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59 夏祭りの約束




 予定のない夏休み、僕は暇を持て余していた。

 宿題も終わったことだし、たまには家でのんびりゲームをして過ごそう。これこそが平凡な僕に相応しい日常。


「お兄ちゃーん」


 リビングでゲームをしていると妹が駆け足でやってきた。


 少し前に事故で足を痛めた妹。

 妹が入院して五十鈴さんと出会ったのが一月だから、あれから六ヵ月以上が経つ。足の包帯は衣替えの時期くらいにとれ完治している。たまに足が痛み出す時があるらしいけど、本人は大丈夫だと言って元気に走り周っている。


「なに?」


「夏祭り行こうよ~」


「…別にいいけど」


「よし!じゃあ五十鈴さんと明菜ちゃんと夢月ちゃんも誘って!」


 明菜ちゃんと夢月ちゃん…?

 ああ、木蔭さんと星野さんのことか。


「ゲームの時に仲良くなったんだっけ」


「うん!みんなにゃいん友達だよ!」


 前のゲーム会で集まった女子組とは今でもやり取りしているらしい。妹は社交的で活発だから、友達を作るのが上手いんだよね。


「葵と涼月くんは誘わなくていいのか?」


「うん、今回はあの時のメンバーで行きたい。二人はいつでも誘えるし」


 そう言って妹は僕のスマホを差し出す。

 僕の部屋から勝手に持ち出してきたな…


「さぁお兄ちゃん、電話で誘って」


「僕が誘うの?それににゃいんメッセージで誘えばいいだろ」


「お兄ちゃんが電話で誘うからいいの!」


「何がだよ…」


「私を湖島園に連れて行かなかった罰、誘って」


 妹が威圧的な目で詰め寄ってくる。

 前に湖島園で遊んだ時、誘わなかったことを根に持っているようだ。


 仕方ないな…





 まずは木蔭さんから誘ってみる。

 女子に電話をかけるのってやっぱり緊張するな…


『は…はい…!』


 長いコールの後、木蔭さんが応答してくれた。

 すごく焦っている様子だが。


「もしかして取り込み中でした?」


『ううん…違うの。電話に慣れてなくて…』


 僕よりも木蔭さんの方が緊張していたようだ。


「わかります、それに異性との電話だと余計に緊張しますよね」


『あはは…わかる。相手が園田くんだから出られたよ』


 少し話して木蔭さんはいつもの落ち着きを取り戻す。

 いい感じに緊張がほぐれたかな。


「それで本題なのですが、妹が前にゲ-ムで集まった時の面々で夏祭りに行きたいそうです」


『楓ちゃんが…夏祭り…』


「五人で行きませんか?」


『…うん、行く!』


「では日時は追って連絡します」


 まずは一人目、木蔭さんが仲間に加わった。


「次は星野さんか」


 星野さんなら特に抵抗なく電話をかけられる。

 何というか星野さん…ノリが葵に近いんだよね。


『はいもしもし~』


「こんにちは」


『園田くん、どうかした?』


「実は妹が一緒に夏祭りに行きたいと…」


『いいね!』


 即答だ。

 星野さんは話が早くて助かる。


「じゃあ日時は追って連絡します」


『はいはーい』


 よし、二人目を誘い終えた。

 最後は五十鈴さんだな。


「………」


 なんでだろう、五十鈴さんが一番緊張する。三人の中だと五十鈴さんが一番付き合い長いのに…

 僕は意を決して、五十鈴さんに電話をかけた。


 ………


『もしもし……』


「も゛、もしもし五十鈴さん?」


 声が裏返った。

 落ち着くんだ僕。


『どうしたの……?』


「あの…妹が前にゲームで集まったメンバーと一緒に夏祭りに行きたいそうです」


『夏祭り……!』


 夏祭りと聞いて五十鈴さんのテンションが上がる。


『あ……なら、私が木蔭ちゃんと星野さんを誘う……!』


「え?もう誘いましたけど」


『………………そう』


 あからさまにテンションが下がっている五十鈴さん。


 あれ?

 なんか不味かったのかな…


「どうかしました?」


『ううん……何でもない』


「そ、そうですか…では日時は追って連絡します」


 約束を交わし電話を切る。

 ちょっと五十鈴さんの様子が不可解だったけど、これで三人の参加を得られた。


「誘ったぞ」


「うん、お兄ちゃんにしてはまずまずって感じだね」


(ギャルゲーでもまず地道に好感度を稼ぐことが重要だからね。お兄ちゃんは私が決めた攻略対象のルートに進んでもらうよー!)


「…?」


 何を企んでいるのか妹はにやにやしている。


 それにしても、五十鈴さんと夏祭りか。

 楽しみではあるけどまた一波乱起きそうだな。

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