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24 園田くんの幼馴染




 お弁当の日の放課後。

 五十鈴さんたちは教室の掃除をしていた。


「……」


 五十鈴さんは黒板の前に立ち、周りを見渡す。


「よし。綺麗になった」

「羽根箒はこのためにあったんだ…」

「木蔭さん、一緒にゴミ出しに行こ~」

「う、うん…」


 西木野さんと新たに知り合った星野さん、朝香さん、木蔭ちゃんが掃除を手伝ってくれた。お弁当作戦が上手くいき、掃除仲間が増えて五十鈴さんは上機嫌だった。


「五十鈴さん、ちょっといいですか?」


「……?」


 背後から園田くんに呼ばれ五十鈴さんが振り返った。もちろんだが園田くんも掃除を手伝ってくれている。


「どうしたの……?」


「明日なんですけど、僕の幼馴染を紹介しようと思いまして」


「幼馴染……」


「お昼休みに紹介してもいいですか?」


「うん……楽しみ」


「…」


 自信に溢れる五十鈴さんの姿を見て園田くんは少し驚く。

 まだ人見知り気味の五十鈴さんなので、もっと悩んだり緊張するものだと思っていたからだ。


(お昼休みで五十鈴さんに自信がついたみたいだな。今の五十鈴さんに、あの個性が強い幼馴染を会わせていいのだろうか…)


 今の五十鈴さんは大きな目標を叶え絶好調のようだ。

 この好調を乱したくないと考える園田くん。幼馴染を紹介することが五十鈴さんにとって吉と出るか凶と出るかは賭けになる。


(………あの二人なら大丈夫か)


 だが園田くんは幼馴染を信頼していた。変わり者ではあるが、五十鈴さんの学校生活の助けになってくれると信じている。





 次の日のお昼休み。


「それでは紹介しますね、この二人が僕の幼馴染です」


 園田くんは二人の男女を五十鈴さんの前に呼び出した。


「まずこっちの怖い顔の男が涼月隼人(すずつきはやと)くんです」 


「………」


 園田くんが紹介してくれているが、涼月くんは喋らない。


「……」


 五十鈴さんの第一印象、涼月くんは俗に言う不良のように見えた。

 髪は染めていないが、その鋭い目つきは相手を威嚇するには十分すぎる破壊力がある。園田くんが紹介してくれなかったら、怖くて目も合わせられなかっただろう。


「見た目は怖いですが、中身は怖くないので大丈夫ですよ」


「……」


「それと涼月くんは基本的に喋りません」


「?」


「あ、でも無視はしませんよ。試しに挨拶してみてください」


 不可解なことを言う園田くん。


「こ、こんにちは……」


 園田くんを信じて、五十鈴さんは恐る恐る涼月くんに挨拶する。


「………(こんにちは)」


「!」


 涼月くんは何も発言していない。

 それなのに涼月くんから、挨拶のような意図が感じ取れた。


「この通り、涼月くんは喋らず意思を伝えてくるんです。慣れれば何が言いたいのか明確に感じ取れるようになりますよ」


「涼月くん……喋れないの?」


「いえ、普通に喋れますよ。口を開くのが面倒なだけらしいです」


「……」


「変わり者でしょ?」


 園田くんの言葉に五十鈴さんは頷く。

 今まで五十鈴さんが出会った人たちは、多少個性はあれど普通と呼べる人ばかりだった。涼月くんの個性はズバ抜けて独特である。


「困ったことがあったら、何時でも涼月くんに頼っていいですよ」


「………(勝手に決めるな)」


「こう言ってますが、困った人はほっとけない性質なので」


「………(誤解を受ける言い方をするな)」


 園田くんは慣れたように涼月くんと対話している。

 なんとも不思議な光景だった。


「それで次なのですが…こいつは向日葵(むかいあおい)です」


 涼月くんの紹介を適当に切り上げ、園田くんは二人目の幼馴染を紹介した。


「庭人くん、私のことは向日(ひま)って紹介してよ~」


 向日ちゃんは明るい声を発しながら、園田くんを肘で突く。

 女子制服を身に着けていなければ男子と見紛うようなボーイッシュな外見。雰囲気は涼月くんとは正反対、陽気な太陽を彷彿とさせる少女だった。


「それはあだ名だろ」


「そっちの方がしっくりくるんだもん…まいっか。こんにちは、五十鈴さん」


 向日ちゃんは気さくに五十鈴さんへ挨拶する。


「こんにちは……」


「私のことは向日ちゃんでも葵ちゃんでも好きに呼んでいいからね」


「う、うん……」


「隼人くんと庭人くん共々、よろしく~」


「よろしく……向日ちゃん」


 向日ちゃんはとてもフレンドリーで接しやすい。話しているだけで不思議と元気を分けてもらっているような感覚がある。


「それはそうと五十鈴さん、どんなスポーツに興味がある?」


「?」


 急に向日ちゃんからスポーツの話題が飛んできて、五十鈴さんは驚く。


「五十鈴さん手足長いから何でも向いてると思うよ!バスケ?テニス?ソフトボール?それか~」


 向日ちゃんは暴走気味に言葉を続ける。

 その様子を見た園田くんが、軽いチョップで向日ちゃんの頭を叩いた。


「いたー」


「だからスポーツを強要するなって言っただろ」


「ただ聞いてるだけだよー」


「前も話しただろ。五十鈴さんはインドア派だ」


「それくらい筋肉の付き方を見ればわかるよ。でも素質あるって!」


「本人の意思を尊重しろ」


 向日ちゃんの暴走を宥める園田くん。

 向日ちゃんの勢いにも驚かされたが、五十鈴さんは今まで見たことがない園田くんの一面に驚いていた。これが幼馴染の関係、気の置ける友人を前にする園田くんの姿なのだろう。


「この通りスポーツバカなので、無理に付き合う必要はないですよ」


「もっと長所をアピールしてよ~」


「しただろ、スポーツバカって」


「確かに!流石は庭人くん」


 悪口が含まれているにも関わらず、楽しそうに会話をする園田くんと向日ちゃん。


「……」


 そんな二人を見て、五十鈴さんにモヤモヤとした気持ちが芽生えた。


「取りあえず幼馴染の紹介は以上です。変人ですが頼りになる二人なので、学校生活で困ったら頼ってみてください」


「……」


「…五十鈴さん?」


「あ、うん……よろしく……」


 反応が遅れつつ涼月くんと向日ちゃんにお辞儀をする五十鈴さん。


「よろしく!」


「………(よろしく)」


 二人はお辞儀を返してくれた。





 ここ数日で五十鈴さんの交友関係は一気に広がった。


 園田くんから始まり、席の近い西木野さんと城井くん。お弁当の日に親睦を深めた木蔭ちゃん、星野さん、朝香さん。そして園田くんの幼馴染である涼月くんと向日ちゃん。


 これだけの人と関わり合えたのだ。

 大きな進歩と言っても良い。


「……」


 しかし五十鈴さんは、あることにモヤモヤしていた。そのモヤモヤが顕著に感じるまで、さほど時間はかからなかった。

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