62 夏祭り➂
夏祭りを一通り回り終えた僕らは、打ち上げ花火が良く見える河川敷沿いでシートを敷いた。
「はぁ~疲れた…木蔭ちゃんがシートを用意してくれて良かったよ」
「花火大会の場所取りに使えると思って…せっかくならのんびり見たいから…」
「流石は木蔭ちゃん」
木蔭さんの配慮に感心する星野さん。
荷物が重くなったし、五十鈴さんの体力も心配だった。僕も気を回してシートを用意するべきだったな。木蔭さんに感謝だ。
「お兄ちゃん、焼きそば買ってきて~」
妹がシートで寛ぎながら命令してくる。
「はいはい、他にもリクエストがありましたら買ってきますよ」
ついでにと他の女子にも聞いてみた。
「焼きとうもろこし!」
星野さんが手を上げる。
「私は、一緒に行きたい……」
「私も…もうちょっと歩いて回りたいから」
五十鈴さんと木蔭さんは買い物に付き合うと名乗り出た。二人の体力が心配だが、名乗り出てくれたのだから是非もない。
「じゃあ一緒に行きましょうか」
こうして三人で買い出しに行くこととなった。
※
頼まれた焼きそばと焼きとうもろこしを買いつつ、三人で屋台を見て回る。花火大会が終わったらそのまま解散になるだろうから、これが最後の探索になる。
「五十鈴さんは他に行きたい所ってあります?」
「うーん……」
これまで多くの屋台を回ってきたが、五十鈴さんは終始悩みっぱなしだ。初めての夏祭りはこんなものだろう。
「園田くんは…ここに何回も来たことあるの?」
木蔭さんが僕に目を向ける。
「はい。妹が毎年行きたがって、いつも連れ回されてますよ」
「そっか…なるほど」
「木蔭さんはこの祭りにはどれくらい来たことあります?」
「親と一緒に一回だけ…」
「少ないですね」
「こういった場に来ると、いつも迷子になるから嫌なんだ…」
「ああー」
影が薄い木蔭さんだからこその悩みだ。
今回は五十鈴さんのおかげで道が開けてるけど、二人を見失わないよう注意しないと。
「……手、繋ぐ?」
話を聞いていた五十鈴さんからとんでもない提案が飛んできた。
いや…別にとんでもなくはないか。
「じゃあ二人で手を繋いだらどうです?」
「え…!?」
二人にそう促してみたところ、木蔭さんが動揺する。
「木蔭ちゃん……」
「は、はい…」
五十鈴さんの申し出を断れない木蔭さん。
二人は手を繋いだ。
和やかな光景だ、二人は身長差があるから姉妹にも見える………ん?
「…なんか周囲のざわめきが穏やかになりました?」
「…確かに」
僕の感じた違和感は木蔭さんも感じているようだ。
五十鈴さんを見るや立ち止まってざわざわする通行人が、少し大人しくなったような気がする。通り過ぎてもチラ見くらいで済ませていた。
「目立つ五十鈴さんと目立たない木蔭さんが合わさって、バランス取れたんじゃないですか?」
僕はこの現象を見て冗談を言ってみた。
「そんなオカルトな…」
そう言いかけた木蔭さんだが、すぐ我に返る。
「まあ…私の影の薄さがオカルトじみてるけどね」
一人で自己解決する木蔭さん。
影が薄すぎるのも一種の才能と言えなくもない。
「……」
周囲の視線が減り、五十鈴さんは心なしか肩の力が抜けている。
光が強い五十鈴さんと影が薄い木蔭さん。相性が悪そうな組み合わせに聞こえるが、けっこう良いコンビなのかも。
「園田くんも……繋ぐ?」
「…」
無邪気な五十鈴さんはそう提案し、僕に手を差し伸べてくる。
「…僕は荷物とかありますし、迷子にならないよう気を付けるので大丈夫ですよ」
僕の手には荷物が一番似合っている。それにせっかく周囲が落ち着いたのに、僕が五十鈴さんと手を繋いだらまた波乱が起きてしまう。
五十鈴さんと手を繋いで夏祭りか…夢のまた夢だな。




