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40 おまけ①




【園田くんの体力測定】



「ふぅ…」


 やっと体力測定が終わった。

 お腹空いたな…


「お疲れさま」


「………(疲れた)」


 城井くんと涼月くんも最後の測定を終えたようだ。


「園田くん、運動神経いいよね」


 僕の記録を覗き見る城井くん。

 記録は城井くんが平均よりやや下、涼月くんがやや上、僕は三人の中で一番良い結果を出せた。


「僕と涼月くんは幼い頃からずっと葵の無茶な運動に付き合わされてたから…」


「二人はあの向日葵と幼馴染なんだよね」


「うん。アイツの相手をしているうちに運動能力上がった」


「あれ?でも涼月くんの記録はそんなにすごくないけど…」


「涼月くんは面倒くさがって本気を出さないだけだよ。本気を出せば葵に匹敵するくらいのポテンシャルなのに」


 涼月くんは基本的に張り切らない。

 本気を出せば高等部にだって負けない運動能力を秘めているのに、極度の面倒くさがりのせいで真価は発揮されない。


「………(下手にいい成績とっても、運動行事で体よく利用されるだけ)」


「ほら、この通り」


 幼馴染の頃から変わらない、省エネ主義の涼月くん。そんな涼月くんがどんな経緯で僕ら兄妹や葵と関わるようになったのか、それも話すと長くなるんだけど…


「園田くんって普通の一般人に見えて、対人運には恵まれてるよね」


「そうかな?」


「向日さんや五十鈴さんと仲良しな時点で否定できないから」


「う…」


 天才的運動センスを持つ葵に、超絶美少女の五十鈴さん。その二人を中心に広がる交友関係は、確かにかなり異質かも。

 対人運…それが僕の個性なのか?


「羨ましい、僕も個性が欲しいな」


「…僕から見れば、城井くんも相当変わってるよ」


 城井くんの噂好きも度が過ぎている。

 この学校に入学してそれほど時間は経ってないけど、やっぱりここの生徒って個性強い。ウチのクラスだけでもツッコミを入れたい生徒は何人もいる……その内、正体を露にするだろうな。





【園田くんのルート】



「お兄ちゃんって誰ルートでいくの?」


 とある休日。

 リビングのソファーでテレビを見ていたら、妹が唐突に意味の分からない質問をしてくる。


「ルート?なにそれ」


「どの女子がお兄ちゃんの本命なのかなって」


「本命って…僕が恋愛してるように見えるのか?」


「だってお兄ちゃんモテモテじゃん。葵ちゃんに、星野さんに、木蔭さんとか」


「………」


 目を輝かせながら詰め寄ってくる妹。


「…あの集まりはそういうのじゃないから」


「えー…誰にも目を付けてないの?」


「そうだよ」


「それって草食すぎない?」


「…」


「あれだけ女子に囲まれて、誰とも気を向けないのは女性に失礼だよ」


「そうなのか…?」


「そうだよ!」


 妹から謎の説得力を感じる。


 彼女を作るか………今まで考えたこともなかった。

 僕の周囲には女子がたくさんいる。葵は対象外として、西木野さん、木蔭さん、星野さんに朝香さん。これだけの女子と知り合えたのだから、こんな平凡な僕にも誰かとチャンスあるかも?


 ………


「いや…やっぱり無いな」


 没個性の僕が女子の期待に答えられるとは思えない。

 そもそも彼女なんて作ったら、五十鈴さんのサポートがしにくくなる。男女のどろどろした三角関係なんて絶対に作りたくない。


「なーんだ、つまんないの」


 妹は退屈そうにテレビのチャンネルを変える。


 ………


 僕は無意識に五十鈴さんを恋愛対象として数えなかった。妹も五十鈴さんの名前は出していなかった。

 それだけ五十鈴さんの存在は高嶺の花ってことだ。





【サクラ咲く】



「庭人くん、私は衝撃を受けた」


 学校の放課後。

 僕が副学級委員の雑務をしていると、葵が西木野さんの席に座って話しかけてきた。


「急にどうした?」


「同年代との一対一の対決で、完敗した」


「スポーツで?」


「うん」


「…マジか」


 葵がスポーツで負ける。

 それはとんでもない異常事態だ。


「柔道の合同授業でね、それはもう完膚なきまでに敗北した」


「相手は柔道の天才だったのか?」


「いや、普通の可愛らしい女の子だったよ」


「そんなバカな…」


 葵はスポーツの天才だ。

 身体測定の数値も高いが、真に恐ろしいのは類まれなる運動センスにある。どんな競技だろが、その競技の本質を見抜き自分だけの最適解を見出す。誰かの動きを参考にすれば、どんな神業だろうが数回練習すれば自分のものにしてしまう。


 僕、妹、涼月くんの三人がかりでようやく対等に渡り合えるくらい、葵の運動能力は人間離れしている。そんな葵を一対一の対決で負かすなんて………その時点で相手は普通の女の子じゃないだろ。


「お前が油断したか、手加減しすぎただけじゃないか?」


「私はいつだってベストを尽くすよ!」


「…それもそうか」


 愚問だったな。

 葵はスポーツで手を抜かない。それは小学生の頃から葵の運動に付き合わされた僕が一番よくわかっている。


「なんていうか、実戦経験ってやつ?戦場の中で場数を踏んだ強者って感じだった」


「どんな普通の女の子だよ…」


「ようやく対等に競える人に会えたよ!」


 葵は体を震わせて喜んでいる。


 流石は世界の天才が集まる華岡学校。

 スポーツの天才もゴロゴロいるってことか。きっと僕の知らないところで、運動部とかがスポーツ漫画みたいな超人対決をしてるんだろうな。


「今度、その子とテニスで遊ぶ約束したんだ。庭人くんも来る?」


「遠慮する…」


 そんな超人対決に混ざったら、命がいくつあっても足りない。テニスじゃなくてテニヌになりそうだ。


 でも良かった…僕や涼月くんの代わりに、葵の相手をしてくれる人がいてくれて。

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