39 病み上がりの園田くん
園田くんが風邪で学校を休んでから四日目。
「おはようございます」
園田くんが登校してきた。
「おはよう……」
五十鈴さんは平静を装いつつ挨拶を返す。
内心では四日ぶりにいつもの園田くんを見れて心の底から喜んでいる。だが園田くんにはもう自分の弱い部分を見せたくないので、五十鈴さんは見栄を張っていた。
「どうでした?僕のいない学校は」
席について五十鈴さんの様子をうかがう園田くん。
「いつもと違う感じがして……楽しかった……」
「それは良かった」
「でも……園田くんがいる方が、もっと楽しい……」
「…」
園田くんは心の中で絶叫していた。
美少女にそんな事を言われて、喜ばない思春期男子が存在するだろうか?いや、いない。
「あ、そうだ……」
五十鈴さんはポケットから、紙飛行機に乗ったクマのキーホルダーが付いた鍵を取り出す。それは園田くんが退院祝いに贈ったものだ。
「あ、鍵に付けたんですね」
「うん……園田くんがくれた、大切な物だから……大事な鍵に付けた……」
「…」
園田くんは二度目の絶叫を心の中で上げる。
風邪で休んでいたこともあって耐性が薄れたのだろう、久しぶりに五十鈴さんの魅力を真正面から受けニヤる顔が止められない。
「…あ、あと少ししたらテスト期間ですよね」
園田くんは手で顔を隠しながら話を逸らす。
「うん……初テスト」
「なんだかんだ僕も五十鈴さんも休んだりしてますから対策しないとですね」
「園田くんが休んでる間のノート……とってるよ……」
「ありがとうございます。今度、図書館を使ってみんなで勉強会をしましょうか」
「勉強会……」
「確か五十鈴さんのやりたいことノートに書いてありましたよね、勉強とかテストとか」
「うん……ある」
「休んで遅れた分、がんばりましょう」
「うん……!」
五十鈴さんは拳を握って意気込む。
もうすぐ季節は春から夏へと変わる。
これから華岡学校ならではの学校行事や、テストが終われば夏休みが始まる。やりたいことノートのミッションもまだ八割以上残っている。
やるべきことは山積み。
五十鈴さんは、それが幸せでたまらなかった。




