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25 幼馴染とは?




「……」


 五十鈴さんは観察していた。

 西木野さんと朝香さんを。


「おはよー希」


「おはよ~ゆーちゃん。見て見て~」


「お、新作のポプリ?」


「嗅いでみて~」


「ん…良い匂い」


「ふふ~自信作だよ~」


「…それより今日の宿題、ちゃんとやってきた?」


「………」


「またか…ポプリを持ってくる日はいつもそうだよね」


「どうしよ~」


「今回は見せてあげるから、次からは気を付けなよ」


「は~い」


「趣味に熱中するのはいいけど、進学校に入学したんだから小学生の調子じゃダメよ」


「ごめんなさ~い、お母さん」


「誰がお母さんか!」





「……」


 五十鈴さんは観察していた。

 向日ちゃんと園田くんを。


「やっほー庭人くん」


「おう」


「楓ちゃんは元気になった?」


「元気だけど、しばらく包帯はとれないよ」


「そっか…みんなでスポーツできる日は遠いね」


「…もう僕らと運動する必要ないよね?今の葵は部活の助っ人で十分動いてるだろ?」


「そうだけど、たまにはいつものメンバーでスポーツしたいよ」


「付き合わされる僕と涼月くんの身にもなってくれ…」


「たまには一緒に遊ぼーよ~!」


「…テレビゲームでならいいぞ。妹も喜ぶだろうし」


「うーん…そっちも楽しいからそっちでいいか。じゃあ今度の日曜、園田くん家で集合ね!」


「はいはい」





「幼馴染が……羨ましい……」


 放課後の芸術室でのこと。

 五十鈴さんが窓の外を眺めながらぽつりと呟く。


「…どうしたんです五十鈴さん」


 その言葉を聞き逃さなかった園田くん。


「園田くん……向日ちゃんとすごく仲良し……」


「…そう見えました?」


「西木野さんと朝香さんも……仲良しだった」


「確かにあの二人は良いコンビですね」


「幼馴染が……いいなって……」


 五十鈴さんは幼馴染と呼べる関係に憧れていた。


「私……幼稚園も、小学校も通えなかったから……幼馴染がいない」


「…」


 生まれた時から病院生活である五十鈴さんにとって、幼馴染と呼べる関係は作りたくても作れなかった。そのことで前からずっとモヤモヤしていたようだ。


(思ったより深刻な悩みみたいだ………幼馴染なんて良いものじゃないと卑下すべきか、幼馴染よりも親友の方が大事だと割り切らせるべきか。どれも励ましにはならないな)


 どうにか五十鈴さんを元気づけたい園田くん。


「…園田くんと五十鈴さんっていつから知り合ったの?」


 すると、話を聞いていた杉咲先生が間に入ってきた。

 今日は杉咲先生も芸術室に来ている。最近はここにいる方が書類整理が捗ると言い、よく芸術室に足を運ぶようになった。


「出会い……中学に入る前です……」


「ということは小学生の頃ね、だったら二人は幼馴染じゃない?」


「!?」


 五十鈴さんはハッとする。


「そうなんですか……?」


「大人の私から見れば、幼稚園も小学生も中学生も幼いからね。今は感じづらいと思うけど、五十鈴さんが成長すれば園田くんが幼馴染に見えてくるわよ」


「……」


 五十鈴さんは園田くんとの関係を整理した。

 入院中の五十鈴さんは外の世界を知らない、人並み以上に幼い子供だった。その頃に知り合えた園田くんは、幼馴染と呼んでもよいのではないか?


「園田くんは……私の幼馴染?」


「えっと………そ、そうですね」


 園田くんは慌てて肯定する。

 いつからが幼馴染なのか園田くんも分かっていないが、五十鈴さんを元気づけられればなんでもいいと思っての発言だ。


「私にも……幼馴染……」


 五十鈴さんのモヤモヤが晴れてゆく。

 どうやら園田くんを幼馴染認定したようだ。


「じゃあ……下の名前で呼び合う?」


「え!?」


 そうと分かればと五十鈴さんは無邪気に提案してくる。五十鈴さんを下の名前で呼ぶことは、園田くんにとってかなりハードルが高かった。


「いえ…今まで通りでいいんじゃないですか?」


「そう……?」


「出会った頃から変えない方が幼馴染らしさがあると思います。葵も涼月くんも呼び方を変えたことないですし」


「……そうかも」


 渋々と納得する五十鈴さん。

 園田くんが友達から幼馴染へとランクアップしたことで、五十鈴さんの頭の中は大忙しになっていた。


(五十鈴さん…急に距離を詰めてくる時があるから心臓に悪いんだよな…)


 しばらく五十鈴さんの挙動にもれなくドギマギする園田くんなのでした。

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