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43 テストの見直し




 あれから五十鈴さんからも積極的に勉強会を提案し、これでもかってくらいみんなでテスト範囲を予習した。こんなに勉強したの、華岡受験以来かもしれない。

 

 そしてテスト当日。


「………」


 解ける…僕にも解けるぞ!

 回答を書く手が止まらない。僕の学力は平均より少し低いくらいだけど、あれだけ勉強すれば筆も進むってものだ。


 五十鈴さんのやりたいことノートに協力してると、僕の学校生活も健全で堅実なものになっていくな…





 後日、テストの結果が返却された。


――――――――――

園田庭人


国 75点

数 88点

英 80点

理 86点

社 92点


総合421点

平均315点

――――――――――


 うん、すごく良い結果だ。

 勉強は才能というよりも、努力と要領の良さが結果として現れるから嬉しい。勉強を教えてくれた木蔭さんに感謝だな。


「五十鈴さんはどうでした?」


「……」


 隣の五十鈴さんは結果が書かれた紙を見て浮かない表情をしている。

 まさかひどい点を取ってしまったのか?


「これ……」


 五十鈴さんが結果を見せてくれた。


――――――――――

五十鈴蘭子


国 100点

数 100点

英 100点

理 100点

社 100点


総合500点

――――――――――


 全教科100点!?

 学年一位だ。


 一緒に勉強している時も思ったが、五十鈴さんは集中力が高く念入りに復習する完璧主義者だ。やっぱり僕のような凡人とはモノが違うんだな…


「すごいですね、全教科100点なんて!」


「でも……全部正解だと、見直しが出来ない……」


「見直し?」


 見直すも何も全問正解なら見直す必要が…


「…あ」


 思い出した。


『13 みんなでテストの見直しをしたい。』

 

 五十鈴さんのやりたいことノートに書かれた文言。

 恐らくは、テストが終わった後にみんなで和気あいあいと問題を振り返るようなことがしたいんだろうな。


 だが見直しとは不正解だった問題を見返すことだ。つまり全教科100点をとってしまうと、見直す必要がないから達成できないんだ。

 だからといって見直すためにわざと間違えたり、テスト勉強を疎かにすることは五十鈴さんの流儀に反する。

 

 完璧が故に起きてしまった弊害。

 これは想定外の難題だ。


「庭人く~ん、五十鈴さんたちのおかげで赤点回避できたよ~」


 すると、葵が空気も読まずに絡んできた。


――――――――――

向日葵


国 54点

数 60点

英 50点

理 52点

社 58点


総合274点

――――――――――


「ギリギリすぎるだろ」


 因みに50点以下が赤点だ。

 運動時とは違い勉強時の葵の集中力は人並み以下だからな…華岡学校を受験する時も散々苦労した。


「理科があぶなかったよ~…化合物RCHOってなんだっけ?」


「アルデヒド……」


 葵の問いに五十鈴さんが答えてくれる。


「お前その問題、名前がかっこいいとか言って覚えてただろ」


「そうだっけ?」


 赤点を回避してご機嫌なのだろう、葵は屈託もなく笑う。

 こんだけ勉強ガバガバなのにちゃんと合格ライン届いているのが流石だよ。


「五十鈴さん満点じゃん、流石だね」


 今度は前の席の西木野さんが振り向いて、五十鈴さんの成績を覗き見てくる。


「じゃあさ、“社長がいない”の尊敬語ってなんて書いた?」


「……“社長はいらっしゃらないそうです”」


「“来られないそうです”じゃダメなの?」


「来られないだと……可能か不可能なのかが曖昧で、誤解されちゃうから……」


「ああーそういえば先生が言ってた気がするなぁ」


 西木野さんは頭を抱える。

 華岡学校のテストはちゃんと考えて作られてる。ノートをしっかりとっていても、先生の何気ない雑談も聞き逃してはいけない。僕と五十鈴さんはその辺りを木蔭さんから教わってたから対応することが出来た。


 それはそれとして…


「…立派に達成できてますね、()()()()()()が」


「……!」


 僕がそう囁くと、五十鈴さんはハッとする。

 自分のテストが見直せないなら、友達のテストを見直せばいい。友達の間違いを見直すのは、全教科100点をとった五十鈴さんが適任だ。


「じゃあ英語の問題、定冠詞ってどれかな?」


「えっと……定冠詞はザ……不定冠詞はアで……」


 その後も五十鈴さんは楽しそうにみんなのテストを見直していった。これはノートにチェックを入れてもいいんじゃないかな?


 ………ふと思ったんだが。


「ねえ城井くん」


「ん?」


 僕は前の席の城井くんに小声で話しかける。


「国語で100点取ったんなら、五十鈴さんの“日本語を話せない怖いお嬢様”っていう誤解は解消されないのかな」


 テストの結果は上位50人までの名前が廊下に張り出されている。一位の座には五十鈴さんの名前が書かれているはずだ。だったら国語を理解している五十鈴さんが日本語を話せないなんておかしい…そう思いそうなもんだ。


「そのことは確かに噂になってるけど、言葉の勉強と会話の勉強は別物…らしいよ」


 城井くんが同じく小声で答えてくれる。


「そうなの?」


「仮に五十鈴さんが話せるかもって気付いた人がいても、その人に真偽を確かめる度胸があるかは疑問だね」


「…難儀だ」


 五十鈴さんの高貴な雰囲気は近寄りがたいし、勇気を出して近づいても内気だから会話にならないだろう。この誤解が解消されるのは、五十鈴さんの成長にかかっている。


 まだ時間がかかるだろうな…

12 勉強会を開く。×

13 みんなでテストの見直しをしたい。×

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