると、妹が足を抱えて蹲る。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫…!」
妹はやせ我慢していた。
一日中はしゃぎ回ってたから、足の負担が大きかったのだろう。
「私らのことは心配いらないから、園田兄妹は真っ直ぐ帰りなよ」
星野さんがそう言い、五十鈴さんと木蔭さんが頷く。
「ごめんなさい、そうしますね」
流石にこの状態の妹は放置できない。
動けない妹をおぶって帰ることにした。
「…ごめんお兄ちゃん」
妹が珍しく素直に謝罪する。
「別にいいよ」
「この私がフラグをへし折ってしまうなんて…」
「…何の話だ?」
こうして今日の夏祭りはお開きとなった。
54 夏祭りを満喫する。×




