33 心理テスト
「園田くん、五十鈴さん、ちょっといい?」
教室でのお昼休み。
星野さんが空いている城井くんの席に座って振り向く。
「なんです?」
「これから私のする質問に答えてもらえるかな」
そう言う星野さんの手には、心理テストと書かれた本が握られていた。
「心理テストですか…」
また唐突だな。
もしかしてそれが今日のラッキーアイテムだったり?
「五十鈴さんも気軽に答えてね~」
「……!」
五十鈴さんはやる気満々で意気込んでいる。
「それじゃいくよ」
星野さんは僕らに本の内容が見えないよう質問を始めた。
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~心理テスト①~
食事中、よくやる癖は?
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「癖…何かあるかな」
自分の癖って自分では気付きずらいんだよね…
「園田くん……ご飯とおかずをバランスよく食べる……」
五十鈴さんが僕の癖を教えてくれた。一緒に食事した回数なんてそんなないのに、よく分かったな。
…それを言うと、僕も五十鈴さんの癖を思い出したぞ。
「五十鈴さんはメインのおかずを最後までとっておくタイプですよね」
「…………うん、そうかも……ケーキの苺も最後にとっておく」
僕と五十鈴さんの癖は正反対のようだ。
「なるほど…これが結果なんだけど」
星野さんが本を開いて僕らに見せてくれた。
えっと…あった、五十鈴さんの回答。
好きなものを最後までとっておく人は「目標を立てて努力する人。意外と泣き虫。負けず嫌いで諦めない人」と書いてある。
それで僕は…これか
パランスよくきっちり食べる人は「責任感が強く約束を守る人。真面目。どんなことにもケジメをつける人」か。
僕はともかく、五十鈴さんは当たってるかも。やりたいことノートという大きな目標もあるし、目標達成には余念がない。
泣き虫なのは………当たってるかも。
僕が泣かせちゃったし…
あの出来事は僕の中で文句なしの黒歴史だ。
「じゃあ次いってみよう」
星野さんは次のページを開く。
――――――――――
~心理テスト②~
異性の友達と遊園地に来て、まず最初に乗りたいアトラクションはどれ?
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「遊園地か…」
遊園地には一回だけ行ったことがある。
僕の両親は共働きでいつも忙しいから、旅行は数えるほどしか行ったことない。
「……」
五十鈴さんは…確認するまでもないな。
中学まで病院に隔離されていたのだから、旅行なんて行きたくても行けるはずがない。もしかしたら、やりたいことノートに遊園地に行きたいとか書いてあるかも。
もし五十鈴さんと遊園地に行くなら…
「コーヒーカップですかね」
僕はそう答えた。
初めての遊園地なら絶叫系ではなく、まずは初心者向けのアトラクションから行きたい。
「……観覧車かな」
五十鈴さんはそう答えた。
高所とか平気なんだな…覚えておこう。
「えっと、園田くんは「内気で気が弱い、本音を打ち明けられない人」だって」
星野さんが結果を読み上げる。
うーん…否定はできない。
よくウジウジ悩むことあるし。
「五十鈴さんは「ロマンチストで独占欲が強い人」だって」
「……?」
ピンとこない様子の五十鈴さん。
独占欲は分からないけど…やりたいことノートを叶えたいっていう願いは、捉え方によってはロマンチックだよね。
「次はタクシーでの質問!」
星野さんはテストを続ける。
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~心理テスト➂~
あなたはタクシーを探している。長い時間をかけてようやく見つけたのに、目の前を通り過ぎてしまった。どう思う?
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タクシー…
今まで一度も乗ったことがない乗り物だ。
でも想像は容易にできる。
シチュエーションは遠出とかだな。疲れている中、ようやく見つけたタクシーが目の前を通り過ぎてしまった時…
「悔しいですね…」
「悲しい……」
僕と五十鈴さんは暗い感想を述べる。
「これは恋愛の心理テストだよ。失恋した時、相手に向ける感情と同じなんだって」
「…」
つまり僕が失恋したら、悔しがるってこと?
うーん…どうなんだろう。恋愛については今まで一度も深く考えたことなかったからな。僕みたいな平凡人間に彼女なんてできるわけないし。
五十鈴さんはどう考えているんだろう。
「???」
分かってない顔してる。
恋愛についての知識は僕以下か。
「なーにしてんの」
そうこう話していると、西木野さんが星野さんの隣の席に座る。
「心理テストだよ」
「ほう、これで五十鈴さんの本性を暴こうって魂胆ね」
「…半分は正解かな」
星野さんの魂胆があっさり判明した。
じゃあ僕が質問に答える必要なかった?
「五十鈴さんや木蔭ちゃんって自分を表に出さないから、謎が多いんだよね」
「わかる。木蔭ちゃんも巻き込んでみようか」
星野さんは本を閉じて木蔭さんの席に向かう。
「私もやってみた~い」
「みんなして何してるのー!」
騒ぎを聞きつけ朝香さんと葵も五十鈴さんの席に集まってくる。気が付けば、五十鈴さんは友達に囲まれていた。
「……」
五十鈴さんは無表情だが、楽しそうな気持ちが伝わってくる。
成長したな、五十鈴さん。
最初はどうなるかと思ったけど、もう立派な一般生徒だ。これだけ友達に囲まれていれば僕が心配することは何も…
「けほ」
…なんだろう、喉がイガイガする。
「園田くん…風邪?」
木蔭さんが心配そうに僕の顔色を覗いてくる。
「大丈夫ですよ」
でもこの感じ、少し風邪っぽいな。




