22 お弁当作り
お弁当の日。
給食制である中等部は、月に一度だけ給食の出ない日がある。その日はお弁当を持参するなり、高等部に混じって食堂を利用するなり、購買を利用するなりと、各々で自由に食事をとる。
給食と違って好きなグループで食事をとることができるので、部活の仲間や気になる他クラスの生徒との親睦を深めるにもってこいの日だ。
五十鈴さんはその日、前に知り合ったクラスメイトの木蔭ちゃんと星野さんを昼食に誘うつもりだ。
「……」
五十鈴さんは自宅で料理本とにらめっこしていた。
22 お弁当を作る。
やりたいことノートに書かれた文言。
五十鈴さんは自分でお弁当を作るつもりだ。
料理は入院中、ずっと興味を持っていたことだ。
しかし五十鈴さんは一人で料理をしたことがない。入院中はテレビや本で料理を見るだけ、おもちゃでおままごとをしたことがあるくらいだ。
「……」
だがこの日を見越して準備はしてきた。
お母さんの料理の手伝いなどで、一通りの調理器具は扱えるようになっている。もう料理は一人で出来る自信があった。
「……よし」
五十鈴さんは笑みを浮かべ料理本を閉じる。
作る料理を決めたようだ。
※
お弁当の日、お弁当を作るため五十鈴さんは早起きをした。
献立は以下の通りだ。
ミートボール
ベーコンとほうれん草のソテー
卵焼き
二種のおにぎり
五十鈴さんはエプロンをつけてキッチンに立つ。
「さあ、作ってみようか」
「……」
横でお母さんが腕を組んで立っている。
一人でお弁当を作りたいという五十鈴さんの気持ちを汲み取ったのか、手を出す気はないようだ。
「監視させてもらうよ。油も使うから危ないし」
お母さんの心配は当然のものだった。
五十鈴さんも納得している。
「よし……」
さっそく五十鈴さんは調理に取り掛かった。
タマネギ、豚ひき肉、卵を混ぜた肉だねを丸めて160度の油で揚げ、特製の甘酢あんに絡めればミートボールは完成。ベーコンはカリカリに焼き、ホウレン草を加えバターと醤油コショウでソテー。卵焼きは甘めに、専用のフライパンで綺麗な焼き目を意識して焼き上げる。おにぎりは鮭フレークとタラコの二種類を握り、お弁当箱とは別の可愛らしい包みに入れる。彩りとしてミニトマト、ブロッコリー、お漬物も添えて。
「………蘭子って器用よね」
隙あらば助言を挟もうと見ていたお母さんだが、五十鈴さんの安心感ある料理姿に感心していた。
五十鈴さんはあらゆる面で経験不足だが、器用で要領が良く覚えが早い。包丁の使い方、焼き加減のタイミング、油の温度調整、細かな気配りも完璧だった。
「……」
冷ました料理を小さなお弁当箱に詰めていく五十鈴さん。盛り付けはノートに絵で描いて決めてあるので迷いはない。
こうして五十鈴さん特性弁当が完成する。
「……!」
五十鈴さんも文句なしの完成度だ。
ついでに自分の分とは別に、お母さんの分のお弁当も作ってある。
「今日のお昼に……どうぞ……」
「お、やったーありがとう!朝ごはんは私に任せて♪」
お母さんは大喜びで五十鈴さんからお弁当を受け取る。
「……」
自分のお弁当を巾着に詰める五十鈴さん。
しかし、まだやりたいことノートにチェックはつけない。
お弁当は美味しく完食するまでがお弁当だ。
友達と輪になってお弁当を囲い楽しいお昼時間を過ごす、そうすることで初めてお弁当は完成となる。もし友達を誘えず一人でお弁当を食べる羽目になれば、美味しいお弁当も台無しである。
「がんばろう……!」
五十鈴さんは気合を入れ、鞄にお弁当を詰めた。




