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57 予定のない夏休み




 みんなで湖島園に行った次の日の早朝。

 五十鈴さんは自室のベッドで目を覚ました。


「……」


 体を起こそうとする。


「う……んん……」


 だが五十鈴さんはとてつもない疲労感に襲われ、体を起こすことが出来ない。


 夏休みが始まって十日が経った。


 三日で夏休みの宿題を終わらせ、ショッピングに行き、園田くんと向日ちゃんから泳ぎ方を教えてもらい、みんなと湖島園で遊んだ。

 この疲労感は濃密な十日間を過ごした反動だろう。


 しかも夏休みはまだ半分も終わっていない。病院のベッドで長い時間を寝ながら過ごしていた入院生活とは大違いだ。


「んん~……!」


 頑張って体を起こす五十鈴さん。


 そして今日は何をして過ごそうか悩んだ。

 この体で無茶は出来ない、今日一日は家で過ごすことになるだろう。家で出来ることといったら勉強だが、前期のテストはオール百点を取ったので焦ることはない。宿題は終わらせている。レタリング検定の勉強ができるが、こっちはなるべく園田くんと足並みを揃えたいと考えている。


「………………」


 貴重な一日を無駄にする訳にはいかない。

 どうすればいいのか五十鈴さんは焦る。




“毎日忙しなく動いても楽しくないよ。暇な時は暇を楽しんで、取りあえず寝転んでみよう”




 その時、やりたいことノートを一緒に書いてくれたアメ先輩の言葉を思い出した。


「暇を、楽しむ……」


 その言葉の意味は今でも理解できていない。

 だがここは先輩の助言に従い、この予定のない一日を暇な日として持て余してみようと決めた。五十鈴さんは再びベッドで横になる。


 ………


「うぅ……」


 しかし五十鈴さんは落ち着かない。

 何かしないと勿体ないという気持ちが強まる一方だった。寝転がるだけなら入院時代に飽きるほどしてきた、本当にこんなことをしてていいのか。


「……」


 五十鈴さんは横になったまま、やりたいことノートを手に取りページを開いた。


――――――――――――――――――――

1  学校に通う。×

2  まず友達を作る。×

3  輪になって雑談する。×

4  友達と一緒に下校する。×

5  放課後、友達と寄り道する。×

6  お昼ご飯を一緒に食べる。×

7  男の子の友達も作る。×

8  友達と連絡先を交換する。×

9  自分から友達に電話をかける。×

10 授業をサボってみたい。×


12 勉強会を開く。×

13 みんなでテストの見直しをしたい。×

22 お弁当を作る。×

26 泳げるようになる。×

41 友達の家に遊びに行く。×

43 ショッピングに出かける。×

51 大きなプールに行きたい。×

――――――――――――――――――――


 今まで達成したやりたいことは17。

 中学一年の前期でこれだけ達成できたのは快挙だろう。達成した思い出はどれも印象に残っており、大満足のものとなっている。


 しかし油断はできない。


 達成できている項目は簡単なものが大半、ノート後半にはまだ未知の内容が含まれている。

 それに友達の家、勉強会、ショッピング、プールと様々な集まりに参加してきたが、自分はついて行ってばかり。お膳立ては園田くんや西木野さんに頼りっぱなしだ。


 これからはもっと自発的に動きだし、自分で友達を集める勇気が必要。


「……これだ」


 ノートを見つめた五十鈴さんは次に達成するべき項目を見定める。


『42 友達を家に招待する。』


 園田くんの家にお呼ばれされたのだから、今度は自分から園田くんたちを家に招き入れたい。そして自分の家に招待することは、自発的に動かなければ達成できない願いだ。


「……」


 ふと五十鈴さんは自分の部屋を見回す。

 まだこの部屋に住み始めて半年しか経っていない。この飾り気のない、遊ぶ物もない、面白みのない部屋に招待して何が出来るのか。


 それ以前に、この殺風景な部屋を見られるのが恥ずかしい。


「模様替え……!」


 この部屋には個性と遊ぶ物が必要。

 どんなレイアウトにするべきか、五十鈴さんはベッドで横になりながら新品のノートにアイデアを書き出す。どうせこの体調でやりたいことに挑んでも百点満点の達成は望めない。


 これこそ、もっとも有効な暇の使い方だ。


 ………


 ……


 …


「すやぁ……」


 五十鈴さんは二度寝した。

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