27 木蔭ちゃんと園田くん
私、木蔭明菜は少し几帳面な性格です。
廊下に物が落ちてたり、図書館の本の順番がバラバラだったり、教室の机が乱れてたり、花瓶の花の元気がなかったり。
とにかくいつもと違う物を手直ししたくなる。
「…」
花瓶の中を覗く。
やっぱり水が濁ってる…
水を替えないと。
「う…」
花瓶が重い。
「木蔭さん?」
背後から声がかかる。
園田くんだ。
「僕も手伝いますよ」
園田くんが重たい花瓶を持ち上げてくれた。
「あ、ありがとう…」
「水を替えるので、花を持っててもらえます?」
「うん…」
五十鈴さんの友達、園田くん。
個人的に男子は荒っぽくて苦手だけど園田くんは平気。私の存在にもよく気付いてくれるし、園田くんからは私と同じモブの気配を感じる。
…そんな園田くんだけど、一つだけ特質した特別があった。
五十鈴さんと仲が良いことだ。
「木蔭さん」
「ん?」
「五十鈴さんとはどうですか?」
「えっと…五十鈴さんはイメージと違って穏やかな人だった。私でも仲良くできそう」
「それは良かった」
園田くんは、まるで自分のことのように喜んでる。
「五十鈴さんのこと、いろいろお願いします。僕は男なのでいろいろ手を回せないことが多くて…」
園田くんはかなり五十鈴さんを気にかけているみたいだ。
噂にあったお嬢様と従者の関係ではないけど、それとは別に二人から強い繋がりを感じる。美少女五十鈴さんと普通な園田くん…なんだか二人を中心にものすごい物語が展開されそう。
「うん。私はモブの一人として、五十鈴さんの力になるよ」
この物語に登場する私の役割は、やっぱり支援できるモブだよね。小説でも地味に活躍するのがモブの良いところ。
「…」
…?
園田くんの反応が妙だ。
変なこと言っちゃったかな。
「僕もモブみたいなものですよ」
「え…でも、五十鈴さんと友達でしょ?」
「それを言うなら木蔭さんもじゃないですか」
「私は………まだ会って間もないし、偶然だから」
「僕だって間もないですし、出会いも偶然です。他人にとって木蔭さんはモブかもしれませんが、五十鈴さんにとっては特別な友達なんですよ」
「…」
私も、特別…?
考えたことなかった。
私は存在感の薄い一般人。
存在感が薄いって個性に聞こえるかもだけど、それって個性がないことが個性と言っているようなもの。そんなのはただの言葉遊びだ。
「それに自分をモブだと思ってると、五十鈴さんを傷つける場合もあります」
「え?」
「僕と木蔭さんは、五十鈴さんと関われてモブを卒業したんです。ちゃんと物語の登場人物に紹介される、五十鈴さんが友達認定した重要人物なんですよ」
「…」
園田くんの瞳に迷いが無い。
…どうやら園田くんの方が何枚も上手みたいだ。
「そっか………そうだね…」
園田くんの言う通り。
これから五十鈴さんと付き合っていくなら、私もモブを卒業しないとだよね。
「でも…やっぱり自信ないな。私って心身共に地味だから」
「ええ…自分で言ってなんですが、僕も普通意外に取柄がなくて」
「………」
「………」
その時、私は園田くんとシンパシーを感じた。
「なんだか園田くんとは上手くやれそう」
「…不思議と僕もそう思います」
私と園田くんは笑みをこぼす。
まさか、私みたいな地味女に異性の知り合いが出来るなんて…
華岡学校に入学して良かった。
五十鈴さんと関われて、気の合う園田くんにも出会えた、お昼にお弁当を囲えるクラスメイトもいる、私はもう独りぼっちじゃないんだ。
学校生活は始まったばかり。
影の薄いキャラとして、五十鈴さんの友達としてがんばろう。




