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28 委員会




 ついにクラスで委員会を決める日がやってきた。


「それでは委員会を決めましょう」


 担任の先生が黒板に決めるべき委員会を書き込む。学級委員、副学級委員、美化委員、給食委員などなど。高等部に上がると減ったり増えたりするらしい。


「じゃあまず美化委員を二人決めよう、立候補する人はいる?」


 美化委員は校舎内や校舎外の環境を整えたり、定期的に行われる美化活動に参加するのが役割だ。この学校は広大な敷地を誇っているから、美化委員の雑務は多い。

 先生が声をかけても、誰も手を上げなかった。


「…」


 僕は五十鈴さんをチラ見する。

 確かやりたいことノート、二ページ目に“委員会に入る。”って書いてあったはずだ。美化委員は綺麗好きな五十鈴さんにピッタリだと思うけど…


「……」


 五十鈴さんは動かない。

 やっぱり緊張して手が出せないのかな。


「…」


 すると、前の席の木蔭さんが手を上げた。

 木蔭さんもきっちりしてるし、美化委員が似合う人だ。


「誰もいない~?」


 しかし先生、木蔭さんに気付いていない。

 影が薄いとは聞いてたけどここまでか!?


「は~い、私がやります~」


 教室の沈黙を呑気な声が破る。

 朝香さんが手を上げてくれた。


「朝香さんね、あと一人は…」


「さっきからずっと手を上げてる木蔭ちゃんがいいと思いま~す」


 朝香さんが木蔭さんを名指しした。

 これはナイスフォローだ。


「………あ、ほんとだ!ごめんなさい木蔭さん!」


 朝香さんに言われ、先生は木蔭さんがずっと手を上げていたことに気付く。クラスメイトも「あんな女子、クラスに居たっけ?」みたいな空気になっている。


 今までずっとこんな調子だったのか…木蔭さんの苦労が偲ばれる。


「…」

「…」


 朝香さんは笑顔で手を振り、木蔭さんはお辞儀をして答えた。

 良い友情だな。


「……」


 そんな二人の友情に乗り遅れた五十鈴さん。委員会決めについて、作戦を立てておくべきだったかな。





「最後に学級委員と副学級委員を決めたいんだけど…」


 結局、五十鈴さんは手を上げられず最後まできてしまった。

 五十鈴さんに学級委員はハードル高いだろう。委員会なんて二年三年とチャンスはあるし、今年は見送った方がいいのかも。


「学級員と副学級委員、男女でやってほしいんだけど誰かいませんか~?」


 ………


 誰も手を上げない。


「………個人的に西木野さんがやってくれると助かるんだけど」


 痺れを切らした先生がぼそりと呟く。

 西木野さんは今までずっと先生のサポートをしていたから、当然の要望だろう。クラスでも交友関係が広いから、教室内で納得の声が聞こえる。


「えー名指しですか」


 嫌そうに答える西木野さん。

 先生は困ったように微笑む。


「西木野さんがやってくれると、先生嬉しいな~」


「別にいいですけど…代わりに男子代表と副学級委員は私が選んでいいですか?」


「はい、その人が良ければ」


 西木野さんは学級委員を引き受けた。

 副学級委員か…誰を選ぶんだろ。


「園田くんと五十鈴さんがいいでーす」


「「「!?」」」


 西木野さんの人選にクラス全員がざわつく。


 五十鈴さんを!?

 なんで僕も!?


「えっと………五十鈴さんと園田くんはいいの?」


 先生も驚きつつ確認を取る。


「……」


 五十鈴さんはゆっくり頷く。


「あ、はい、やります…」


 僕も慌てて返事をした。

 五十鈴さんが頷いたなら僕も引き下がれない。


「それじゃあ委員会決めはここまでね」





 休み時間。


「………つまり、計画通りだったんですね」


 僕はこうなった経緯を西木野さんから聞いた。

 委員会を決める前、五十鈴さんは女子組と話し合っていたらしい。木蔭さんと朝香さんが美化委員に入るのも計画の内だったんだ。


「それで私が学級委員に指名されると思ったから、そうなったら五十鈴さんと園田くんを副学級委員に巻き込もうって五十鈴さんと話し合ったんだ」


「なら僕にも教えてくださいよ…」


 僕一人だけ何も知らず一喜一憂してただけだった。


「ごめんごめん、まあ肩肘張らずに楽しくやろうよ」


 西木野さんのノリは軽い。

 例のやりたいことノートの存在を西木野さんは知らないはずだから、軽い気持ちで五十鈴さんに提案したのだろう。


 これが五十鈴さんの理想の役員だったのかな…?


「園田くん……がんばろ」


 五十鈴さんはやる気満々に拳を握る。


「友達と一緒に……学校のお手伝いするのが……理想の委員会」


「…」


 どうやら五十鈴さんのやりたかった委員会は、友達と一緒にやる委員会だったようだ。つまり西木野さんの提案は五十鈴さんにとって願ったり叶ったりだったんだ。


「…はい、がんばりましょう」


 そうと分かれば話は単純。

 五十鈴さんのことだから、まだノートにチェックはしないだろう。委員会を一年間やって、五十鈴さんが楽しかったと思えるよう僕もがんばらないと。

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