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29 身体測定




 身体測定の日。

 この日は授業を削り、男女に別れて特別棟に向かう。


「さて、行こうか五十鈴さん」


「……」


 五十鈴さんは西木野さんの後について教室を出る。廊下では大勢の生徒が移動を始めていた。


「なんかいつもと違う感じがして緊張するね」


「……!」


 同じ学年全体での大移動なので、五十鈴さんは普段と違う日常にドキドキしていた。これから何が始まってしまうのか、向かう先が分かっていても緊張してしまう。


「はぁ…」


 木蔭さんから盛大なため息。


「どしたの?木蔭ちゃん」


 星野さんがラッキーアイテムの輪ゴムを弄りながら木蔭ちゃんに聞いた。


「身体測定…やだ」


「どうして?授業なくて楽だから私は好き~」


「…私の身長を見ればわかるでしょ」


「………」


 星野さんは言葉を失う。

 クラスで最も小さくて軽い木蔭ちゃん。今日はその事実を改めて数字として思い知らされる日。


「今日の運勢は10位……地雷を踏みまくる日でしょう…か」


 そう言って星野さんは大人しくなった。





 16 身長は目指せ160以上。



「……」


 五十鈴さんのやりたいことノートにはそう書かれている。

 やや控えめな数字だが、これが五十鈴さんの理想的な身長だ。女性の平均身長よりも少し高めで、男性の身長は越さない程度。


 だが身長の伸びしろには運が左右する。

 病院生活で発育に不安があった五十鈴さんなので、今日の結果次第では達成を諦めるしかない。


――――――――――

五十鈴 蘭子


身長 155

体重 40

座高 81

視力 右 1.5

   左 1.5

――――――――――


「……むむ」


 目標身長には届いていない。

 覚悟はしていたが、目標の未達成には少なからず落胆する。身長を伸ばすべく今後の対策を考える五十鈴さん。


「五十鈴さん…背が高くてスタイルも良いから羨ましい」


「……?」


 測定を終えた木蔭ちゃんが五十鈴さんの側に寄る。結果が書かれた紙は、もう二度と開けないほどに折りたたまれ輪ゴムで縛ってある。


「身長は希と星野さんが大体平均、私が少し高いくらいか。一番高いのは五十鈴さんだね、流石は完璧美少女」


 西木野さんがみんなの身長をまとめる。


「木蔭ちゃんはこれから伸びるでしょ、まだ中一だし」


「うう…正直、今の遅れを取り戻せる未来が想像できない」


 西木野さんはフォローするが、木蔭ちゃんは今の身長にかなりのコンプレックスを抱いているようだ。


「……」


 木蔭ちゃんの様子を見て、五十鈴さんは心の中で「160は欲張りすぎたのでは……?」と自分の目標を見直すことになった。





 五十鈴さん一行が教室に帰ると、男子たちは先に戻っていた。


「五十鈴さん、お疲れ様です」


 園田くんが席について五十鈴さんを迎えてくれる。


「うん……」


「どうでした?」


 五十鈴さんは躊躇いなく園田くんに結果を見せた。


「惜しかったですね…でも可能性はありますよ」


「うん……」


「僕はこんな感じでした」


 園田くんも五十鈴さんに結果を見せてくれた。


――――――――――

園田 庭人


身長 160

体重 51

座高 84

視力 右 1.2

   左 1.0

――――――――――


「僕、けっこう身長高い方なんですよ」


「おお……」


 園田くんの身長は五十鈴さんの目標と同じ数値。


「僕と同じ身長になれば、一人で黒板掃除できますね」


「……!」


 目標身長に達すればあの黒板の上まで手が届く。

 欲張りかもしれないが、160を目指してがんばってみよう。五十鈴さんは改めて目標達成に向けて奮起した。


(…普通に数字とか見せ合えるんだ)


 西木野さんは二人のやりとりを見て驚く。


 普通は自分の数字なんて見せたくないものだ。

 ましてや思春期の中学生、木蔭ちゃんほどではないが西木野さんだって異性には見せたくない。それなのに五十鈴さんと園田くんは当然のように見せ合っている。


(やっぱり気になるな…二人だけの秘密)


 五十鈴さんが中学に入る前まで病院生活だったこと。やりたいことノートの存在。二人だけの協力関係。


 それは一般人の西木野さんでは察することの出来ない領域だった。

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